動画

展示ごとに壁をぶち壊して作り直す美術館MoMAの知られざる舞台裏を描いたシリーズ「AT THE MUSEUM」がYouTubeで公開中


モダンアートの殿堂と呼ばれるニューヨーク近代美術館では、特別展示などが行われる場合は特に壁ごと配置が変えられたり塗り直されたりして、その作品が最も映えるような工夫がされています。美術館に行って作品でなはく作品の配置にどのような意図が込められているかは、なかなか考えないものですが、MoMAのスタッフたちがいかに「展示方法」クリエイティビティを発揮しているのか、YouTubeでムービーが公開されています。

Shipping & Receiving (Episode 1) | AT THE MUSEUM - YouTube


MoMAにはジャクソン・ポロックや……


ピエト・モンドリアン


クロード・モネといった有名画家の作品が多数収録されています。


常設作品だけでなく特別展示もあり、展示作品が頻繁に変わるMoMAにとって、「何をどこに飾るか」は重要事項です。


展示期間が終わると、作品は木箱の中に収められ……


説明書きも剥がされます。展示の入れ変えが行われる際には当たり前のことですが、美術館を訪れて「作品の入れ変えや展示にどれくらいの労力が割かれているのか」を考える人は少ないはず。


作品にライトをあて、点検するスタッフ。


何かを書き込んでいます。


手元には作品をプリントした紙があり、細かにメモが入れられていました。


「エレン、問題ないかい?」と声を掛けられ「大丈夫」と返す女性。「作業が終わったころに戻ってくるけど、何時ごろになる?」「9時半くらいかな」


移動式のはしごを使い、作品を細かな部分までチェックしているようです。


このときのMoMAはコンテンポラリーアートのためのギャラリー「フォンダシオン ルイ・ヴィトン」に展示するため、ピカソ作品など、所蔵作品のいくつかをパリに送るという計画を立てている最中。「彼らはセザンヌの横にウォーカー・エバンスの作品を置きたくないと思う」など、意見を交わしつつ、何をどこに置くのかをミニチュアの展示会場を使って調整しています。


ミニチュアの会場はこんな感じ。


壁を移動させて作品の展示場所を変えます。理想的な配置を実現するために、展示の都度、壁も作り出しているようです。


手元にはフォンダシオン ルイ・ヴィトンの設計図。


「会場に入った時に、一番最初に目に入る作品」が重要になってくるとのこと。


そして、MoMAの展示室では作品をパリに送るための荷造りが行われています。


なくなった作品の代わりに新しい作品が設置され……


ものすごく綿密な位置調整のもと、説明書きが貼られていきます。


様変わりした展示室。


そして新たに作品が運ばれてきたようです。


取り出したのはマネキン。


アルマーニのスーツを着た男女のマネキンが飾られていきます。


今度は展示場ではなくバックオフィスへ。


アート作品が無造作に置かれ……


静かな室内で黙々と作業が進められていきます。


女性が扱うのは……


グスタフ・クリムトの作品。


「誰かがこの部分を接着するために何かを貼り付けているんだけど、乾いてしまって役に立っていません。なのでここを持ち上げて、傷をふさがなければいけません」と作業する女性。作品を傷つけないよう、ゆっくりと慎重に作業を進める必要があるとのこと。


この女性は、布製の触手のようなものをひたすらこすり続けています。


アンディ・ウォーホルのキャンベル缶についた埃を払うスタッフ。


じっくり観察し、輸送に際し、作品がどのような状態であるかを記録しているようです。


一方でMoMAでは新たにマックス・エルンストの作品を展示することに。この作業は別のスタッフが担当します。


MoMAでは、エスカレーターを下りてすぐのところにあるスペースが「何もない」と勘違いされ見過ごされてしまうことが数年にわたって問題になっていました。この問題を解決するというのが今回の課題のようです。


