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自販機がロボ化する未来像・IoTやAIとの融合・イスラム圏をターゲットになど攻めまくりダイドードリンコ3代目社長に「一体何してるの?」ということで根掘り葉掘りインタビューしてみた


自分で組み立ててボタンを押すとミニ缶が出てくるリアルな自販機を無料で配布したり、スマホをかざすだけでポイントをゲットして楽天ポイントやLINEギフトコードと交換できるようにしたりなど、自販機を中心にさまざまな取り組みを行っているダイドードリンコ。2014年から3代目社長をつとめ、ロシアやイスラム圏へ進出するなど新たな改革を行う髙松富也氏とは一体どういう人物なのか?ということで、髙松氏に「社長の仕事ってどういうものなのか?」「どういう未来のビジョンを持っているのか?」など、根掘り葉掘り聞いてきました。

創刊 3分で分かるダイドードリンコ|企業情報|ダイドードリンコ
https://www.dydo.co.jp/corporate/3min/

ダイドードリンコの本社があるのは、大阪・中之島。川沿いの中之島セントラルタワーに入っています。


ビルの18階に向かい……


通されたのはこんな部屋。右奥にダイドードリンコの主力飲料がいっぱい並んでます。


写真の男性がダイドーグループホールディングス社長兼ダイドードリンコ社長、髙松富也氏、40歳です。広報の方々にそれとなく以前聞いたところでは「イケメン度がかなり高いです!」というような事前情報があったとおり、確かにスラッとさわやかな第一印象。しかし各メディアの記事などからは「かなりマジメっぽい」という印象を受け、親しみやすいというイメージはあまりありません。しかし、それはやはりこれまでのインタビューではビジネス系メディアが圧倒的に多く、結果、記者発表のような形式的な受け答えばかりになってしまっているのも一因では?ということで、これまでのインタビューとは違う切り口で今回は挑んでみることとなりました。


GIGAZINE(以下、G):
インターネット上にあるこれまでの髙松さんへのインタビューを読んでみると、どれもこれもがビジネス寄りの極みなので、まずは髙松さんの個人的なところから聞いていきたいと思います。一番最初に聞きたいのは、どういう経緯でダイドードリンコの社長になったのか?ということです。元々は大学卒業した後、三洋電機にいたということですが。

髙松富也氏(以下、髙松):
そうですね。三洋電機の人事部で3年働いてました。

G:
あのくらいの規模の会社の人事部が何をするのかを僕は見たことないのでよくわからないのですけど、人事部って何をやっているんですか?

髙松:
本社の人事部なので、細々とした業務管理というより、色んな制度を作ったりとか、それこそ就業規則から始まる社内のルールを作ったり、それらを見直したり。ただ、僕は労政関係をメインに担当していたので、労働組合との交渉などに関わっていました。まあでも、重大な交渉はトップ同士、人事部長と組合の委員長がやるので、僕は資料の下準備をしたりだとか。最初の3年だけですから、直接的に表に立って、というのはあんまりなかったのですけど。

G:
就職する際に、三洋電機以外にも候補があったと思うんですけど、他に希望する会社はありましたか?

髙松:
僕は大学を留年したんですけど……。

G:
そうなんですね。

髙松:
元々、4年生を終えて卒業する時には、別の会社に内定が決まっていたんですよ。

G:
そこを蹴ったんですか?

髙松:
蹴ったというか、卒業単位が取れなかったので、というのもあるし、「なんかちょっと違うな」っていうのもあったので、留年してですね……。

G:
こんなことを聞くのもあれなんですけれども、卒業単位が足りない原因って何だったんですか?

