ディスプレイグラフィックスにこだわり3種族の文字も作り込まれた「GODZILLA 怪獣惑星」の瀬下寛之監督インタビュー


2017年11月17日(金)からゴジラシリーズ初のアニメ映画「GODZILLA 怪獣惑星」が公開されています。その監督を、「名探偵コナン」の映画シリーズで知られる静野孔文氏とともに担当したのが、「亜人」「BLAME!」などを生み出してきた瀬下寛之氏。今回のゴジラをいかにして生み出したのかという基本的なところから、瀬下監督がどのようなコンセプトで本作の映像を作り上げていったのかといった話まで、いろいろなことを伺ってきました。また、これと合わせて新宿に期間限定で設置されていた「ゴジラゲート」の情報も掲載しています。

アニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』OFFICIAL SITE
http://godzilla-anime.com/

Q:
まず、「ゴジラをアニメで、3DCGで作る」と聞いた時に最初に抱いた率直な感想というのは。

瀬下寛之監督(以下、瀬下):
お話をいただいたのは3年以上前なんですけど、率直な感想としては「ええ?ゴジラをアニメで?……絶対に無理」と(笑)

(一同笑)

瀬下:
その通りに「絶対に無理だと思います」って答えたんです。東宝さんは「ゴジラを見たことはないけれどアニメは好きという方に向けて、自由な発想で作っていただいて結構」という戦略だと。しかし、僕は「それでも無理かも」と(笑)

(一同笑)

瀬下:
さらに話を聞いてみると、私的にも仲の良い監督で、「名探偵コナン」などヒットメーカーの静野孔文さんも参加されて、「魔法少女まどか☆マギカ」の虚淵玄さんがストーリー原案を担当されるのであればどうですか?と言われ、「それならチャレンジできるかも……」と思いました。この、才能あふれるお二人の陰に隠れるようにして、ひっそりとお役に立てるのであれば、もしかしたら何か新しいゴジラができるかもしれない。と、そういう印象でした。

Q:
最初に「無理だ」と思われたのは、「ゴジラ」というイメージが大きさにあったのでしょうか。

瀬下:
ゴジラは世界に名だたるキャラクターであり、「特撮」という日本で生まれた様式を代表する存在でもあります。なので、「ゴジラは特撮の延長となる様式で作られるべきでは……」という思いがありました。

Q:
それをアニメにするという部分に引っかかりを覚えたということですね。

瀬下:
ただ、東宝さんはそれでも「ゴジラを見たことがない人もいる」と。これがもし「アニメでゴジラファンをうならせて下さい」「昔からのゴジラファンを納得させるアニメを作って下さい」ということであれば、それは不可能ですと言っていたと思います。実際に、ストーリーやデザインの開発をしている中で、いつも不安がよぎりました。「昔からのゴジラファンから厳しいお言葉をいただくことになるんじゃないか」と。でも、開発の途中で「シン・ゴジラ」が公開されまして、東宝さんから参考にした方がいいということで、静野さんや虚淵さんと一緒に拝見させていただきました。

Q:
おお、ご覧になったんですね。

瀬下:
それで、そのあまりに素晴らしい完成度に「本家本流は『シン・ゴジラ』がきちっと継承してくれた」と安心しました。随所に新しい表現も使われているのに、日本伝統の特撮の風格や様式も継承している、とにかくずばぬけた傑作でしたから。これで、我々はゴジラというブランドの一つの支流として、ゴジラを見たことがないアニメ好きの方へ向けて、ゴジラという世界観やユニークなキャラクター性を伝える役割に徹すればいいんだと思えました。シン・ゴジラのおかげで、僕らは気負わずにやらせてもらえるなと感じて、正直、胸をなで下ろしました。(笑)

Q:
「『シン・ゴジラ』に負けないぞ」みたいな気持ちはありましたか?

瀬下:
全くないです!

