「高齢者の運転」による事故を減らすにはどうすればいいのか?

by Galen Crout

登校中の女子高生2人が85歳の男が運転する車にはねられ重体となった事故が2018年1月9日に発生しました。75歳以上のドライバーによる死亡事故は2016年で459件もあり、免許の強制返納の仕組みが必要だという声もあります。アメリカでも日本と同様に高齢ドライバーの事故が問題視されていますが、科学系ライターのJoseph Strombergさんは「これは高齢者の責任ではなく、車を中心とした交通機関がこのような事態を見落としていたからだ」として、「高齢者の運転にかわる代替案」を提示しています。

Once seniors are too old to drive, our transportation system totally fails them - Vox
https://www.vox.com/2015/6/12/8768827/seniors-aging-car-driving

米国道路安全保険協会によって示された2008年のデータによると、走行距離1億マイル(約1億6000km)あたりの乗員死亡数を年齢別にグラフにするとこんな感じ。30代から60代までは2人以下ですが、75歳を過ぎたあたりから増加が目立つようになり、85歳以上になると約9人となっています。


これは、高齢者が肉体的に若者よりも弱く、ケガが死亡につながりやすいためだということも大きいのですが、高齢者は視界が狭く、反応時間が遅くなることも一因として考えられています。

しかし、ここで高齢者を責めるのは間違いであるとStrombergさんは指摘。人が高齢になった時に選択肢がなくなってしまうという交通システムの「見落とし」が存在するとStrombergさんは主張しています。

◆運転を取り上げると高齢者は孤独になってしまう

by rawpixel.com

車の存在を前提とした郊外に住む高齢者は、車を取り上げると家に取り残され、社会から断絶されてしまいます。もともと健康な状態の人であっても友人や家族から健康状態を確認されることがなくなり、人との情緒的なつながりが断たれてしまえば、健康上の問題が出てくることも十分に考えられることのこと。また、高齢者であってもボランティアを行うなど社会に貢献している人は存在するので、車を取り上げることで彼らが孤立すれば、高齢者以外の人々や社会も損失を被ることになります。退職者向けのホームは1つの解決策になり得ますが、(PDFファイル)90%以上の高齢者は「できるだけ長く今住んでいる家にとどまりたい」と考えていることもわかっています。

パラトランジット(補助交通機関)の存在

by abi ismail

アメリカには「パラトランジット」と呼ばれる公共交通手段が存在します。パラトランジットは障害を抱えた人をバス停や駅まで送り届けるもので、都市によって形はさまざまですが、例えばサンフランシスコは市営交通局がライトバンやタクシー会社と契約を結んでいます。これは1990年に制定された障害を持つアメリカ人法によって要求されたもの。パラトランジットの利用者の3分の1は65歳以上だそうです。

補助的交通機関 (Paratransit)
http://www.sfparatransit.com/resources/japanese.htm


高齢者がパラトランジットを使えるようにするというアイデアは1つの解決策となり得ますが、パラトランジットが使えるのはバスの路線から1.5マイル(約2.4km)圏内に住んでいる人のみです。また、利用者は外出の計画を事前に立ててパラトランジットを利用する前日は連絡しなければいけないので、「好きな時に外出」というわけにはいきません。

そして最大の問題は、パラトランジットの利用資格は厳格で、時には車イスを使っている人に限られるということ。この制限は、パラトランジットのコストが年々増してきていることを一因としています。年々高齢者が増加することで、パラトランジットの需要も大きくなってきているのですが、市の交通局は十分な資金をパラトランジットに割り当てていないのです。


このことからもパラトランジットは高齢者向けの移動手段としてうまく機能しない可能性があるのですが、そのほかの手段として考えられる「プライベートなシャトルサービス」はコストが非常に高く付きます。収入が安定していない退職者が利用するには難しいのです。

◆町をリデザインする
一方、高齢社会について、楽観的な見方も存在します。インディアナ大学・Center for Aging & Communityの代表であるPhil Stafford氏によると、町そのもののパターンを変えようとする新たな試みも行われているとのこと。Lifetime Community Districtsもその1つで、インディアナ州・ブルーミントンの1区画では高齢者が徒歩あるいは車イスで用事を済ませられるように、3マイル(約4.8km)の道に食料品店・病院・公園・コミュニティーセンターなどを集中させる計画を立てているそうです。

Lifetime Community Districts | International Making Cities Livable
http://www.livablecities.org/blog/lifetime-community-districts


また、自宅にいる高齢者にボランティアや有料のスタッフが食料品を届けたり、社会的な活動に参加してもらったりする「エルダー・ビレッジ」という試みも複数の都市で実施されています。専門家の中にはUberモデルが発達することで高齢者の活動を助けることができると考えている人も。市が標準的にUberのようなものを利用し、乗り合いアプリが高齢者に使われるようになれば、パラトランジットがより効率的になる可能性が考えられます。加えて、自動運転カーの登場が高齢者の移動を劇的に改善することも、なきにしもあらずです。

なお、日本では年間の交通事故発生件数は年々減少しているものの、65歳以上の高齢運転者が関与した事故が占める割合は増加していることが警視庁のデータで示されています。

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in 乗り物, Posted by logq_fa