髙松:
真面目にやってなかった(笑)


G:
(笑)

髙松:
大学に入ってから、ちょっとなめてましたね。京都大学に通っていたんですけど、「普通にやってたら2年生で卒業単位が全部揃うよ」みたいな前触れがあったので、「そんなに一生懸命やらなくても大丈夫だろう」と野球部の部活動ばっかりやってたんです。授業にもあまり行かなくて、テストの前に授業内容をコピーさせてもらってたんですけど、油断し過ぎたこともあり、留年しました。

就職活動もあんまり考えてなかったので、周囲からの勧めもあって一度は広告業界に就職を決めました。でも、学生からすると、広告業界って雲を掴むような感じじゃないですか。何を売っているのかもよくわからないし。その後、留年してよく考えて、もの作りというか、「製品」がちゃんと目に見える形であるところがいいなと思い直して、いろいろ面接を受けました。でも就職活動も、あまりちゃんとやっていなかったです(笑)

G:
(笑)

髙松:
三洋電機さんだけ内定をいただけました。

G:
なるほど、そういう感じだったんですね。大学の頃は野球部だったとのことですが、野球はそれ以前からやっていたんですか?

髙松:
小学校からずっとやってましたね。

G:
小学校から。筋金入りですね。

髙松:
そうですね。それしかやることなかったというか。

G:
どういうことですか?

髙松:
奈良の田舎の育ちなので、当時は遊びと言えば野球をやるかサッカーをやるかぐらいだったんです。当時はまだ野球がメジャーだったので、小学2年生くらいの時に友だちに誘われて少年野球チームに入ったのが始まりです。そこからずっと野球一筋で、大学までやり続けましたね。

G:
野球の腕前はいい方なんですか?

髙松:
そんなにめちゃくちゃ下手、というわけじゃないですけど、何というか、野球の一流校ではないので。どちらかというと弱小校。中高もそうでしたので、チームの中では頑張っていましたけど、他の強豪校から比べると見劣りするレベルの中でやってきたという感じですね。

ダイドードリンコのオフィスには、ダイドードリンコが協賛するダイドードリンコ杯少年野球大会にゲストとして訪れた八木裕さん(元阪神タイガース)のサイン入りバット&グローブが飾られていました。


G:
話を聞いていると、わりとのびのび育ってきた感じなんですかね。

髙松:
そうですね。好きなことをやっていました。

G:
ダイドーのことをあまりガミガミ言われるようなこともなく。子どものころは会社が身近な存在でしたか?

髙松:
身近に感じてはいましたけど、「会社を継げ!」とかっていうのは、そんなに言われませんでした。「勉強だけはやれ」とは死ぬほど言われましたね。

G:
なるほど。

話は変わりますが、季刊ビジネス媒体の「カンパサール」2016年10月号のインタビューを読むと、「今年40歳なんですけれども、急激に体質が変わってきたこともあり、健康管理を強く意識しています。そこで最近はランニングを始めました。去年はハーフマラソンの大会に出場し、今年は10月にフルマラソンを走ります。 さらに、ただ街を走るだけでは面白くないので、トレイルランニングといって山を走っています。今年は8月に仲間たちと富士山に行きました」と書いてあって、すさまじくスポーツをやりまくってるイメージなんですけども、他にも何かやっているスポーツなどはありますか?

髙松:
他はゴルフやるくらいですね。

G:
ゴルフですか。インタビューにあった「40歳で急激に体質が変わってきた」ということを意識する切っ掛けはあったんですか?

髙松:
体重が減りにくくなってきたっていうのと、病気をしやすくなったというか、風邪を引きやすくなったとか、そういうのがあって、これはいけないと。宴席と言いますか、夜の飲み会も多くて、かなり不摂生だったので「変えないといけないな」という風に思いまして。

G:
それでも、ランニングぐらいまでなら理解の範疇なんですけど、トレイルランニングって凄まじいですよね。なぜここまでエスカレートしてしまったんです?

by Pierre Thomas

髙松:
それは多分、性格が理由だと思います。さっき言ったように、野球をやり始めたら野球ばっかりをずっとやっていますし、何かをやり始めると深みにはまっていくというか。最初は2~3キロ走るだけでもゼェゼェ言ってて、「こんなん続かんやろな」と思っていたんですけど。とりあえず大会エントリーするなどして目標を決めて、練習しないといけない状況に自分を追い込んでいったら徐々に走れるようになっていきますし、そうすると達成感みたいなのが出るじゃないですか。次はこれ、次はこれ、ってエスカレートしていくんですよね。

G:
ちなみに、このランニングは今も続けているんですか?