(一同笑)

瀬下:
とてつもない大傑作ですから、そんな気持ちはないです。コンセプトも全く違いますし、心からリスペクトしていますし。むしろ「僕らを安心させてくれてありがとう」と(笑)

Q:
そういう関係なんですね。

瀬下:
自由に肩の力を抜いてやってみようかと心底思えるようになったのは、「本家」の看板を背負っていってくれたシン・ゴジラのおかげといって過言ではないと思っています。

Q:
亜人」のアニメ化の際に、瀬下監督は「空間性が3DCGの得意とする所であり、遠近感を強調する構図を意識したカットを積み重ねて編集することで、臨場感とダイナミズムを得られる」という事をおっしゃっていましたが、ゴジラのように巨大な怪獣が出てくる作品も、3DCGが得意とする分野なのでしょうか。

瀬下:
空間移動をダイナミックに行い、観客の皆さんが物語の中にもっと没入しやすくなること、観ているうちにスクリーンの端を感じなくなってほしいと、いつも考えています。そのためにも、「画面」よりも「場面」にこだわっています。まずは「場面」をしっかりと作ること。「場面」が面白ければ、実際に起こっている出来事をどこでどう構図として切り取って「画面」にしても、なんとかなるだろうと。そして各場面の巨大なセットが、3DCGのバーチャルスタジオの中にすべて存在しています。いわば、それが3DCGの利点です。それを最大限活用して、お客さんに没入感を与えることができるカメラワーク、カッティングを意識して作っていきます。

Q:
映画を見ていて、ハルオたちが地上に着いてから、一緒に事態に巻き込まれていくような感覚がありましたが、そうなるように作られていたということなんですね。

瀬下:
そう感じてもらえたのなら嬉しいです。

Q:
ゴジラの造形に関しては発表時から結構話題になりましたが、どういうコンセプトで作り上げていったのでしょうか。

瀬下:
僕と造型監督の片塰満則、マケットスカルプターの笠間豊、コンセプトアート担当の川田英治が4人でデザインチームを組み、作り上げていきました。原案を描き、本作の世界観の中でゴジラがどうあるべきかについてまとめたコンセプトシートを作り、そこからラフスケッチを描いていきます。次にマケットスカルプティングを行います。これは、3DCGで粘土をこねるように造形できるソフトを使用して、たたき台となる立体の素案を作っていくという作業です。

立脚点は「御神木のような存在」です。本作のゴジラは、虚淵さんの原案段階では「生命進化の頂点」であるという設定だったので、とにかく長い寿命や巨大さから連想し、モチーフとして選んだのが「樹木」でした。人間の時間軸では止まっているように見えるけれども、タイムラプス撮影で捉えると、植物はものすごく動いています。根がアスファルトやコンクリートを突き破って力強く動いていく。それは、巨大な体積や質量を支える体組織でもあります。

Q:
そういうお話を聞くと、すごく納得できるものがあります。「樹木感」というか。

瀬下:
うれしいですね。

Q:
試写の後、他の方と「今回のゴジラって何色に見えた?」という話で盛り上がったのですが、ゴジラのカラーリングも樹木を意識したものなのでしょうか。

瀬下:
地色は濃いめのブルーです。モチーフが樹木とはいっても、体組織に謎の金属元素が大量に含まれている、超進化した植物なんです。そして、表面は金属のように硬い。つり橋を支えている巨大なワイヤーのような無数の金属線が編み込まれたような、あんな繊維構造です。ちょっと緑っぽく見えるのは、何千年という単位で生きているので、コケが体表に群生しているイメージです。体の擦れ合わない場所や上面は、特にコケが多めです。

Q:
ゴジラの色味を意識しながら見ると、より深く造形を楽しめそうですね。

瀬下:
そう思います。植物的な特徴をいろいろと入れていて、背びれはヒイラギの葉のようなイメージで作っています。そして畏敬の念を抱かれるような「神々しさ」です。僕らとしては、今回のゴジラは生物を超えた、地震や火山などのある種の天災、超越した存在であって欲しいと考えました。恐ろしいものである一方で、信仰の対象でもあります。

Q:
ゴジラ造型の第一人者で、映画公開に合わせて11月17日(金)に発売される「一番くじ GODZILLA 怪獣惑星 ~怪獣王は進化する~」のフィギュア造型も担当された酒井ゆうじさんが、ゴジラの表情を見て「今回のゴジラはとても優しく、すごく穏やかな表情にも見える」とおっしゃっていました。

瀬下:
嬉しいですね。恐るべき存在ではあるけれど、獰猛で凶暴な捕食動物のような印象はあえて省いています。目がこれまでのゴジラに比べて小さく、知性を感じさせるように優しくしようと考えました。「神々しいもの」、「畏敬」の存在にすることを目指したものです。Tレックスのように、体の大きさに対して頭が巨大になって口が大きくなりすぎるとやはり「対話不能」というか、肉食動物感が出てしまうので、体全体における頭の比率も小さくしています。

