核融合発電の最大の障壁「ヘリウムバブルによる金属脆化」を解決する構造が初めて発見される


次世代のエネルギー源として研究が進められている核融合の技術をまた一歩前に進める発見がもたらされています。アメリカのテキサスA&M大学が中心になって行われた研究からは、核融合発電技術の大きな障害になっていた金属素材が脆(もろ)くなってしまう問題「ヘリウムバブルによる金属脆化」に対する高い耐性を持つ構造が発見されました。

Self-organization of helium precipitates into elongated channels within metal nanolayers | Science Advances
http://advances.sciencemag.org/content/3/11/eaao2710

Channeling helium: Researchers take next step toward fusion energy | 10 | 11 | 2017 | News & Events | College of Engineering
http://engineering.tamu.edu/news/2017/11/10/channeling-helium-researchers-take-next-step-toward-fusion-energy

A Helium-Resistant Material Could Usher in the Age of Nuclear Fusion
https://futurism.com/helium-resistant-material-usher-nuclear-fusion/

核融合発電では、水素やヘリウムなど軽い原子が衝突して融合する際に生じる非常に大きなエネルギーをもとに発電が行われます。原子核が融合する際に強い放射線が放出されますが、反応が止まると原理的には放射線の放出はゼロになります。そのため、原子力発電におけるプルトニウムのような一次的な核廃棄物が生じないため、核融合発電は「夢のエネルギー源」ともいわれています。

そんな核融合発電の妨げになっている要因の一つが、ヘリウムバブルによる金属脆化の問題です。これは、水素原子の核融合反応の際に生じる副産物であるヘリウムが、金属の表面に近い部分に微細な泡「ヘリウムバブル」を発生させることで金属をまるでスポンジのような状態、さらには毛羽だった繊維のような状態にしてしまうというもので、最終的には金属を非常に脆い状態にしてしまいます。そのため、高い圧力に耐える性能が必要な反応炉に使える金属や、その構造の開発が課題とされています。

今回「金属脆化」をクリアするブレークスルーとなる発見をしたのは、テキサスA&M大学とロスアラモス国立研究所による研究チームです。研究チームは金属脆化問題を解決するために、新しい構造によるヘリウムバブル生成の変化を調査。すると、ナノレベルで生成された金属の層を設けておくと、発生したヘリウムバブルが次々とつながり、トンネル状に「自己成長」するという現象が生じることが発見されました。その様子はまるで生き物の血管のようにも見えるもので、テキサスA&M大学のMichael Demkowicz教授は「私たちは目にしたものに圧倒されました。そのナノサイズの構造物にヘリウムをどんどんと与えると、従来のように金属素材を破壊することはなく、代わりに生じたトンネルが次々とつながり血管のような構造を作ったのです」と語っています。


その成長を図示したのが以下の図。帯状の部位にヘリウムバブルが生じ(B)、徐々に線状にバブルが成長し(C)、最終的にはつながることで管のような構造を形成する(D)という現象が確認されています。


Demkowicz氏によると、この成果をもとにまず考えられるのが、ヘリウムを外部に逃がすことができる構造体の形成だとのこと。これまでの素材はヘリウムを内部に留めることを主眼としていましたが、生じたトンネルの中にヘリウムを通すことで外部へと放出するというソリューションが考えられるとのこと。

さらに、その後は生じたトンネルの中に熱や電気、または特定の化学物質を送り込むことで、素材が「自己回復」する仕組みも考えられるとのこと。つまり、生物の血管のような仕組みが金属の中に構成されるという、画期的な技術の確立が期待されています。

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in サイエンス, Posted by logx_tm