髙松:
続いています。

G:
どれくらいの頻度で走ってるんですか?

髙松:
本当は週2回くらい走りたいんですけど、週1回か2回程度ですね。

G:
あと、「仲間たちと富士山に行きました」っていうのも。どうして富士山に行ったんですか?

髙松:
夏場に町中を走ると暑いので、涼しいところで鍛えた方がいいんじゃないか?となり、じゃあ登山が良いよという話になって、どこに行こうか、とりあえず富士山が日本一高いからまずそこ行こう!という。今年は日本で二番目に高い南アルプスの北岳に登る計画を立てています(笑)

G:
一度始めると、とことん突っ切るんですね。あと、同じくカンパサールのインタビューのプロフィールに「経営者としてのタイプを自己分析すると『ワンマン型ではなく社内プロセスを重視し、組織として決断する。優しい方だと思います』」とありましたが、これは何と比較してるんでしょうか?どういうのを「優しい」とする自己イメージなんですか?

髙松:
社長さんのイメージとして、よくガミガミ言ったりだとか、カミナリ落としたりだとか、怒りに任せて怒鳴ったりするような人が多いという風に言われるんですけど、決してそういうことはしません。特に会議の場とか、人がいる場では、いくら怒っていてもそういうことは言わない。

G:
それで優しい方ということなんですね。

髙松:
あってますよね、そうですよね?(笑)

周囲を伺う髙松社長。インタビュー中、左右に広報担当者が2名同席している、という状況です。


G:
「違います」ってなったら変な話になりますので(笑)

言わんとする意味はわかります。僕はlivedoorにいたんですが、堀江社長(=堀江貴文)は確かにそれでいくとめちゃくちゃ厳しい方で、六本木ヒルズの端から端まで響き渡るぐらいの大声で怒鳴る人だったので。社内会議がほぼ毎週同じ特定の曜日にあったんですけど、その曜日の朝の10時半から12時までの間は、怒鳴り声がずっと聞こえるみたいな感じでした。「会議の部長になりたくないな」「もし部長になったら毎週あれを聞かないといけない、死んじゃう」とか言ってたんですけど、要するにそういうのではないって話ですよね。

髙松:
普段の生活で会う人には「会社に行くと違うんですよね、怒鳴ったりされてるんですよね」ってよく言われるんですけど、決してそんなことしません、と、そういう意味ですね。

G:
確かに社長さんのイメージって、今言ったようにちょっと厳しいような、頭ごなしに言うような人が多いなという感じがありますよね。

それでいくと、一般の人からしてみると、「社長って何を仕事にしているのだろう?」ってわかりにくいじゃないですか。ダイドードリンコさんの売上は凄まじいですけれども、こういう大きな会社の社長業っていうのは、要するに何をやっているものなのですか?

髙松:
それは難しい質問ですね。やらないといけないことは多岐に渡るんですけど、毎日同じことをやってるわけではなくて、その時々で優先順位を付けて……。

G:
たとえば直近だったら?

髙松:
人材育成。特に新入社員とか、まだ入社して数年の若い、これから伸びしろがある人たちの育成につながることに、できるだけ時間を割いていきたいと考えていて、最近、少し力を入れてるというか。

G:
具体的にはどのような事ですか?

髙松:
研修会みたいなものをやって話をしたりだとか。若手社員だけの勉強会に参加してアドバイスをしたり、たまにお話をしたりなんかします。

G:
普段、仕事の予定はどうやって管理しているのですか?