Q:
造型制作の時に、口の開き方についても助言があったというお話がありました。やはり顎を大きく開いてはいけないんですね。

瀬下:
はい。捕食動物的な、威嚇する表情とかを出すのはやめてください、と。酒井さんに造型してもらうにあたっては、片塰造型監督から「こんな出で立ちで」という立ちポーズのサンプルの中に、オペラ歌手もありました(笑)。威圧したり、恐ろしげに「これから食うぞ」という感じではなくて、叫んでる時はある種の威厳すら感じる、何か美しい存在であって欲しいという、そういうイメージです。

Q:
今回は原案を虚淵さんが担当されているということですが、三人の中での役割分担というのはどういう風に決まっていたのでしょうか。

瀬下:
明確にはありません。虚淵さんに素晴らしい原案を作っていただいて、そこからストーリーを肉付けしていく所や、世界観を作っている所はみんなでわいわいとやりました。ただ、SF考証とか世界観設定は僕が比較的厚めにやり、静野さんは編集やストーリー構成といった映画全体のエンターテインメント性を高めていく部分を重点的にやって、ということはありました。あと、嬉しいことに三人とも仲が良く、会議でももめた記憶がないんですよね。

Q:
ないんですか!(笑)

瀬下:
東宝さんのスタッフィングの素晴らしさでしょうか。僕と静野さんはもともと個人的に友人なんですけど、虚淵さんとは今回が初めてなんです。でも、静野さんと二人で「虚淵さんほんといいよね」って二人でよく話していて。

Q:
(笑)

瀬下:
僕も含めて3人ともそれぞれに自分の作風、こだわり、アイデアはありますが、「自分のアイデアだから」っていう固執がないのかもしれません。虚淵さんのアイデアでも、静野さんや僕のアイデアでも「面白ければいいよね」で取り込めるタイプの3人です。虚淵さんはとても作家性が強く、何か自分の世界が厳然と存在しているのではないかと思われるかもしれませんが、静野さんや僕の素直な印象としては、とにかくものすごく柔軟で、、チームワークもとてもやりやすい方です。

Q:
虚淵さんはいろんな作品のスピンオフもやられていますが、そのあたりは柔軟性があるからこそなのかもしれませんね。それぞれの作品世界の中に入り込めるというか。

瀬下:
そうですね。あと、人の意見を聞いてうまくバランスを取る事ができる方だし。これは静野さんもそうです。僕も比較的、いろんな意見を聞いて楽しみながら大勢で作るのが好きなので、この3人でやれてよかったなと思います。

(一同笑)

瀬下:
一緒にやっている東宝のプロデューサーである古澤さんや吉澤さんが「こんなのどうですか」って言ったものでもどんどん取り込んだり(笑) だからお二人もすごくたくさんのアイデアを出してくれて。本当に「チームで作れたな」という感じがしています。

Q:
今回初めてお仕事をして「柔軟性もある」と感じられた虚淵さんですが、彼の作家性としての魅力はどういう所だと思いますか?

瀬下:
それはやっぱり「虚淵さんならではのセリフ、展開」っていうスタイルが強くあるということです。僕や静野さんが「映画としてはもうちょっとこういう展開がいいんですよね」と言うと、「じゃあ、これはどうですか」とアイデアを出してくださる。その「引き出し」がものすごく多い。そして「引き出し」に入っているバリエーションのどれを出してきても「虚淵さんらしさ」があるんです。バリエーションが多くて柔軟な上に、個性もちゃんとあるって、これはすごいことです。僕はもう、仕事がしやすくてしょうがないです。

Q:
意見を言いやすい上に、代案がいろいろ出てくると。

瀬下:
楽しいですし、ありがたいです。セリフだって何だって「この言い回しはどうですか」「こういうのはどうでしょう」っていっぱい出てくる。「引き出し」が多いという点では静野さんも同じなので、「アイデアがいっぱい出てきて、選ぶ方が大変」ということもあったりします。この3人なら何本でも映画作れそうな気になります。現場からは「何を言っているんだ」って怒られそうですが(笑)

(一同笑)

