なぜ健康をBMIでは判断できないのか?

By Paola Kizette Cimenti

多くの人は自分の体が健康であるかが気になるものです。健康を測る尺度は多数あり、体重や体脂肪率などがありますが、中でも肥満度を表す体格指数「BMI」は広く使われています。BMIは自分の身長と体重を知っていれば算出ができる数値であり、平均体重や平均体脂肪など他の情報を調べる必要がない手軽さのために広く使われているのですが、「BMIで健康を判断するには限界がある」という指摘があるのも事実。その内容を解説するムービー「What BMI doesn’t tell you about your health」を時事ニュースを解説をするVox.comの公式YouTubeチャンネルが公開しています。

What BMI doesn't tell you about your health - YouTube


「BMI」という用語で用いられている「ボディー・マス・インデックス」は肥満のなど健康の度合いを測るために用いられる指数で、200年以上に誕生したもの。


BMIの算出方法には、身長と体重を使います。以下の画像の男性2人、Colemanさん(左)とPhilさん(右)のBMIを算出してみます。男性2人は体重と身長がほぼ同じです。つまり2人BMIはほぼ同じに算出されます。それぞれBMIはColemanさんが「24.6」、Philさんが「24.7」となります。


しかし、男性2人のBMIはほぼ同じですが、健康に大きく関わる指標である2人の体脂肪率はBMIのようにほぼ同じとはなっていません。


2人の体脂肪率は、Colemanさんは「20.5パーセント」、Philさんは「28.4パーセント」とPhilさんのほうが体脂肪率が7.9ポイント高く、大きく差があります。BMIが同じ男性2人なのに肥満の度合いは違うという結果が出ました。


以上の結果を踏まえると2人の体の違いは、ColemanさんはPhilさんに比べて筋肉が多く、PhilさんはColemanさんより体脂肪が多いということになります。


BMIは人の体重で健康かを評価するポピュラーな方法です。しかし、この2人の男性の違いからも明らかなように、肥満が引き起こす病気の判断にBMIの数値を用いることは間違いを招きやすいので、BMIが使用される頻度は少ないとのこと。


この「BMIで肥満を測るには不正確であるという」指摘は、U.S.NEWSやTEENVOGUE、New York TimeやRefinery29など多くのメディアからも挙がっています。BMIがもたらす情報は私たちが知りたい情報とニュアンスが違う結果となって表れます。


場所は変わって、ここはジョージ・ワシントン大学の「体重管理および人体パフォーマンス研究所」。


BMIについて研究所のTodd Millerディレクターが次のように述べています。「BMI指数の算出方法は、対象者の体重を身長で割って行います」


「したがって、算出方法としては主に体重を使っています」


正確な算出方法は、対象者の体重を身長の2乗で割ります。なお、体重はキログラム単位、身長はメートル単位を使用します。


算出されたBMIの数値に合わせて体型の肥満の度合いを分類すると、BMIの数値に対して「18.5以下が体重不足」「18.5~24.9が健康な範囲」「25~29.9が体重超過」そして「30以上が肥満」に分類されます。なお、日本人の体型ではBMIが25以上で肥満と分類する考え方もあります。


「BMIの考え方の基礎は、身長が高いほど体重が重くなるというものです」


「BMIが29.9から0.01上がって30.0になるだけで体重超過から肥満に分類されるのが分かれ目となるのは奇妙です」


MillerディレクターはBMIを健康の指標とするは大きな問題があると主張しています。例えば、筋肉があって健康であるほどBMI指数は悪く算出されます。


例として、アメリカンフットボール選手のMarshawn Lynch選手でBMIを算出してみます。すると、Lynch選手は身長180cm、体重98kgなのでBMIは30.0。


つまりLynch選手は脂肪が少なく筋骨隆々であるにも関わらず、BMIは30.0なので「肥満」に分類されます。肥満に分類される原因はBMIが筋肉と脂肪を区別しないからです。