髙松:
基本的には自分で管理していまして、まず最初に年間スケジュールで決まっている会議が予定に入ってきます。あと、社外で行われる業界の会合だとか、得意先の懇親会や説明会は大体すぐに決まるので、予定に入れて。それに合わせて出張をスケジューリングしていって、残りの空いた時間、本社にいる間に何をするかみたいなのを、最後に決めていきます。

G:
そのようなスケジュールは社長が自分で全部埋めていくような感じですか?

髙松:
自分で埋めていきますね。システムというか、パソコンの予定表に入力するのは秘書の担当の人がしてくれます。

G:
手帳じゃなくて、パソコンやスマートフォンとなどのデバイスで普段はスケジュール管理しているということですか。

髙松:
一応、手帳は使っています。

G:
どんなのですか?見せてもらえれば嬉しいです。

髙松:
これです。この会社の普通の手帳なんですけど。


G:
この手帳はどういう基準で選んでるんですか?

髙松:
これは会社から支給されるものなんです。社員全員に配布してるものなので、いたってスタンダードでシンプルです。あまりこう、複雑なものを複雑に使いこなせるわけではないので。

G:
文房具も一緒にくっついていますけれども、それも会社の支給品ですか?

髙松:
これはそうですね。新しく追加で予定が入ってきたり、変更になったりということもあるので、できるだけシャーペンで書くようにして、書いたり消したりしています。

G:
予定を管理するにあたって「これが大変だった」みたいなのってありますか?今のお話を聞くと、予定がコロコロ変わるようですが……。

髙松:
そんな頻繁にコロコロ変わるわけじゃないのですけど、ダブルブッキングというか「元々これが入ってるんだけど、後からこういう予定を入れてほしいって言われています。どうしますか」ってなって「どっちを選ぼうかな」みたいなことがあったりするので。先に決まってたけどどうしても変えないといけない予定は消しゴムで消して、新しい予定を書いたりとか、「やっぱり予定が入ってるから駄目です」って断ったりだとか、そういうことが多いですね。

G:
なるほど。ちなみに手帳にDyDoって書いてましたけれども、社長の方から「もうちょっと便利な手帳にせよ」とかは言ったことはないんですか。

髙松:
僕が言ったかどうかは覚えてないんですけど、4~5年前まではもう一回り小さかったんですよ。もう一回り細かい字で書いてたんですけど、「ちょっとだけ大きくして」って言ったかもしれません。

G:
なるほど。じゃあ、今のダイドードリンコの手帳はちょうど社長が使いやすいサイズなんですね。文房具メーカーとかだったらありますけれども、会社のロゴ入り手帳を社長が自分で使っているっていうのも珍しいですね。スマートフォンとなどあまり使わない方なんですか。

髙松:
今は併用してますね。手帳は自分で書き込んで、社内の人たちと共有できるシステム上のスケジュール帳は秘書の方に入力をしてもらって、共有してる社員がいつでもどこでも見えるようにしています。

G:
iPhoneなんですね。

髙松:
これも会社の携帯です(笑)


G:
さっきから見ていると、社長というよりは模範的な社員みたいな感じですね(笑)

髙松:
あんまりわがままを言わない……。

G:
それは、ある程度「みんなの範となるように」と意識しているのですか?

髙松:
ある程度、意識はしています。某企業さんだと某役員さんだけが特別にiPadを持っているみたいな、「役員だけiPad持ってるのズルい」みたいな話を聞いたりするんですけど(笑)そういうのはよくないかなって。僕が便利で使った方がいいって思うものだったら、それはもう、会社全体で導入した方がいいものなんだと思います。

G:
自分が最初から会社を作ったようなオーナー社長だったらワンマンな人も多いですけれども、髙松社長は三洋電機で元々サラリーマンをやっていたわけなので、そのあたりは一回サラリーマンをやった経験から「不平等なのは駄目だ」ということを感じるものなんでしょうか?

