サイエンス

同じ「ピアニスト」でもジャズとクラシックでは脳の使い方が違うことが判明

By Jaume Escofet

クラシックやジャズ、はたまたロックでも、優れたテクニックで音楽を紡ぎ出すピアニストの演奏には誰でもその演奏に目や耳を奪われるもの。「あれだけジャズが弾けるならクラシックでも余裕で弾けるはず」と周囲の人なら思ってしまうこともありがちですが、実際にはジャズピアニストとクラシックのピアノ奏者では脳の使い方が微妙に異なっていることが、研究によって明らかになっています。

Musical genre-dependent behavioural and EEG signatures of action planning. A comparison between classical and jazz pianists - ScienceDirect
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1053811917310820?via%3Dihub

Miles Davis is not Mozart: The brains of jazz and classical pianists work differently
https://medicalxpress.com/news/2018-01-miles-davis-mozart-brains-jazz.html

この研究は、ドイツ・ライプツィヒのマックス・プランク・インスティテュートのHuman Cognitive and Brain Sciences(ヒト認知学および脳科学研究所:MPI CBS)の研究チームが実施したもの。ジャズとクラシックのプロピアニストが実際に音楽を演奏する時の脳の働きを科学的に調査することで、たとえ同じ楽譜を渡されて演奏している時であっても両者の脳では演奏の際に脳が見せる反応が違うことが明らかにされています。

研究には、30人のピアニストが招かれており、半数は2年以上の経歴を持つプロのジャズピアニスト、残る半数は同等のプロのクラシックのプロピアニストが選ばれています。各ピアニストは、ピアノの鍵盤の上におかれた画面に表示される鍵盤と手の動きを見て、その動きを追うことが求められました。画面の演奏にはいくつかのミスがちりばめられていますが、ピアニストはそれでも画面を追うように指示されており、頭部に付けた電気センサーで脳の働きが計測されています。なおこの時、外部の邪魔な音や情報を遮断するために、ピアノはミュートされた無音状態に設定されています。


その結果明らかになったのは、両スタイルのピアニストの間では、演奏する時の指の動きを計画する考え方だったとのこと。

ピアノを演奏する際には、スタイルにかかわらず、ピアニストは原則としてこれから演奏しようとしていることを把握している必要があります。そしてこれは、「どの鍵盤を押さえるか」ということと、「どのように指を動かすか」という2つが含まれます。

研究からは、クラシックのピアニストは主に「指の動かし方」に意識を集中していることが判明。クラシックでは主に楽譜を正しく演奏し、その上で個人的な表現を加えることが正しいとされているために、まずは指を正しく動かしてミスのない演奏をすることに主眼が置かれるということを意味しています。

By atacamaki

一方、ジャズピアニストは主に「何を演奏するか」を念頭において演奏していることがわかっています。特に自由度が高いジャズという世界では、他のプレーヤーの演奏に自分をあわせることや、時には自分一人の演奏であってもその時の空気などによって演奏内容を変化させる必要があります。ジャズピアニストは脳の力を「演奏の柔軟性」に使っているとのことで、論文の主執筆者であるロバータ・ビアンコ氏は「実際に、ジャズのピアニストでは、ピアノの演奏時に柔軟的に和音を計画している神経の動きが見つかりました」と述べています。

ビアンコ氏は、両者の脳の違いについて「スタンダートなコード進行の中で予期されない和音を演奏させた時、彼らの脳はクラシックのピアニストよりも素早く演奏を再計画しはじめました。したがって、ジャズピアニストは変化に効果的に反応してパフォーマンスを継続することができました」と述べています。そして興味深いことに、クラシックのピアニストは、珍しい運指に従う場合にジャズのピアニストよりも優れたパフォーマンスを示しました。これらのケースでは、脳が運指をより強く認識し、その結果、ミスを犯すことが少なくなったことがわかっています。

MPI CBSの神経科学者であるダニエラ・サムラー氏は、「この研究を通して、脳が周囲の環境の要求にどれだけ正確に適応しているかを解明しました」と述べています。また、音楽を演奏するときに脳内で何が起こるかを完全に理解する場合には、1つのジャンルの音楽に集中するだけでは不十分であることが明らかになっており、サムラー氏は「より良く全体像を把握するためには、いくつかのジャンルの最小の共通分母を検索する必要があります」と述べています。

By Steven Pisano

・関連記事
「音楽で感動できるタイプ」かどうかは脳内部位の連携の活発さに左右されていることが判明 - GIGAZINE

音楽を演奏することは脳にどのような影響を与えるのか? - GIGAZINE

楽器を演奏していると老化が遅くなることが明らかに - GIGAZINE

ドラムを演奏している人の脳の中ではどんなことが起こっているのか? - GIGAZINE

チェロ奏者が自分の「脳」とデュエットして演奏するコンサート - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by logx_tm