ハードウェア自作で著名なハッカーのバニー・ファン氏がカスタムチップの有用性を語る


Xboxをハッキングして無料利用を可能にしたり、工作キット「Chumby」や自作できるSTBキット「NetTV」の開発に関わったりと、ハードウェア開発の世界で著名なスゴ腕ハッカーのアンドリュー・"バニー"・ファン氏が、IEEE Spectrumのインタビューに答えて、小規模なスタートアップが専用チップを独自で設計・製作することの有用性について自身の考えを述べています。

How to Design a New Chip on a Budget - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/tech-talk/computing/hardware/lowbudget-chip-design-how-hard-is-it

ファン氏は世界初のオープンソースノートPC「Novena」を自作するなど、「ハードウェア・グル(師匠)」の異名を持つスゴ腕の技術者です。ファン氏は、大学の同僚で立ち上げるベンチャーのような規模の小さな組織でも、専用のカスタムチップを設計して製造するのは十分可能だ、という持論があるとのこと。そこで、カスタムチップを作るメリットについて聞くために、IEEE Spectrumはファン氏にインタビューを行っています。


「なぜ小規模なスタートアップは、独自のASICを使いたがるのか?どんな製品にも対応できるFPGAを使用することはできないのか?」という質問に対して、ファン氏は「FPGAの使えない分野が存在するから」という理由を、第一に挙げています。例えば、動物を追跡するためのGPS端末や体内に埋め込む小型の機器、電子仕掛けのグリーティングカードなどのような、非常に薄く・小さなチップが求められる分野には、比較的にパッケージサイズが大きなFPGAは向かないとのこと。そして、このような分野では「安くかつ省電力のもの」が求められることが多く、FPGAは不向きでASICが使われるそうです。


実際、自身の代表作であるNeTVの次世代機を開発するにあたって、ファン氏はASICの採用を検討したとのこと。現行のNeTVではFPGAが利用されていますが、1080pでの出力が限界です。しかし、FPGAの半分のコストで4Kムービーを出力可能なASICもあるとファン氏は述べています。結局、ファン氏の要求をすべて満たすASICは現状なかったため、採用は断念したそうですが、機能が制限されたASICであっても、用途次第ではFPGAよりもコストパフォーマンスで優れる場面は多く、FPGAではなくASICが必要となることがあるようです。


他方で、まったく正反対のカテゴリーでASICが求められることもあるとファン氏は述べています。そのカテゴリーとは高い性能を要求するハイエンド機器だとのこと。ファン氏は、Googleの機械学習マシン「TPU」に関するドキュメントを読んで「これは欲しい!」と感じたことがあるそうで、FPGAで実装すればどれくらいコストがかかるかを概算したそうです。結果は、FPGA機器だけでGoogleのTPUコストを数千ドル(約数十万円)上回り、さらに膨大なソフトウェアライセンス費用が必要になるというものだったとのこと。

「例えばMicrosoftのような大企業であれば、FPGAメーカーと提携することで、大幅な割引を受けられ、FPGAを使ってGoogleのTPUに対抗できるハードウェアを作ることは可能でしょうが、このような非常におもしろい機械を個人や小さな企業で作ろうと思えば1チップ1万7000ドル(約190万円)という話になるでしょう」とファン氏は述べています。


「非常にシンプルなASICを設計するとして、コストはどれくらいかかるか?設計のルールなどはあるか?」という質問に対してファン氏は、ソフトウェアは豊富にあると答えています。代表的なオープンソースツールの「SCMOS」(PDFファイル)や「Open-V」が機能的で、設計についてはXcircuit、IRSIM、NetGen、Qrouter、QflowなどをまとめたMagicのレイアウトツールセットがオープンソースとして利用可能だとのこと。

ファン氏は、プロセスルールが180nmまではオープンソースのツールを用いることが可能だと考えています。180nmプロセスは今日の半導体標準からみればそれほど微細でないのは確かですが、個別デザインされたチップを組み合わすことでは不可能な製品を生み出すことがあるとファン氏は述べています。

カスタムメイドのASICの価格については、マスキングやチップの価格は秘密なので正確に算出するのは難しいとのことですが、ファン氏が耳にした情報によると、250nmプロセスのノードを使って製造された数平方ミリメートルサイズのシンプルなASICチップは、数十個のサンプルで数千ドル(数十万円)の費用だそうです。

・関連記事
スゴ腕ハッカーが世界初のオープンソースPC「Novena」を制作 - GIGAZINE

インテルが約2万円のオープンソースPC「MinnowBoard」販売を開始 - GIGAZINE

オープンソースで組み方自由なマザーボードと各種アドオン - GIGAZINE

CPU2000個分の性能で秒間約175万通りのパスワード推測を可能にする「FPGA」とは? - GIGAZINE

2万円以下で購入できる世界最小スーパーコンピューターをNVIDIAが発表 - GIGAZINE

in ハードウェア, Posted by logv_to