髙松:
それはあるかもしれないですね。確かに自分で作った会社だったら……。

G:
やりたい放題(笑)

髙松:
やりたい放題、怒鳴りたい放題……冗談ですよ(笑)

G:
経済界のインタビューで「創業家3代目の社長となりますが、経営を引き継ぐということは昔から意識されていたのですか」という質問に対して、「最初に入社したのは三洋電機でした。いずれは会社を継ぐと意識しておりましたので、まずは異業種を経験しておきたかったのです」と書いてあります。3年働いて、「三洋電機にいて良かったな」「これは今のダイドーにも役に立ってるな」というものはありますか? 三洋電機から、これはいいものを得た、みたいな。

髙松:
良いものかどうかは分からないのですけど……。三洋電機には2001年から3年間いたんですけど、その時期は少しずつ業績が怪しくなり始めてきた時でした。事業リストラを本格的にやり始めた時期でしたので、社員の転籍とか、再就職とかをどうするんだとか、割増退職金はいくら出すんだみたいな、組合との交渉を目の前で経験したというのは非常に貴重だったと思います。学んだことって言ったらあれなんですけど。

あと、その頃の三洋電機の人事部は、「会社をもっといい風に変えていかないといけない」ということで、中途採用を増やしていた時期だったんです。なので、色んな業界から色んな人たちが入ってきて、多くの交流がありました。一部の人たちとは未だに繋がりがあります。そういうネットワークに触れたり、色んな人たちとコミュニケーションができたのも、経験としては貴重だったかなと思いますね。

G:
また話は変わるのですけど、ダイドードリンコさんのホームページを見ると、「他社のように香料を使わず、本物の豆だけから抽出したコーヒーであること」にこだわっていますよね。


香料を使わないっていうのは、髙松社長が就任される前から続いています。現社長としては、香料を使わないというこだわりを、どういうようなことだと理解していますか?

髙松:
ダイドードリンコで缶コーヒーを最初に開発した時に、「本物志向」というのがあって、それが脈々と受け継がれてるんだなと思います。ただ、当時は他のメーカーでも香料無添加が普通だったんですよね。そこから、どんどん色んなところが参入してきて、その過程で味にインパクトを出したり、コストダウンのために使うコーヒー豆を少し抑えてその分を香料で補うとか、ある種いろんな技術革新が起こって、業界的に「香料を使うのが当たり前」みたいになってきたんだと思うんですよ。うちはその中でも「原点を守ろう」という意志がすごく強かったんですよ。

ダイドーブレンドうまみブレンド さらなる挑戦篇 - YouTube


G:
香料を使わないという点以外に、実際に社長になってから、「よくよく考えたらダイドードリンコって他の似たような飲料業界のメーカーとこのあたりが違うよね」と感じたところはありますか。差別化というか。

髙松:
違うのはやっぱり自販機でしょうね。自販機の売上に関しては、他とは比率が逆転するくらい違いますので、そこはひとつあると思います。


G:
髙松社長が就任された頃って、感覚的には「自販機に未来はあるのかないのか?」「どちらかと言うとないんじゃないか」「やばいんじゃないか」というような時期だったと記憶しています。社長になった頃は、そこのあたりを立て直そうという気分でやっていたのか、それとも全く新しい感じでやっていこうと思っていたのか、どういうように考えたんですか?

髙松:
社長になった時ですか?

G:
ええ、2014年の4月頃ですね。

髙松:
そうですね。なんと言っても自販機を主体とした飲料の事業がほぼ主たる事業だったので、先程仰ったように「これをやめてしまって全く新しいことやろう!」とはなかなか発想できなかったというか。考えようによってはそういうこともあったかもしれないですけど、「なんとかしたい」「これからも長くこの事業続けていきたい」「そのためにどうするんだ」みたいなのが原点ですね。

G:
髙松社長が副社長だった頃、2014年4月5日の週刊ダイヤモンドに「基本的には飲料の同業他社と組まないという戦略はこれからも変わりません」と答えています。しかし、それから後の2016年1月には「(PDFファイル)キリンビバレッジ株式会社の自動販売機における相互製品販売の業務提携」というのをやっています。この転換は、2年の間に何かが起きたのが理由だと思うんですけれども、なぜ考えを変えるに至ったんですか?