瀬下:
いくらでも作れるかも、と思えてしまうんです、とにかく楽しくて、刺激されて、僕自身のアイデアもたくさん出せました。

Q:
この「ゴジラ」は三部作ということで、このあと二部、三部と続きます。

瀬下:
すでにストーリーや脚本は完成してプレスコも終わっており、今はただただ作っていくという段階です。

GIGAZINE(以下、G):
改めて、監督と「ゴジラ」シリーズとの関わりについて伺いたいのですが、どういった出会いだったのでしょうか。

瀬下:
幼稚園にいた4歳ぐらいの頃だったと思いますが、初めて見たのが「ゴジラ対へドラ」でした。その後は親に連れられて毎年東宝さんがやっていた「東宝チャンピオンまつり」などで観る、という感じですね。あと、僕が子どものころはビデオデッキが一般家庭には少なかったので、テレビで再放送されるゴジラを観ていました。「スター・ウォーズ」を皮切りにハリウッド映画にどっぷりはまっていって、基本は洋画ばかりでした。そして特殊撮影技術を使った映画を観まくっているうちに「日本にもゴジラがあるじゃないか」と、原点回帰したような感じです。もちろん、ゴジラマニアを自負する皆さんに比べたら、僕はまったくのライトなファンで、それほどまで詳しいわけではありません。

G:
CGとの出会いは「トロン」あたりですか?

瀬下:
厳密に言えばCGではないんですけれど、「スター・ウォーズ」のデス・スター攻略あたりで出てくるCGに出会って「何だこれ!」となりました。もちろん、その後の「トロン」も大きかったです。だから、僕はいまだにワイヤーフレームが好きで(笑)

G:
(笑)

瀬下:
ジョン・カーペンター監督の「ニューヨーク1997」という作品がありますが、あの映画に出てくるディスプレイグラフィックスは、実はCGではなく、ワイヤーで作った模型に塗料を塗ってCG風にしているらしいんですけど、結構好きなんです。「2001年宇宙の旅」でも、ディスプレイグラフィックスは実はCGじゃないんです。けど、スタイリッシュで、影響を受けてます。「CG的」なものに対する「何これカッコイイ」という気持ちは、そのあたりが原点ですね(笑)

G:
「ワイヤーフレームだ!大好き!」っていう(笑)

瀬下:
今でも好きですから(笑) 「シドニアの騎士」の頃からディスプレイグラフィックにはワイヤーフレームが多めなんですけど、それは「僕が好きだから」です(笑) いかにかっこよくワイヤーフレームを出すかという事にすごくこだわりがある(笑)

G:
本作でもディスプレイグラフィックの登場シーンはすごく多いですよね。キャラクターがみんなディスプレイを見ていて、そもそもあちこちにディスプレイが。

瀬下:
ディスプレイの量でいうと、ちょっとおかしいぐらいの量ですね(笑)

G:
そうなったのはやっぱり出したいという思いもあったし、表現として必要だったと。

瀬下:
ビジュアル的にもかっこよく、説得力もあって、ストーリーの展開を説明する役割もちゃんと果たせるディスプレイグラフィック……が好きです。

G:
ディスプレイグラフィックを作るにあたって、目指す所というのはあるのでしょうか。

瀬下:
大体どんなものにも、基本コンセプトというものを決めるんです。物の成り立ちのルール、スタイルですね。今作のディスプレイグラフィックに関しては「時間差立体」という考え方でデザインをしています。どういうものかというと「奥行きや、ものが変化したり動いていく過程」の一瞬間を切り取った断片を重ねて表示させる。つまり「時間差で立体を表現する」ということですね。断片的、つまり全貌を捉えきれないという状況がストーリーを盛り上げる効果もあり、ああいう様式にしています。まあ、あとはやっぱりワイヤーフレーム表現が好きなので(笑)

G:
趣味と実益を兼ねた表現といえますね(笑)

瀬下:
「全部趣味」ですけど(笑)

G:
劇中でのゴジラで、「ゴジラの断面図」のような表現がありましたが、あれも……?

瀬下:
そうですね。後々のストーリー上でも意味のある、いわゆるメタファーをいろいろ仕込んでいまして、それで「時間差」を強調したグラフィックになっています。仕込みといえば、ディスプレイには様々な文字が出てきますが、地球人類とヴィルサルド、エクシフの使っている文字は、それぞれちゃんとアルファベットに対応しています。

G:
ということは、ビルサルドとエクシフの文字も頑張れば読めるということですね!

