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Amazonが楽天などの競合他社の価格設定や物流などに関するデータを入手するため「Big River Services International」部門を通じて商品を販売していることが発覚


小売大手のAmazonが、競合他社のeコマースマーケットプレイスや物流業務、決済サービスに関する価格データなどの情報を取得するため、eBayやShipify、ウォルマート、楽天市場などのマーケットプレイスで商品を販売する「Big River Services International」と呼ばれる事業を展開していることが明らかとなりました。

Inside Amazon’s Secret Operation to Gather Intel on Rivals - WSJ
https://www.wsj.com/business/retail/amazon-secret-operation-intel-rivals-eb82ea3c


Big River Services Internationalのプロジェクトが生まれたのは2015年後半のことでした。このプロジェクトは当初、「Project Curiosity」と呼ばれ、ペーパーカンパニーを通じて各国に倉庫を置き、競合他社のウェブサイトで商品を販売して外部ベンダーのエクスペリエンスの理解に努めました。

Project Curiosityは2017年に名前をBig River Services Internationalに変更。これは自身の仕事に嫌気が差したプロジェクトメンバーが、ライバル企業が集まる会議で自身の素性を明かしたことが一因とされています。


海外メディアのThe Wall Street Journalによると、Big River Services Internationalに属する社員は、自身がAmazon社員であることを隠して競合他社の会議に出席することもあったとのこと。また、プロジェクトの秘密を守るために、Amazon幹部へのレポートの送信は電子メールではなく書類で行われたそうです。

Big River Services Internationalのメンバーは、競合他社の販売システムにアクセスする際、価格設定や広告システム、カタログ、リストページのスクリーンショットを撮るよう指示されており、撮影したスクリーンショットのメールでの送信も禁じられていました。Big River Services Internationalから得られた情報を基に、Amazonではサイトでの販売者のエクスペリエンスが向上するような変更を加えました。


さらに、Big River Services InternationalがAmazon内のプロジェクトであることが発覚した場合に備えて、対応についてのアドバイスが記された機器管理文書がプロジェクトメンバーに渡されていました。その中には「質問を受けたら『Amazonは多数の子会社やオンラインチャネルを通じて、さまざまな製品をお客様に提供しています』との回答をせよ」といった指示が含まれていることが明らかになっています。

Big River Services Internationalのゴールは、Amazonの最大のライバルであるウォルマートでの商品販売でした。しかし、ウォルマートで商品を販売するには、他のマーケットプレイスで大量に商品を販売しているという実績が必要で、売り手のハードルが高いことが指摘されています。そこでBig River Services Internationalは、ウォルマート傘下のJet.comやFlipkartなどで商品販売を開始。ついに2019年にウォルマートでの商品販売をスタートさせています。

Big River Services Internationalは「Atlantic Lot」という出品者名でウォルマートにアウトドア用の椅子や中華鍋、業務用サイズの食品容器などを出品しています。関係者によると、2023年にBig River Services Internationalはウォルマートだけで12万5000ドル(約1900万円)以上の収益を上げたとのこと。


また、Big River Services Internationalは公式ページで「シアトルや東京、ロンドン、ミュンヘン、バンガロールにオフィスを構えている」と説明しています。これらの拠点を用いて、Big River Services InternationalはAlibabaやEtsy、Real.de、Wish、楽天市場などのマーケットプレイスで商品を販売しています。加えて、2019年にはさらに13の新しいマーケットプレイスに参入するという目標を立てたことも報じられています。


Big River Services Internationalの日本チームである「ビックリバーサービスジャパン合同会社」の会社概要が以下。


ビックリバーサービスジャパン合同会社は2017年に「Not So Ape」というファッションブランドを立ち上げており、ZOZOTOWNなどで商品を販売しています。なお、Not So Apeの英語版利用規約には、事業主としてBig River Services Internationalの名が記されており、連絡先住所にはAmazon本社に隣接する「2300 7th Ave, Ste B100, Back Entrance」との記載があるとのこと。


また、Big River Japan合同会社は「HIGASHINISHI」というショップを楽天市場で展開しています。HIGASHINISHIの会社概要にも、「ビックリバーサービスジャパン合同会社」の名が記されています。


さらに、ワシントン州法務長官事務所に提出されたBig River Services Internationalの登録書類には、Amazonのことは言及されていないものの、弁護士を含むAmazonの現・元従業員で構成される経営陣の名前がありました。また、Big River Services Internationalは本社の所在地をAmazon本社の位置と一致する「410 Terry Ave.」と記載していることも明らかとなっています。

Amazonの広報担当者は「ベンチマーキングはビジネスでは一般的な手法です。Amazonは、他の多くの小売業者と同様に、ベンチマークおよびカスタマーエクスペリエンスチームを保有しており、販売パートナーを含む顧客のエクスペリエンスを調査して、当社との取引体験を向上させています」と報告。さらに「ライバル企業もAmazonのサイト上で商品を販売することでAmazonの調査を行っているはずです」と指摘しています。

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in ネットサービス, Posted by log1r_ut

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