髙松:
今キリンさんとはWin-Winの取り組みができているんですけど、「他社とは組まない」って言っていた当時には、多分、こんなことは実現できなかったと思うんです。キリンさんの「午後の紅茶」をうちの自販機では売るけど、うちのコーヒーはキリンさんの自販機にはいらないって言われたと思うんですよ。まだそこまで我々のブランドが育っていなかったというか、力を持ってなかったというか。長い間、ブランド投資や商品開発に力を入れてきて「ようやくお互いに製品交換してそれぞれ売上を伸ばすのに寄与できるね」というような、対等な関係にまでなったので、踏み切れたというのはあると思います。

当時「提携しない」って言っていたのは、なんと言いますか、「相手に主導権を取られるような組み方は絶対やりたくない」っていうことなんです。少なくとも対等であり、お互いにWin-Winな関係で組めるようなことであればやっていこうということで、今回のキリンさんとの取り組みがスタートしました。


G:
なるほど。そういう感じなんですね。

次に、「DyDo」という社名についてです。ダイドードリンコの設立母体である大同薬品工業に由来していて、「ダイナミック(Dynamic)」にチャレンジを「行う(Do)」という企業姿勢の意味を込め、「DyDo」とした、と毎日新聞に書いてあったんですけれども、いまいちよくわからないのが、この設立母体の大同薬品工業ってあるじゃないですか。

髙松:
あります。

大同薬品工業株式会社
http://www.daido-yakuhin.co.jp/


戦後すぐに始めた医薬品配置販売業の様子を撮影した貴重な写真。


G:
大同薬品工業のウェブページを見ると、OEMだと書かれていましたけど、飲料を製造しているんですよね。

髙松:
そうですね。ドリンク剤を作っています。自社ブランドではなくて、他社さんの製品をOEMで受託製造しているんです。100社以上から受託しています。


いろんな企業さんから受託をして作っているんですけど、我々が製造して我々が消費者に販売するんじゃなくて、我々は製造したものを薬品メーカーさんに販売して、薬品メーカーさんが消費者に販売するという、そういう役割を担っています。

G:
そこから、後にこういう飲料の方に移動してきたっていう感じなんですよね。

髙松:
そうですそうです。

G:
そこまではまだ理解の範疇なんですけども、途中でたらみを買収してるじゃないですか。なぜたらみなのか、ということがよくわからなかったんですけど、社内でたらみってどういう位置づけなんですか?

商品情報|フルーツゼリーのたらみ
https://www.tarami.co.jp/jellys/


髙松:
ちょうど大同薬品の事業と飲料事業とを合わせても、成長の伸びがゆるくなってきていた時期で、「何か新しいことをやりたい」と考えていました。シナジーが見込めるような事業を買収できないかと当時いくつか調べていた中で、飲料と食品で何かシナジーも見込めるだろうということで、買収をしたということなんです。実際に、原材料の調達だとか、資材の共同調達だとか、そういった部分では効果が出て利益の改善にはつながったのですが、消費者の目に見えるところでのコラボレーションがあまりできなかったので「コラボ商品は発売しないんですか?」みたいなことは、たまに聞かれますね。

G:
どちらかと言ったらバックグラウンド的な部分でのシナジーが大きかったんですね。

髙松:
そうですね。まあでも、もう少しお客様の目に見えるところでも出せていければいいなということで、継続的には検討しています。

G:
ダイドードリンコはマレーシアやロシアなど海外にも積極的に展開しています。選択肢がたくさんある中で、今のような展開の形になったのはどのような経緯なのでしょうか?

