取材

魔人ブウのモデルとなった編集者も登場し集英社・講談社・先端VRベンチャーが語った「VR×キャラ」トークショー


2017年10月7日~9日に開催された「マチ★アソビ vol.19」のクライマックスランの中で、VR(バーチャルリアリティ)の深淵に迫るフルダイブトークショー「VRの主役はルフィ!?リューク!?それともVR時代のニューヒロイン!?集英社・講談社・先端VRベンチャーが語るVRキャラの魅力!」が行われました。マチ★アソビだからこそ実現した豪華ゲストそろい踏みのトークショーということで、貴重なお話を伺ってきました。

マチ★アソビ vol.19 2017.09.23~10.9開催
http://www.machiasobi.com/

集英社・講談社・桜花一門が贈るVR×キャラトークショーは「徳島VR映像祭」の一環として行われました。司会には徳島VR映像祭を主催する「MyDearest」代表の岸上健人さん(画像左)、日本唐揚協会広報担当にしてVR体験大好きだと自称する女性声優の有野いくさん(右)が登壇。徳島VR映像祭はひかりTVの協賛ということで、マスコットキャラクター・ひかりカエサルのぬいぐるみもいっしょです。


まずゲストとして呼び込まれたのは、「週刊少年ジャンプ」に連載された大人気マンガ「ドラゴンボール」の元担当編集であり、作中のキャラクター「魔人ブウ」のモデルになったともいわれている集英社の武田冬門さん。2007年~2009年に配信されていたラジオ番組「昌也・真澄のバクバクON AIR!」では、パーソナリティの浅野真澄さんから「武田ブウ」と呼ばれていました。


次に登壇したのは、講談社のVRプロジェクトを一手に担うVRプロデューサー・松下友一さん。着用しているTシャツは松下さんが手がける講談社のバーチャルアイドルプロジェクト「Hop Step Sing!」のものです。


最後は、VR展示会「JapanVR Fest」主催、NPO法人オキュフェスの桜花一門(高橋建滋)さん。NPOの他、VRゲーム制作の桜花一門としてVRゲーム制作に携わる、日本で最もVR開発に詳しい人の1人だと紹介されていました。


コンテンツ業界の主軸を担う集英社の武田さん、講談社の松下さん、VR開発の最先端を走る桜花一門の高橋さんが一堂に会するこのトークショーは、徳島だからこそ、「マチ★アソビ」だからこそ実現した激レアなイベントだと、岸上さんは強調していました。

3人のゲストがそろったところで、司会の岸上さん・有野さんからの質問に、ゲスト3人がフリップで答える一問一答のコーナーにうつりました。最初の質問は「なぜVRに取り組もうと思ったのか」という根幹のところ。


いち早く解答を書き上げた武田さんは「なんでだろう?」と高く掲げ、会場が笑いに包まれました。というのも武田さんは、ビジネスとして関わっていくまで、VRをあまりよく知らなかったのだとか。既存の人気作品のアニメやゲームのような二次利用を新しく考えていた際に、SCRAPの「リアル脱出ゲーム」の大ファンだったこともあり、VRで脱出ゲームをしようというところにいつの間にか行きついていたそうです。


高橋さんはかなり具体的に、1991年に「バーチャリティー2000」というアーケードVRシステムの存在を知った時から、ずっとVRに興味を持ち続けていると回答。


松下さんの回答は「新しいことをすればうちの女の子たちを宣伝費かからず目立たせそうだったから」というものでした。バーチャルアイドル「Hop Step Sing!」の活動舞台として考えたとき、VRという回答にたどり着くことは自然だったとか。


次の質問は「VRに取り組んだ手ごたえは?」というものでした。高橋さんが間髪入れず「沼」と書き上げて会場が笑いに包まれます。ただ、「VRの底なし沼にはまっていく」というのは深刻なようで、「やればやるほどVRは難しい」ということを強調していました。ユーザーの大半にわかるように説明するには内容が細かくなりがちで、かといって説明を丁寧にしすぎると興ざめしてしまう、そのバランスを取るのが難しいそうです。


