過去100年で公衆衛生の広告デザインやマーケティングはどれほど進化してきたのか?


広告やポスターのデザインは時代に伴いどんどん変化しています。政府主導のキャンペーンについても例外ではなく、イギリスではかつて「人にショックを与える」というところに主眼を置いた広告が用いられていましたが、現在はこの種の広告は減少傾向にあります。イギリスの公衆衛生サービスのマーケティングはどのように変化していったのか、その変化が解説されています。

100 Years of Public Health Marketing by Public Health England - Exposure
https://publichealthengland.exposure.co/100-years-of-public-health-marketing

How public health marketing has changed over 100 years and where it's headed next
https://www.campaignlive.co.uk/article/public-health-marketing-changed-100-years-its-headed-next/1450956

感染症が広まるのを防ぎ、国民の健康状態をよくするために、イギリス政府が公衆衛生のキャンペーンを打ち出したのは1900年代初めのこと。しかし、第1次世界大戦の勃発と共に政府のメッセージは国民の健康状態の向上ではなく「戦争のために飲食の習慣を変えよ」というものになります。


1917年にはイギリス政府内に情報部が作られ、プロのライターや広告産業の技術を用いたキャンペーンが進められていきます。この時のキャンペーンの趣旨は「適度に飲食し、個人で衛生状態を向上させ、安全な性行為をするように」というものですが、一方で、現在では考えられないことですが喫煙は推奨されていました。その後、戦争が終わると保険省はワクチンの推進に力を入れます。

初期の広告は文字情報がメインでしたが、徐々にイラストや写真を使ったものも増えていきます。第二次大戦中にも公衆衛生のキャンペーンは続き、食料が限られる中で、政府は栄養の重要さや、どのように食物を育て調理するのかを広告で訴えていきます。

第二次世界大戦が始まると情報局が作られ、マスコミと同じ手法でキャンペーンが広まっていくことになりました。そして第二次世界大戦中に、誰でも無料で健康サービスを受けられる必要が出て来たため、1948年に国民保健サービスが誕生。病気の防止や健康についての教育に力を入れるのはもちろんですが、病気の治療や外科手術、ワクチン、奇跡のような薬に焦点が当てられていきます。


戦後、1960年に入ると経済が成長しだして全国的に楽観主義が優勢になっていきます。最新技術や研究が薬や公衆衛生に大きな影響を与え、広告の焦点は貧困層が行う病気の治療から、経済的に余裕がある層が行うべき治療へとシフト。飲酒や肥満に関する広告が多く作られます。また、タバコが健康に深刻な害を及ぼすという認識がされるようになったのは、この頃からでした。そしてより教養あるメッセージを作成するために、雑誌や新聞、広告産業のようなテクニックを適用し始めます。


イギリスの公衆衛生サービスのマーケティング部門を統括する Sheila Mitchell氏によると、1980年代から1990年代にかけては「ショックを与えられた人が恐怖を感じれば、行動に移すだろう」という考えのもと、ショッキングな広告が多かったのですが、この種の広告は近年になって減少しているとのこと。


もちろん「ショックを与える」という方法はある程度までは有効なのですが、人に注目を集めるためにはよりショッキングなものを生み出しつつける必要があるため、根本的なアイデアに限界がありました。

近年ではよりインタラクティブなキャンペーンが打ち出される方向にあります。2009年より開始された肥満防止キャンペーン「Change4Life」では電話相談の受付や子どもの肥満防止ガイドが作成されるほか、「ウォレスとグルミット」の制作スタジオによってCMが作成されました。

Change4LifeのCMは以下から。確かに「衝撃的な映像を流す」というより、「理解をえるためにわかりやすい説明を行う」ようになっています。

Change4Life: Be Food Smart TV ad 2013 - YouTube


そしてテクノロジーが発達していくと、その他のマーケティング産業と同じく、イギリスの公衆衛生サービスも「テクノロジーをどう使っていくか?」ということに焦点を当て出します。その上で、健康についてのアドバイスと人とをどのように関係させていくかが問題となりました。


この点、PHEは禁煙を支援するFacebook Messengerのチャットボットを作成するなど、インタラクティブなやりとりの中で、ムービーなどを使用してメッセージを伝えていく試みを行っています。

5 Smoking Kids - YouTube


2017年現在の公衆衛生サービスは、「マーケティングと治療の間にあるギャップを埋めていく」ということにメインが据えられる傾向にあります。つまり、マーケティングチームがさまざまな商品やサービスを開発した後に、それらを「道具」としてどのようにヘルスケアサービスと人を結びつけていけるかということが命題として掲げられているわけです。

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in デザイン, Posted by logq_fa