サイエンス

イーロン・マスク氏が「質問ある?」を実施してスペースXの新ロケット「BFR」などについての質問に回答


アメリカ時間の2017年10月14日(土)、Redditの名物企画「Ask Me Anything」(AMA:「質問ある?」)が実施され、イーロン・マスク氏がユーザーからの質問に答えました。質問はマスク氏が9月末にプレゼンを行ったロケットや火星探査に関するものに限られていましたが、発表したばかりの巨大ロケット「BFR」やロケットエンジンなどについていろいろな質問が投げかけられています。

I am Elon Musk, ask me anything about BFR! : space
https://www.reddit.com/r/space/comments/76e79c/i_am_elon_musk_ask_me_anything_about_bfr/

Here's Everything Elon Musk Unveiled About Tesla & SpaceX in His AMA
https://futurism.com/elon-musk-reddit-ama-tesla-spacex/

Here’s what Elon Musk revealed about the ITS and SpaceX’s Mars ambitions in his Reddit AMA - The Verge
https://www.theverge.com/2017/10/15/16476884/elon-musk-reddit-ama-spacex-mars-interplanetary-transport-system-raptor-engines

マスク氏はAMAの実施前に以下のようにツイート。「r/space」が示すように、宇宙に関するカテゴリの中でAMAを実施する旨を公表していました。

BFR AMA on r/space in 2 hours

— Elon Musk (@elonmusk)


◆巨大ロケット「BFR」と火星探査計画について
当然のように質問の内容は2017年9月末にオーストラリアのアデレードで開催された宇宙会議「International Astronautical Congress」で発表された内容に関するものが相次いでいた模様。あるユーザーからは、2016年に発表された計画では宇宙船の形状にはある程度の凹凸があったのに対し、2017年の計画ではシンプルな円筒形状に変更されていたことについて質問がありました。これに対しマスク氏は、「ベストの質量比を実現するため」と、「推進剤が入るタンクの重量と強度を最もバランス良くするためとより多くの推進剤を積むためのソリューションとして、タンクを円筒状にして断熱材を直接貼り付ける必要があったため」と回答しています。しかし、この設計も今後見直される可能性は十分にあるとのこと。


別のユーザーからは、「2016年の計画ではデルタ翼状のフィンがロケットの機体表面にあったが、2017年の計画では、機体尾部に小さなものがあるだけなのはなぜか?」という質問。これに対してマスク氏は、「あれは揚力を生む翼ではない」としつつ、機体のバランスをとって「軌道から大気圏に再突入する際にエンジン部から突入することを防止するため」、そして「機体のヨー方向の動きとピッチ方向の動きをコントロール可能にするため」と説明しています。


また、マスク氏は自ら推進剤タンクの冷却についてコメント。タンクへの燃料注入から数分~十分程度で推進剤を使い果たす人工衛星打ち上げロケットだとそれほど大きな問題にはならないのですが、数か月を要するという火星への旅路においては、推進剤タンクを低温に保っておく必要があります。もし、太陽光を受けたり、大気圏突入の際に過熱されたりしてしまうと極低温のメタンや液体水素が蒸発してタンク内が高圧になるほか、貴重な燃料が使えなくなってしまうとも考えられているためなのですが、マスク氏はこれに対して「断熱材をタンクに直接貼る」ことと、「極低温冷却装置(CryoCooler)を搭載させる」と解決策を語っています。


◆ロケットエンジン「ラプター」について
2017年時点の計画では、ロケットに搭載されるロケットエンジン「ラプター」の数が42基から31基へと減少し、エンジン一基あたりの推力も300トンから170トンへと小さくなっているとのこと。あるユーザーがその理由について尋ねたところ、マスク氏は「機体重量が最初の計画よりも軽くなったため」と説明。


またマスク氏は、この変更は安全な着地を実現するための施策であるとも解説。逆噴射を行って着陸する際に使用するエンジンの数を増やすことで、仮に1基にトラブルがあっても着陸を継続させることが可能になります。その際に、2基のエンジンで逆噴射を行っているとすると、片方にトラブルが生じた時にもう片方の推力を大きく上げる必要があります。大推力のロケットエンジンの難しいところは、スロットルを大きく絞ると推力の変化量が非直線的になってしまうところにある、とマスク氏は語っているのですが、これはつまり、エンジンを大きくして少ない数のエンジンで逆噴射を行うよりも、小さめのエンジンを多く用いて逆噴射させて着地する方が、トータルの確実性を高めることができる、という狙いがある模様。


そしてさらに、その狙い先には、地球上のどの場所にでも1時間以内で到達できるというロケット型旅客機の運用があるものと見られます。宇宙飛行士ではなく、一般の乗客を多く乗せて頻繁に飛行をおこなう旅客機の場合は、高い安全性はもちろん、トラブルに対する幾重もの冗長性が欠かせません。

「ラプターエンジンを3Dプリントする可能性は?」と尋ねられたマスク氏は、「いくつかのパーツは3Dプリントで作られる」としながらも、大部分は従来どおりの方法で作られることを示唆。推進剤と酸素を激しく反応させるロケットエンジンには、高圧と高温に耐えられる素材を用いる必要があるのですが、SpaceXではそのような状況にも耐えられる金属の新素材を開発しているとのこと。


◆火星の環境について
SpaceXが目指している火星についても質問が寄せられています。SpaceXでは、ロケットの推進に必要な推進剤を火星の資源を使って作り出す「現地資源利用」(ISRU)と呼ばれる技術を用いて、火星からの帰路の際に使う燃料・メタンと酸素を生成することを計画しています。このシステムの開発について「誰が担当?進捗状況は?」と尋ねられたマスク氏は「SpaceXが開発。設計は進んでいます。この技術はシステム全体のカギとなる部分です」と回答。別のユーザーからはマスク氏が設立したトンネル企業「The Boring Companyのボーリングマシンも火星に持っていく?」という質問が投げられており、マスク氏は「more boring!」(もっと穴掘りを!)と回答しているとのこと。


別のユーザーからは「この計画にはどんな企業が関わっているのか」などの質問が寄せられています。これに対してマスク氏は企業名などは明らかにしていませんが、SpaceXのゴールは「人を送り届けて現地で燃料を作り出すための基本的なインフラを構築し、生存できる環境を作ること」と回答。その様子についてマスク氏は「大陸横断鉄道を作るようなもの」と表現しています。


この計画について、マスク氏は多くの人や企業の協力が不可欠であるとも述べています。また、これまでにも「火星都市」についてのイメージ映像が公開されてはいますが、マスク氏は「あまり深読みしないこと」とし、まだまだこれからいくつもの変更が加えられることを示唆しています。

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in 乗り物,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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