物語が作者の自己陶酔に陥っていないか採点できる「メアリー・スー テスト」


主に二次創作で、もとの作品にはいないオリジナルキャラクターであるにも関わらず「優秀」「特別」が行きすぎたキャラクターのことを「メアリー・スー」と呼び、作者の自己陶酔に過ぎないと批判を受けることがあります。自分で物語を紡いでいるときには自己陶酔に陥っていることに気付くことのは難しいものですが、作品の完成前に「Mary Suie(メアリー・スー)テスト」を行うと、自身の作品を見つめ直すことができるかもしれません。

Mary Sueテスト: 設問
https://iwatam-server.sakura.ne.jp/game/marysue/test.html

◆メアリー・スーとは?
「メアリー・スー」という名前は、世界的人気を誇るSFドラマ・映画シリーズ「スター・トレック」の二次創作「A Trekkie's Tale」に登場するオリジナルキャラクター「メアリー・スー大尉」に由来します。「A Trekkie's Tale」がどういう話なのかは、筒井康隆のSF小説「虚構船団」をマンガ化した「萌え絵で読む虚航船団」などで知られるカスガ氏によって日本語訳されています。

カスガ氏によるメアリー・スーの元ネタA Trekkie's Taleの日本語訳 - Togetterまとめ
https://togetter.com/li/676503

カーク船長、Mr.スポック、Dr.マッコイ、Mr.スコットと登場人物みんなに気に入られ、危機に陥っても快刀乱麻の大活躍をするメアリー・スーは、原作の設定も、この物語自体もめちゃくちゃにしてしまっています。以下のイラストは「A Trekkie's Tale」の作者、ポーラ・スミス氏が描いたメアリー・スー。


そのはちゃめちゃさは、この「A Trekkie's Tale」という二次創作小説自体が、原作へのリスペクトなく作者の自己陶酔的オリジナルキャラクターを大活躍させる二次創作に皮肉を送る意味で書かれているためです。成立の経緯などについてポーラ・スミス氏が「Transformative Works and Cultures」のインタビューに答えた内容は、以下のリンク先で公開されています。

A conversation with Paula Smith | Walker | Transformative Works and Cultures
http://journal.transformativeworks.org/index.php/twc/article/view/243/205

この「A Trekkie's Tale」のメアリー・スーから転じて、二次創作の中で作者の投影が強すぎるオリジナルキャラクターを登場させたり、原作の設定を踏み荒らすように好き勝手な展開を広げることを「メアリー・スー的」、あるいはキャラクターを指して「メアリー・スー」と、悪口として用いられるようになったようです。

◆メアリー・スー テスト
こうした「メアリー・スー」的なものに陥っていないかを調べる指標として、ハードSF好きだというiwatam氏が作成したテストが「Mary Sue(メアリー・スー) テスト」です。2004年12月に作られたものですが、10年以上経過した今でも問題なく通用する内容です。



最初の設問は「名前」について。「XXX(キャラの名前)というのはあなたの名前、ニックネーム、ハンドル名のどれかである」など、主人公の名前からしてあなた、つまり作者の分身であるかとの問いが並びます。名前に関する設問は他にも「XXXという名前を考えるのにまる1日以上かかった」「男なのに女の名前である。または女なのに男の名前である」など、主人公の名前がいかに特別かを問うものが並んでいます。最後の「XXXという名前は、悪/死/破壊を連想させる」のみ、他の問いとはやや毛色が異なります。


次は「外見」の設問群。「複数の種族の混血である」「右目と左目で目の色が違う」「髪の毛の色が通常ではありえない色である」「顔には一生消えない大きな傷跡があるが、そのせいで醜い顔だという評価をされることはなぜかない」「男なのに女の格好、あるいは女なのに男の格好をしている。しかしそのキャラは同性愛者ではない」などの選択肢が並びます。


3つ目は「生い立ち」。「登場人物の隠し子、生き別れになった兄弟、あるいは生まれ変わりである」「このストーリーの最後の敵(ラスボス)の関係者である」「過去の記憶がない」「(その世界にとっての)異世界から来た」などが並びます。


「難しい技能を訓練なしですぐに覚えることができる」「子どもや動物がよくなつく」あたりは、ついつい付与しがちな能力のような気がします。


「他人との関係」の項目には、「登場人物のだれか、あるいは他のオリジナルキャラのだれかと恋に落ちる」「物語はあなたのキャラの結婚式で終わる」という二次創作で見るとかなりキツいものも含まれます。「あなたとキャラとの関係」では、キャラクターが作者の分身や理想的な存在になっていないかを問う設問が並んでいます。


最後に物語の根幹の部分の設問が並びます。「ストーリー」については「身に覚えのない濡れ衣を着せられる。しかしその理由はまったく説明されない」「その物語の中で、全世界の半分以上の人が死ぬ」「あなたのキャラが世界を救う」「あなたのキャラは皆に注目されるような偉業を達成したのに、そのことを世界の人は誰も知らない」といった設問が並びます。


物語の根幹の「ストーリー」のさらに根底にある「プロット」に関しては「あなたのキャラの自己紹介が、あなたの書いた物語の第一段落にある」「あなたの物語は、すべてあなたのキャラの一人称視点で書かれている」「あなたは、今書いた物語の後日談も書こうと思っている」「あなたの書いた物語には、主人公と呼べる人は一人しかいない」の4問。あてはまるものすべてのチェックが終わったら「採点」をクリック。


採点結果にページが移ります。表の上にあなたのメアリー・スー度が点数で表示されました。


表には「メアリー・スー」に陥る危険性を点数別に表示しています。「0~24点」の場合は「このくらいは問題ないでしょう。誰の小説でも多少はあるものです」とのこと。


「25~60点」は「このテストをやっていて、自分でイタさを感じたでしょう。そしてなぜそう感じたかもわかるでしょう。それを直して、もっと客観的にものを見る癖をつけましょう。素人ほど小説を一人称で書いてはいけません」との注意喚起。


「61~90点」だと「『なんでこのテストは私が書いた小説のことを知っているのだろう?』と思いませんでしたか?あなたの小説はそのくらいオリジナリティというものに欠けているのです。しかし、本当に問題なのはオリジナリティのなさではありません。」というように、「メアリー・スーである」というより「よくある設定ばかりでオリジナリティに欠ける」と批判されます。


「91~124点」のコメントでは「このテストに引っかからないように意識して書いてみましょう。それができるようになった時、あなたは過去に自分の小説を全世界に向けて公開したことを後悔するでしょう」と、「あなたが今までに公開してきた作品は、ちょっと恥ずかしいものですよ」と示唆してきます。


「125~150点」のみなぜか箇条書き。「あなたの小説を読む人に、精神科医の役を押しつけないようにしましょう」「類は友を呼びます。放っておくと悪化するばかりです」「現実はあなたが思っているほど敵意に満ちてはいません」と遠回しな悪口が並んでいます。


「151点以上」では「これだけすべての要素を取り込めるとは、かえって尊敬に値します。あなた、わざとやっているんでしょう?」と感嘆の一言。「Mary Sue テストで151点を取ってみよう」という試みの内容を見てみると、とても151点は取れるようなものではないことが実感できます。


狙って書いているのでもない限り高得点が出ることはないはずですが、設定の見直しを行う際には役立つことがあるかもしれません。

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