古代の人々は隕石から鉄器を生産していたことを示すデータが確認される

By David Kingham

人間が自由に鉄を作る技術を手にした鉄器時代よりも以前、「青銅器時代」に分類される時代にも鉄を使った製品は作られていましたが、その材料には宇宙から降ってきた隕石が使われていたと考えられています。鉄を作るための製錬技術が存在しなかったというのが大きな裏付けとされているのですが、実際に青銅器時代に作られた鉄器を分析することで、その説を裏付けるデータが得られています。

Bronze Age iron: Meteoritic or not? A chemical strategy. - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0305440317301322

Before the Iron Age, Most Iron Came From Space - Atlas Obscura
https://www.atlasobscura.com/articles/before-iron-age-most-iron-came-from-space-meteorite-egyptian-bronze

鉄は地球の地殻に含まれる元素のうち4番目に多く含まれている物質であり、製品としての鉄を作るために必要な砂鉄や鉄鉱石は世界中に広く分布しているために比較的容易に入手することが可能です。採掘された砂鉄や鉄鉱石は、800度から1200度の高い熱を加えることで精錬され、純度の高い鉄「銑鉄(せんてつ)」、そして炭素を加えることでより強靱な「鋼(はがね)」が作られます。

鉄の生産は紀元前1300年から1200年頃に、古代エジプトのヒッタイト王国で始まったと考えられています。鉄は青銅器よりも強度が高いために武器として使う際にも有利な物質であり、まだ周辺諸国が青銅器の生産しかできなかった時に鉄を手に入れたヒッタイト王国は次第に勢力を強め、メソポタミアを征服して大きな国を築き上げました。

By Samuel Tristán

鉄の精錬には、原料となる鉄鉱石から鉄だけを取り出す工程を踏む必要があります。鉄の精錬とは、原料の酸化鉄から酸素を除去して鉄を残すという還元作用であり、その反応を起こさせるためには1000度前後の温度を長時間にわたって加える必要があります。当時、この工程を実現するには高い技術とノウハウが必要であり、鉄の製錬技術は門外不出の国家最高機密レベルで管理されていたほど。このようにして生産された鉄は、不純物が少なく強度が高い鉄として国の発展に大きな役割を果たしました。

一方、鉄器時代以前の青銅器時代にも鉄を使った製品は少ないながらも存在していました。紀元前1324年に亡くなったとされるツタンカーメンの墓には鉄製の武具や装飾品などが埋葬されていたことが分かっているのですが、その原料は鉄鉱石など地球に埋まっているものではなく、隕石として宇宙から降り注いだものであると考えられています。

これは、「空から石が降ってくることは作り話か魔法である」と19世紀ごろまで考えていたヨーロッパ人にとっては考えも及ばなかったことのようで、フランス国立科学研究センターで考古学の研究に携わっているアルベール・ジャンボン氏は「多くの考古学者たちにとって、青銅器時代の人々が隕石について知識があったとは考えられないようです」と語っています。


しかしヨーロッパ以外の地域では、古代エジプトの象形文字「ヒエログラフ」では鉄について「空から来たもの」という意味が充てられているほか、中国の孔子は紀元前645年に隕石について「空に流れる一筋の線」と「地面に転がる石」とを結びつける記述を行っているなど、古くから隕石が「石」または「隕鉄」であると気付いている文化は存在していたといわれています。

近代までヨーロッパ人が隕石と隕鉄の関係を結びつけられていなかったのに対し、古代のエジプトや中国では隕石や隕鉄を活用し、さらにそこから鉄製品を作りだしていたと考えられています。ほぼ「鉄のかたまり」として落下してくる隕鉄は、鉄の純度が高いことが多く、高い製錬技術を要さずとも比較的容易に鉄製品を作ることが可能だからです。


このようにして隕鉄から作られた製品が、各時代の有力者だけが持つことのできる貴重な装飾品として取り扱われてきました。青銅器時代に始まり、その後のヒッタイトの時代を通じて栄えたアラジャホユックの遺跡では、隕石から作られた短刀が見つかっているほか……


ツタンカーメンの王墓でも、隕鉄で作られた短刀が見つかっています。


古代の文明で隕石から鉄器が作られていたという説を確かなものにすべく、ジャンボン氏は小型で携帯可能な分光計を持って各地に残されている鉄器の調査を実施しました。この分光計は対象物を破壊することなく組成を分析できるもので、ジャンボン氏は鉄器に含まれている物質の内容を調査することで、その鉄器が隕石由来のものか、または精錬された鉄で作られたものであるかを見極めようとしました。


その結果、ジャンボン氏は古代の鉄器にはニッケルが多く含まれていることを発見。これは、地球に降り注いだ隕石の組成と同一とみなされるものであると同時に、精錬されて純度の高い鉄の組成とは全く異なるものであり、ここからジャンボン氏は古代の鉄器が隕石をもとに作られたものであるという裏付けを確かなものにしています。

ジャンボン氏はまた、ツタンカーメンの王墓で見つかった鉄器には3つの異なる種類の材料が使われていることも解き明かしています。当時、鉄を作ることができる隕鉄は金よりも貴重なものであるとされていたことから、3種類の鉄が集められていたというのはそれだけ多くの労力と財力が投じられていたことを示しています。当時の隕石は、現代のダイヤモンドと同じぐらいの価値があったとも考えられており、ジャンボン氏は「当時の人々は隕石探しに必死になっていたと思いますよ」と語っています。

・関連記事
「紀元前200年の電池」や「最古のアナログコンピュータ」など、いまだ科学で解明できていない不思議な6つの発見 - GIGAZINE

「ストーンヘンジ」の謎を解くこれまで知られていなかった手がかりを新技術で地下から発見 - GIGAZINE

文字を持たなかったインカ帝国で記録用に使われた結び目つきのひも「キープ」の解読に大学生が成功 - GIGAZINE

人類史に刻まれた、宇宙人の関与が想像できるミステリー10選 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by logx_tm