「私たち研究者は、筋肉がどれだけ体に影響を与えるかに心血を注いで研究しています。筋肉は新陳代謝の原動力であり、そして体で熱を作ります」


「より健康な体脂肪率で、筋肉が増え、そして身長が低くなるほどBMIと一致しなくなります」


BMIの健康の標識としての信頼度は、スポーツ選手で測ると低下します。原因はスポーツ選手のBMIを測定すると「36.9」や「30.9」「25.7」「34.8」などスポーツ選手を肥満と指し示してしまうからです。


さらにBMIを健康の指標とするには難しい要因があります。それは年齢、性別および民族の違いで変化することです。このことは「Centers for Disease Control and Prevention」(アメリカ疾病予防管理センター:CDC)が発表しています。


これまでBMIの欠点を指摘してきました。一方でBMIには有効な使い方があるようです。BMIは大規模な人口の保健対策を立てる時に有効です。例えば相対的な肥満の割合を州ごとに比較するのに使用できます。


この使用方法により、個人の健康問題を相対的にあぶり出すことが可能です。


ここからはBMIの歴史を振り返ります。BMIこと「ボディー・マス・インデックス」は19世紀前半に誕生しました。


BMIの算出公式を生み出したのはベルギーの数学者Lambert Adolphe Jacques Quetele氏。なおBMIは健康と関連して使用されることが多いのですが、Quetele氏は医師ではありません。Quetele氏が公式を作成した理由は、研究として「通常の男性」算出することであり、肥満の研究目的で公式を作ったものではありませんでした。


BMIの使用目的が健康の判断などに用いられるようになった理由は、1972年のAncel Keys氏となります。


カリフォルニア大学出身のKeys氏は、1972年に肥満の研究論文「Indices of Relative Weight and Obesity(相対荷重と肥満の指標)」でBMIの算出公式を使用しました。


この肥満の研究の中でKeys氏は、Quetele氏が19世紀前半に誕生した公式を「body mass index(ボディー・マス・インデックス)」と名付け直して研究論文で使用しました。新しい名前が付けられたことで、BMIは「新しい手段」として研究者の間で受け止められ、脚光を浴びました。


その年以後、保健専門分野でのBMIの使用頻度は増大したとのこと。


BMIを健康の指標として使用するのはメリットがありました。使用するのは簡単で、費用が安く、結果が速くわかり、そして多くの場合で公平です。こうして200年間以上BMIが使用されました。しかし、BMIは結局のところ究極の健康指標ではありません。


振り返って現代は、健康に関して、身体組成と健康全般の指標となるものが他に多くあります。


例を挙げると、健康の指標としては、水中体重法やMRIスキャンの結果、ウェストからヒップにかけてのスリーサイズ、そして医療検査で測定する血圧や血糖値などが挙げられます。


ジョージ・ワシントン大学の「体重管理および人体パフォーマンス研究所」では健康を推し測る方法の1つとして「Dual-Energy X-ray ABSORPTIOMETRY」(DEXA法)を導入しています。


DEXA法は総合的な身体組成や体脂肪、骨密度などを測定することができます。


画面に、DEXA法で測定した被験者の身体組成が色として映し出されています。画面に映し出されている体の緑色の部分が筋肉のエリアです。黄色が適度な脂肪のエリア、そして赤い部分が脂肪の量が過剰のエリアです。


先ほどDEXA法でで画面に映し出されていた被験者の体の状態が以下の図表になります。ここでは、ある年の7月3日から12月27日までの脂肪と筋肉の増減の変化がまとめられています。


この図表では、7月3日から12月27日までの約6か月の間に体重が13kg減り……


約6か月の間に筋肉が3kg増えています。この筋肉の増加などの結果は体重に表れないのでBMIだと正確に測ることができません。


この結果は、ムービー冒頭の2人の男性のBMIがほぼ同じであるように、BMIだけでは正確に健康を測ることはできないことを示しています。


BMIは個人の健康の側面を測るの間接的な測定方法1つです。BMIは健康かどうかの参考になりますが、人体を理解するただ1つの方法であるべきではありません。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1f_yi