左から、マレーシアで販売されている甘いハーブティー「COOLTEA」、トルコで販売されている炭酸飲料「CAMLICA」、同じくトルコで販売されているミネラルウォーターとコーラ、果汁飲料ブランドの「İçim」となっています。


髙松:
中期経営計画を立てる時にある程度ターゲットエリアを絞り込んだんですけど、中国とロシアっていうのは、過去の経緯で事業をずっとやり続けていたので、そこを起点に、中国中心なら香港とか、台湾だとか、中華圏に事業を広げていこうっていうのがひとつ。あとロシアもモスクワに自販機を展開するという計画をやりかけていたので、まずモスクワに集中して自販機が海外に通用するという成功モデルを作って、それから東欧や中央アジアなど、周辺の似たような地域に展開していきたいと考えたのがふたつ目です。


そして、もう1個、そうは言っても別の新しい地域にも出ていきたいという思いがありました。ただ先進国に今から出ていっても、既存の競合プレイヤーを考えてもなかなか参入が難しいだろうし、「じゃあ新興国は?」と言っても東南アジアには現地のプレイヤーもいますし、日本からも世界からも競合が出てきています。そんな中で、何か特徴的なポジショニングを作っていかないと意味がないだろうということで、イスラム圏をターゲットにすることになりました。

G:
イスラム圏をターゲットにしようというのは、社長のアイデアなんですか?それとも誰か社員が言い始めたんですか?

髙松:
計画を作っているみんなのアイデアの中から出てきたもので、僕がやれって言ったわけじゃないですね。

G:
社長自身は、イスラム圏のアイデアが出てきた時は……

髙松:
最初は「ん?」と思いました。あのあたりには、いろんな国があるんですけども、結構特徴的なマーケットなんです。ひとつは宗教上の理由で、基本的にはお酒を飲まない。お酒が飲めないというか飲まない。そして、食品にしても飲料にしても宗教上使ってはいけない原材料とか製造の仕方があって、ハラール認証をクリアしないと、市場の中で製品として販売していけないというのがあります。逆に言うとそれをクリアすると、そのひと括りをマーケットとして捉えることができます。世界の3分の1はイスラム教徒だと考えるとかなり巨大なマーケットであって、かつ新興国が多く、まだ伸びしろがあるので、新たに参入していくには一番チャレンジングではありますけど、可能性は高いんじゃないかと考えました。その結果、まずマレーシア、次にトルコ、ということで拠点ができまして、これを広げていきたいなと考えています。


G:
「ハラールの認証を取る」って簡単じゃないですよね。どうしてその部分について「いける」って決断できたんですか?

髙松:
当時は全くそういうノウハウがなかったので、まずそれを獲得するためにマレーシアを選んだんです。マレーシアにはそういう厳格な認証基準があり、そこでノウハウを取得すれば、ある程度どこのイスラム教の国でも通用するというようなことがあったので、まずマレーシアに出ようと。で、ちょうど向こうの食品会社の飲料部門がパートナーを探してるという話だったので、そこに参画をしたんです。


G:
なるほど。それでマレーシアなんですね。「なぜ突然マレーシアで始まってるんだろう。近いからってわけではないよね」って思ってました。実際にイスラム圏に進出してみて、手応えはどんな感じなんですか?

髙松:
まだ人口が増えている途中の国が多く、市場もどんどん大きくなっていくので、「こうやっていけばもっとビジネス大きくしていけるチャンスがあるな」という実感を得たというのはひとつあります。一方で、当初は「マレーシアでノウハウさえ獲得できれば一気にイスラムの諸国、インドネシアとかにも出ていける」という風に思っていたんですけど、そう一筋縄にはいかないな、ということがわかりました(笑)

やはり国ごとに趣向が違ったりするので、そこはひとつひとつ丁寧にやっていかないと、ということです。もちろんマレーシアを起点として東南アジアに進出をしていこうと計画を立てたり、トルコを起点に中東エリアへ、というようなこともやっていますけど。それはそれで、ハードルはきっちりあるので(笑)

ただ、そうは言ってもビジネスの基盤ができたので、そこから得られる情報をしっかり分析して、次の展開に活かさないとな、ということが、ここ1年くらい、やってみて感じたところですね。

G:
あと、日経ビジネスの2016年7月4日号に「企業研究 ダイドードリンコ」っていうページがあって、「実現可能なことから着手しているのが今の段階だが、30年後を見据えてゼロから自由に考えてほしいと社員には伝えている」とインタビューに答えられていたんですけど、10年とか20年じゃなく30年後になっているのはなぜですか?

