「おいしいコーヒー」を化学と物理に基づいて作る

by Nathan Dumlao

カフェや喫茶店などでバリスタが淹れてくれたコーヒーは、家庭で淹れるコーヒーよりも風味がよく「おいしい」と感じられます。では家庭で淹れるコーヒーとお店で出されるコーヒーは何が違うのか?ということで、計算材料科学と化学の准教授であるChristopher H Hendon氏がおいしいコーヒーの入れ方を化学と物理の観点から解説しています。

Brewing a great cup of coffee depends on chemistry and physics
https://theconversation.com/brewing-a-great-cup-of-coffee-depends-on-chemistry-and-physics-84473

フィルターコーヒーの場合、コーヒーに含まれる有機酸褐色物質エステル複素環式化合物といった成分は、全体の1.2~1.5%を占め、この割合はエスプレッソマシンを使うと8~10%に増えます。このコーヒー成分は、人が「おいしい」と感じることに関係していますが、8~10%以上の成分割合のコーヒーを作るのは、技術的に非常に困難になるとのこと。

ハンドドリップ、トルココーヒーエアロプレスサイフォンフレンチプレスといった抽出方法では、コーヒー成分の割合はいずれも1.2~1.5%の範囲に収まります。では、なぜ成分はほとんど同じなのに、抽出方法によって味が変わるのでしょうか?

まず関わってくるのが「温度」という要素。エスプレッソのような濃縮液を作る方法を除くと、コーヒーの入れ方は「コーヒー豆をお湯に浸す」という方法と「コーヒー豆にお湯を通過させる」という2種類に大別されます。そして物理の側面から見たときに、最も大きな違いは、「お湯に浸す」ときの方がコーヒーの微粒子の温度が高くなるということです。

by Christy

コーヒーの粒子の温度は、コーヒーのフレーバーが硬い粒子から水に移る「速度」に関係しており、温度が高くなるほど速度は速くなります。このとき、粒子の温度が高いとコーヒーの粒子に閉じ込められた「おいしい」要素がよく抽出されることになりますが、温度が高すぎると、雑味のようなお湯に溶け出して欲しくない要素まで溶け出すことになってしまいます。

豆をお湯に浸すという方法では「時間」が比較的簡単にコントロールできるのに対し、コーヒー豆にお湯を通過させるという方法はより複雑です。豆の挽き方によってお湯が流れるペースが異なり、それによって抽出時間が変化するためです。また、豆を細かく挽くことだけでなく、豆の量が多くなることによってもお湯がコップに落ちるまでの時間がゆっくりになるので、抽出の時間は長くなります。豆の量を減らすとコーヒー豆に対するお湯の比率を増やすことができますが、他方で抽出時間も短くする必要があるなど、「お湯に浸す」という方法よりも「お湯を通す」という方法の方が複数の要素を考える必要があり、はるかに複雑な作業と言えます。

そして、お気に入りのバリスタと同じ抽出方法・器具を使ってコーヒーを淹れたとしても、味は異なります。水やコーヒー豆の粒子の大きさによってもコーヒーの質は左右されるためです。

by Sabri Tuzcu

まず、水にはカルシウムイオンおよび炭酸水素塩が少ない軟水と、両者が多い硬水が存在します。軟水で作ったコーヒーは時に「すっぱい」と表現されるほど酸が強くなりますが、硬水で作ったコーヒーは炭酸水素塩がコーヒーに含まれる酸によって中和されるため、やや粉っぽくなるそうです。

おいしいコーヒーには、酸っぱすぎず粉っぽすぎず、ちょうどいい中間の風味が求められますが、多くの人は自分が使っている水の炭酸水素塩の濃度を知らないもの。水によってどのくらい味が異なるのかということを確かめるためにも、ペットボトルで販売されている水の中でも最も炭酸水素塩の濃度が高いエビアンでコーヒーを抽出してみることが推奨されています。

また、コーヒー豆の粒子のサイズも、味を大きく変える要素です。一般的に、回転羽根式のグラインダーを使うと、粒子のサイズがばらばらになり、一方で挽き臼式のグラインダーは均等に細かく挽けると言われています。しかし、どのくらいのサイズになるまで挽けばいいのかには議論があり、あるスクールでは豆の表面積が最大になるように限りなく細かく挽くことを生徒に教えており、別のスクールでは雑味を抑えるためにできる限り粗く挽くことを教えているという状態とのこと。つまり、豆の挽き方は、飲む人の好みに合わせるのがベストと言えます。

by Anthony Tran

そして重要なのが、コーヒー豆自体の鮮度。ローストされたコーヒー豆はかなりの量の二酸化炭素と揮発性の成分を含んでいますが、時間がたつごとにこれらの成分は豆から抜け出してしまいます。揮発性の成分が抜けた後のコーヒーは風味が少なくなってしまうため、コーヒーにこだわるカフェではローストした日から4週間以上たった豆を使わないそうです。また、コーヒーの劣化は冷所で保存することによって和らげられるので、コーヒー豆を少しでも新鮮に保ちたい場合は、密閉容器に入れた状態で冷凍庫に入れることがオススメとのこと。

上記の内容からもわかるように、1杯のコーヒーには科学を含めたさまざまな要素が関わっており、だからこそお店の1杯が家で飲む1杯よりも「おいしい」と感じられる仕上がりになっているのです。ただし、おいしいコーヒーは数学的な1つの完璧なアルゴリズムに基づいているのではなく、人の舌に合わせて作られているので、重要なのは実験を繰り返し、自分の舌にあったコーヒーを追及することと言えます。

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