「ここに何があるのだろう?」と人々が引きつけられスペースにやってくる仕組みが必要であるとして提案されたのは「壁を入り口からちょっと変わった緑色に塗ること」


そして部屋の中ではなく外にタイトルを掲げることでした。そうすることで、入り口に目をやった人が自然と部屋の中に目線を向け、「ここにこんな作品があるのか」ということに気づくようになるわけ。美術館の中には展示室にそのまま作品が置かれるところもありますが、展示ごとに壁を塗り直したり作り直したりするというのはMoMAだからこそできる展示方法です。


展示についての具体的な案が出される一方で、アート作品の輸送の準備も着々と進んでいます。


AT THE MUSEUMはシリーズ作品。記事作成現在ではエピソード4までがYouTubeに公開されています。エピソード2は以下から見ることが可能で、緑色の壁の部屋がどんな風に実現するのかや、さらに具体的な展示方法のアイデアが練られています。

The Making of Max Ernst (Episode 2) | AT THE MUSEUM - YouTube


エピソード2の冒頭では、何やら巨大な箱を移動させています。


エレベーターから出すのも一苦労。


階段もターンできず……。


何とか別の部屋に移動させたのは、エピソード1でも使っていた展示室のミニチュア。話し合っているのは「緑の壁」が提案された部屋に飾るマックス・エルンストの作品についてです。


「Beyond Painting」と名付けられた展示は、その名の通り絵画だけでなく立体作品も展示されます。


ミニチュアで大体の配置を決めた後は、細かな作品の並びなどを調整していきます。テーブルの上に作品が並べられますが、実際に離れたところから来場者が見た時にどう感じるかを考慮するためか、台に乗って作品全体の調和が確かめられています。


別の場所では絵画の素材について議論されています。一見すると石膏を使っているように見える絵画ですが、フーリエ変換赤外分光光度計による解析を行ったところ大部分は油絵の具だとこと。「多分、書くとしたら『キャンバスの上に油絵・石膏』かな。厳密にいうとキャンバスというよりバーラップだけど」ということで、説明書きの内容について検討しているようです。


展示場では実際に古い壁の解体作業や塗り替え作業へ。


これが緑の壁の部屋に飾られる立体作品たち。実物を見ると、展示室のミニチュアがかなり精巧に作られていたことがわかります。


壁の色も検討されていきます。


実際に壁に貼り付け、作品と合わせた時にどう映えるかなどが見られていきます。


入り口にタイトルが貼られ……


壁が塗り替えられていくのでした。


という感じでエピソード3、エピソード4へと続きます。

Pressing Matters (Episode 3) | AT THE MUSEUM - YouTube


エピソード3では巨大なクモの立体作品の展示がどのように行われたのかが語られていきます。


マックス・エルンストの展示室は、ややグレーに近い緑色に塗られていました。


最初のミーティング通り、入口の横にタイトルが表示され、入口自体がその向こうにある写真の額縁のような働きになっています。確かにこの構造だと写真に目がいき、「何もない」と勘違いされスルーされることも少なそうです。一方で、「入口から緑に塗る」という案は無くなった様子。


そしてエピソード4ではMoMAを訪れた人やスタッフがアート作品について語る内容となっています。

Art Speaks (Episode 4) | AT THE MUSEUM - YouTube

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
自撮りに夢中になりすぎて2000万円以上の価値のあるアート作品をドミノ倒しにしてしまうドジっ娘現る - GIGAZINE

メトロポリタン美術館が歴史的な絵画を復活させる手順をYouTubeで公開中 - GIGAZINE

画家としてのジム・キャリーを追ったドキュメンタリー「Jim Carrey: I Needed Color」 - GIGAZINE

1億円越えなのに落書きにしか見えない抽象絵画10作品 - GIGAZINE

1億円越えの現代アートを作るお手軽な方法を解説した「HOW TO MAKE MODERN ART」 - GIGAZINE

「デザインは芸術とは何の関係もない」、デザインの生ける伝説「ミルトン・グレイザー」が世界的によくある誤解を払拭 - GIGAZINE

in 動画,   アート, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.