なぜロシアの人々は笑わないのか?

by Melan Cholia

日本では笑顔を向けることが親しみや温かさの表れとして捉えられますが、国や文化が違うと、知らない人に笑顔を向けたり、写真撮影の時に笑顔を作ることが奇妙なこととして捉えられます。アメリカで育ったロシア人が、「なぜ頻繁に笑顔を作る文化とそうでない文化があるのか?」と疑問に持った結果、ある研究を1つの根拠として挙げています。

Be Careful Where You Smile: Culture Shapes Judgments of Intelligence and Honesty of Smiling Individuals | SpringerLink
https://link.springer.com/article/10.1007/s10919-015-0226-4/fulltext.html

Why Do Russians Never Smile? - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/science/archive/2016/05/culture-and-smiling/483827/

ロシア人の両親を持ちアメリカで育ったOlga Khazanさんは、友人と写真を撮る時に「笑顔で、チーズ!」と言われて育ちましたが、両親はいつも写真撮影するときに石のように硬い表情だったことをつづっています。Khazanさんによると、写真撮影時に笑顔を見せないのは親戚についても同じことであり、さらに言うと、ロシアの女性は「もっと笑顔を」と男性に言われることもあまりないそうです。

by GorVlad

ロシアの人々が笑顔を作らないのは、必ずしも「不幸せである」ということを意味しないとKhazanさん。ただ単に、理由もなく笑うということはロシア人のスキルではなく、笑顔を向けられると親密さを強制されているかのように感じるということのようです。ロシア人のしかめ面は初めて会ったアメリカ人には異常に写りますが、一方でロシアからアメリカに移ったばかりの人は、見知らぬ人に微笑まれることを奇妙に感じるとのこと。

Khazanさんの例を見てもわかるように、文化によって笑顔のとらえ方はさまざまです。ポーランド科学アカデミーの心理学者であるKuba Krys氏は、そんな笑顔について研究しており、文化によっては笑顔が尊敬や温かさの表れとして受け取られないことを指摘しています。

Krys氏は不確実性の回避に焦点を当てて調査を実施しました。不確実性の回避とは曖昧・未知の状況に対して寛容か、それとも脅威を感じるのかを示す言葉で、不確実性の回避傾向が高い国は不確実性を減らすために規則・仕組み・約束事が必要とされます。一方で、不確実性の回避傾向が低い国は、裁判・ヘルスケアシステム・セーフティーネットなどが不安定な社会システムを持ち、ゆえに人々は未来について「予想がつかず、制御できない」と考える傾向にあるとのこと。

笑顔とは確実性や信頼のサインであるため、不確実性の回避傾向が低い国で人々が笑顔になることは奇妙なものとして見られます。これは、オオカミに食べられる運命が分かっている状況で人が笑顔を見せるようなもので、不確実性の回避傾向が低い国では、笑顔は愚かであることの表れと捉えられることさえあるとのこと。Krys氏は、みんなが互いをだまそうとしている国において笑顔を向けられた時、人は相手が自分によい意図を向けているのか、それともだまそうとしているのかが分からないとして、「不確実性の回避傾向が低い国では、笑顔はしかめつらに等しいのでは」と仮説を立てました。

by Matheus Ferrero

Krys氏はこの仮説を検証するため、世界44カ国の数千人を対象に、笑顔と笑顔ではない表情を写した複数の写真を見せ、それぞれの表情について被験者に「誠実さ」と「知性」を評価してもらいました。その結果、ドイツ・スイス・中国・マレーシアという国では、笑顔の写真は笑顔ではない表情の写真より、知性が高いものとして評価されたとのこと。一方で、日本・インド・イラン・韓国・ロシアなどでは、笑顔の写真が知性の低いものとして評価される傾向にあることがわかりました。経済状況といった要素を考慮しても、社会の不確実性と「笑顔は知性が低い」という2つの間には関係性が見られたそうです。


他方、インド・アルゼンチン・モルディブなどでは、笑顔が不誠実さに関係するものとして見なされる傾向がありました。


「この研究は、社会レベルにおける退廃が、笑顔のように進化において重要な意味を持つもののシグナルを弱めていることを示します」とKrys氏は語ります。

このほか、(PDFファイル)別の研究においては、文化における階層や男らしさが、笑顔を含む感情表現のとらえ方に影響を与えている可能性が示されています。また、幸福について重きを置かない文化では、笑顔を見せる頻度なども変わってくるだろうとみられています。ただし、不確実性の回避を測る指標は複数あり、別の方法で各国のランキングを作ると異なった結果になることについてもKhazanさんは言及しています。

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