松下さんは「経費で落ちない」と切実な悩みを打ち明けます。「これの開発のためにこれを買う」と示すならば仕事の経費として落とすことができるものの、「VRで何ができるのか」を探るために種々のVR機器を探る段階では、自腹で購入せざるを得なかったと打ち明けました。

武田さんが「池」と書かれたのは高橋さんの「沼」に対抗しただけとのことですが、お話はフリップとは関係なく権利関係の複雑な視点に。マンガなどの知的財産をアニメにするにはとてもお金がかかり、それはアニメの権利をゲームやグッズなどに切り分けて回収していくことになりますが、「VR」という区分はもともとはなかったものなので、「ゲーム」なのか「アニメ」なのか区分が難しいのだそうです。集英社側がキャラクターの3Dモデルを勝手に作ったりすると、アニメ版権を侵略することになる可能性もあるのだそう。集英社を信用してライセンシーになった方々を裏切るような一方的な展開は信義則に反することであり、新しいメディアとしての舵取りが難しいとのことでした。



「VRが流行するためには」との質問に、松下さんは「『インスタ映え』できないことは問題」と回答。さまざまな体験や感動を共有することが求められる現代において、ヘッドマウントディスプレイをかぶってひとりだけ没入するというのは物足りないと述べつつ、Oculus VRを買収したFacebookが解決してくれる可能性が高いと可能性が高いと希望的観測をしていました。

開発に関して最も詳しい高橋さんは、「エポックメイキングなタイトルがあれば爆発的に流行しうる」という意見を、ゲームの歴史に基づき語ってくれました。「ファミコンレベルに普及するものをつくれば世界は変わる」と述べつつ、「MicrosoftのMRはファミコンに手がかかるかもしれない」とのことで、期待しても良さそうだそうです。MRとは、mixed-reality(複合現実)のことを指し、ARとVRの中間のようなデバイスのこと。


VRについての余談の中で、高橋さんは「500年後」というフリップを出しました。「500年後を考えるには500年前を考えればいい」ということで振り返ると、500年前のヨーロッパの人々はとても残忍だったのですが、グーテンベルクの活版印刷の発明により、人の心を書物で共有することができた結果、残忍さが薄れることになったのだとか。それをふまえて500年後を考えると、VRによって人の気持ちがもっとわかるようになって、人々は優しくなるのではないかと予想。「500年後に確かめてほしい」とVRトークショーを締めくくりました。


最後のひとことでは、武田さんは先祖をたどると半分徳島人とのことらしく、年に2回訪れたいと今後も参加する意思を表明。松下さんはマチ★アソビでも「Hop Step Sing!」のステージがあることを告知しつつ、「Hop Step Sing!」は歌からバラエティまで、人気アイドルがやっていることは全部やるとの意思を示しました。高橋さんは最近1人でマチ★アソビに参加しているため忙しく、次回はゆっくり回りたいとのことでした。

トークショーが終了する前に、高橋さんの提案でゲスト・司会の方々全員でサインを書くことに。元ドラゴンボールの担当編集だった武田さんが、ドラゴンボール作者鳥山明先生のサインを完コピするという技を披露し、会場を沸かせました。


武田さん、松下さん、高橋さん、そして司会の岸上さん、有野さんの5人のサインをかけてのジャンケン大会が行われ、盛り上がりも冷めないうちにトークショーは終了しました。

マチ★アソビ vol.19で一連のVRイベントを主催されたMyDearestがリリースしたFullDive novel「Innocent Forest」が、ネットカフェなどでVR体験ができる施設設置型VRコンテンツプラットフォーム「VIRTUAL GATE」およびスマートフォン向けVRデバイスGear VRで体験できます。VRの物語体験に興味がある人は、お近くのVIRTUAL GATE対応のネットカフェなどで体験してみることをおすすめします。

FullDive novel: Innocent Forest

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in 取材,   マンガ,   アニメ,   ゲーム, Posted by log1e_dh

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