瀬下:
相当頑張れば読めます(笑) あれは三種族分のフォントを使用して、所々で意味のある文章を打っています。解読するには相当の努力が必要になると思いますけれど。

G:
映像面でも作品ごとにコンセプトがあり、「BLAME!」では「映像では縦の強調が見どころ」とのことでしたが、本作では何か映像面でのコンセプトはありますか?

瀬下:
やはり「没入感と境遇の共感を高めたい」ということでしょうか。たとえば、人類、ビルサルド、エクシフという3種族が乗り込んでいる移民船の中のデザインはちょっと小さめに、狭めに作っています。物理的な圧迫感、心理的な抑圧を常に与えるための構造にしているんです。逆に地球に降りてからの方が広々としているんですよ。

G:
作中に出てくる地上は、環境としてはかなり厳しいですけれど(笑)

瀬下:
「BLAME!」のときにはとにかく上下運動ばかりしていました(笑)。それは、観客を幻惑する、引き込んで登場人物の境遇への共感や物語世界の空間に没入してもらうための仕掛けでしたが、今回で言うと、意識したのは「抑圧と解放」ということになります。

G:
「シン・ゴジラ」では、ゴジラの中の人(モーションアクター)が野村萬斎さんという事で話題になりましたが、本作のゴジラに中の人はいるんでしょうか。もし、いたとしたら、あのモーションは大変ではなかろうかと思いながら見ていました。

瀬下:
中には人はいなくて(笑)、アニメーターが動きをつけてくれています。ゴジラ自体が謎の金属元素を多分に含んだ繊維質の体組織で構成されてて、シルエットも筋肉質の巨体なので金剛力士的というか、すり足で威厳をもって歩くというようなことは意識してやっています。解剖学的な正しさというより、力強さや勇ましさをイメージとして記号化していくと、ああいう解釈になるという一つの例です。実際、金剛力士像は、いろいろと参考にさせてもらっています。

G:
立派な体格ですよね。ゴジラは作品ごとに顔も体つきも違っているものですが、本作のゴジラの姿を初めて見たときには「こんなにも三角形の体格でどっしりとした、頭の小さなデザインなのか」と驚きました。

瀬下:
あと、脚が長いんです。

G:
長いんですか!?(笑) 意外です。

瀬下:
長い脚でいざとなったらダッシュもできるイメージです(笑)。実際、動きもゆったりに見えますが……たとえば、火山の大噴火の噴煙、あれはゆっくり動いているように見えますが、遠く、大きすぎてそう見えているだけで、そばに近づいたら時速数百キロという猛烈な速度で広がっているわけです。ゴジラも、大きすぎて遅く見えているけれど、そばまで行くとものすごい速度で移動している。そういう描き方をしています。

G:
遠目に置かれたカメラのイメージで見ているせいだったんですね。

瀬下:
そういうことなんです。すごいスケールなので、しっぽを振った時も、遠くからだと一見ゆっくりに見えているけど、実際には尻尾の先端は音速を超えている。

G:
今回、音楽では「ハルオたちが『防衛軍』なんだな」と思える勇壮なBGMが流れました。あれはそういう意味合いを込めての曲ですか?

瀬下:
そうですね、まさに「勇ましさ」を強調したいと相談し、進軍する人型種族たちの勇壮なBGMとして服部隆之さんに入れていただきました。

G:
話が制作に飛んでしまいますが、ポリゴン・ピクチュアズさんといえば制作管理がとてもしっかりしていて、「シドニアの騎士」では放送開始の2カ月前には全話納品が完了していたという話を聞いています。

瀬下:
(笑) 基本は常にそうですね。

G:
一方で、コンピュータを使って作業していると、いくらでもやり直しが効くから作業をずっとやっちゃう、ということがあったりすると聞くのですが……

瀬下:
いえ、そんなことは全然ないですよ。

G:
えっ、ないんですか?ギリギリまでやってしまうものだと思い込んでいましたが、それこそ、制作管理がしっかりできているからということでしょうか。

瀬下:
むしろ、「やり直しの回数をどれだけ減らせるか」が勝負だと思っています。うちに限らず、我々のような3DCGスタジオがアニメを作ることと、いわゆるアニメ会社さんがCGを使うということは、実は似て非なるものなんです。我々の工程の性質は、むしろ「建築」に近いです。

G:
「建築」ですか。

瀬下:
どういう場所にどういう建物を、どのように建てるのか、企画や予算に基づいて設計や試作をします。その上で資材を用意して現場に運び込み、施行を進めます。途中「30階建てのビルを作る予定なのに、20階用の資材しか用意していなかった」とか「階段をつけるためのドアがなかった」となると、建築の場合は、そこからどうにかできるものではなくて、まさに取り返しがつかない状態であることが想像つくかと思います。3DCGもそれに近くて、設計や試作、資材用意をするところが本当の勝負なんです。

G:
おおー、なるほど。

瀬下:
別な言い方をすれば「根性でなんともならないのが3DCG」(笑)。3DCGだと、致命的なものに対して「後でなんとかする」ということはしづらいです。逆に、作業を日々定型・定量化された、つまり業務化できればスケジュールも品質管理もしやすくなります。

G:
だからこそ、最初の資材の準備が勝負であると。

瀬下:
そうです。資材、つまりアセットをどれだけ用意するか、どう作るかというところです。

G:
ということは、第二部、第三部はすでにアセットが揃っているし、プレスコも終わっているとのことなので、あとはひたすらに「建てるだけ」と……。

瀬下:
基本的にはそうなります。ただ、「建てるだけ」でもものすごく大変ですが(笑)

G:
(笑)

瀬下:
これまでに僕はポリゴン・ピクチュアズで「シドニアの騎士」「亜人」「BLAME!」とセルルックCGの作品をやってきましたが、本作が一番難しいです。ミクロからマクロまでスケールレンジの大きい物語空間、たくさんの登場人物が入り組んで、同時多発的に物事が起きて……。「シドニア」にしても「BLAME!」にしても、世界は箱庭的でしたから……大変です。

G:
ここ5年ほど手がけられてこられた作品で積み重ねてきたものの集大成のような感じでしょうか?

瀬下:
集大成……と言うとちょっと大仰なんですけど、そうですね、ここまでやってきたひとつの「節目」かもしれません。

G:
なるほど。ありがとうございました。


今回の「GODZILLA 怪獣惑星」制作現場にはNHKのカメラが密着しており、いかにして新しいゴジラが生み出されたのか、そしてどのようなプロモーションが行われたのか、東宝の「ゴジラプロジェクト」の一翼を担う存在としての「アニメゴジラ」を明らかにする番組が作られ、12月3日(日)22時からNHK-BS1で放送されることが決まっています。

BS1スペシャル「ゴジラを進化させよ!~ニッポン・アニメ 世界への挑戦~」 - NHK
http://www4.nhk.or.jp/bs1sp/x/2017-12-03/11/15750/2393147/

◆ゴジラゲート
プロモーションの一環として、新宿駅東口には期間限定で「ゴジラゲート」が設けられていました。


ゴジラの頭部後方には「シン・ゴジラからアニゴジへ」の文字が入っていました。


このゴジラはバルーン製。制作途中の姿はこんな感じで、真っ白でした。


頭頂部から後方にかけてはトゲのような突起が並んでいます。


もちろん塗装が行われるのですが、この時点ではとてもアニゴジとは似ても似つかぬ色。


そこへ色を重ねて、アニゴジに近づけていきます。


瀬下監督が語ったように、「地の色はブルー」「コケが重なって緑色に」という印象になってきました。頭部はまだ明るい緑色ですが……


同様に仕上げていきます。


これでおおむね完成。


目は光るギミックありです。


ゲート設置は夜のうちに迅速に行われました。まずは土台となる鉄骨をクレーンで持ち上げて……


階段入口の天井に設置。


その上でバルーンを膨らませます。


作業は約3時間ほどで完了した模様。


同時に、階段自体にも装飾が行われました。段の横を利用した「歴代最大ゴジラ現る」というメッセージ入りの巨大イラスト。


階段側壁には「シン・ゴジラ<実写>から」……


「アニゴジ<アニメーション>へ」というバトンリレーの絵が。どちらのゴジラも全力攻撃中。


日中は、色も相まって「重量感のあるゴジラヘッドが現れた」という印象ですが……


夜は目が光って、やや恐くもあります。「畏怖」の対象としてデザインされているので、それで間違っていないのかも。


映画「GODZILLA 怪獣惑星」は現在、絶賛公開中。公開初週は、上映館はそう多い方ではないながらも第3位に食い込む大健闘っぷりです。

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