髙松:
ひとつは、あと30年くらいは、もしかしたら僕が現役でいるかなということがあったので。

G:
なるほど。

髙松:
30年たつと70歳になるんですけど、「もしかしたらまだ社長やってるかもしれないな」ということで、その時のことをみんなも考えようよ、という。今50歳とかの社員は、自分のことだったら10年とか15年くらい先までしか考えなくてもいいわけですが、30代の社員だったらあと30年先の自販機ビジネスがどうなっていくか、自分のこととして考えて欲しいと。

G:
それで30年なんですね。

髙松:
あとはやっぱり、30年とは言わず、もっとずっと長く続かせていきたいと思うので。できるだけ長期的な視点を持ってもらいたいなという思いがあるかもしれないですね。今もそうですけど。

G:
あと日経コンピューターの2017年2月16日号の中で「利便性や買う楽しさを提供し続けていくため、IoT(インターネット・オブ・シングス)や人工知能(AI)といった技術革新を取り込んでいきます」と語っていて、実際に調べてみるとIoTに関してはスマホ連携する「Smile STAND(スマイルスタンド)」で楽天スーパーポイントやLINEギフトコードがもらえるような企画を展開したりとか、いろいろやっています。

Smile STAND(スマイルスタンド)|ダイドードリンコ
https://www.dydo.co.jp/smilestand/


G:
逆にこの、サラッと出てきた「人工知能(AI)との融合」が、いまいちピンとこないんですけれども、これはどういうイメージなんですか?人工知能的なものを今のダイドードリンコの中に入れていこう、というアイデアがこれまでにあったのでしょうか?

髙松:
ひとつ、実現可能性という意味で考えられるのは、販売データです。うちは全国に自販機が28万台ありますし、1年間に15億本くらい商品を販売してるんですけど、15億件の年間販売データを人工知能が分析して、自販機ごと、お客様ごとに最適な品揃えを自動的に計算したりだとか、そういったことは近いうちに実現できる気がします。今もそれに近いことを人力ではやってるんですけど、それをもっと自動化していけばスピードも上がるし、扱うデータの量も上がるし、そこに可能性があると思います。あともう1個は、30年後かどうかわかんないですけど、ひとつの自販機の未来像として、自販機がただ待っているんじゃなくてロボットみたいにお客様のところに行って商品を販売するということを考えてるんですけど(笑)


G:
確か、未来自販機プロジェクトで検討していたんですよね。

髙松:
そういうことにAIが活用できるかなとか。これはもう完全にアイデアの段階ですけど。

G:
この未来自販機プロジェクトは、今も継続中なんですか?

髙松:
継続してますね。

G:
今はさらにぶっ飛んでるんですかね?それとも逆にもっと現実性が増してるんでしょうか?

髙松:
最近は将来の話をする比率が下がってきたので、「実現可能なものから具体的にやっていこう」みたいなことになってしまっているんですけど。僕はそういう長期のビジョンを日々更新していかないといけないなと思っています。スマートフォンでポイントをためることができる自販機も、今年から台数も増やしていくんですけど、ビーコンが付いてるんですね。そうすると、いろんな情報を配信をしたりだとか、アプリを入れてない人にもプッシュ通知をしたりとかが現実的に可能になるので、そういうものを使ってどんなことをやっていくかを、いろいろ考えたりはしています。

G:
なるほど。

インタビューで「自販機事業を担当する部門に、3年ほど前からデータ分析の専門チームを設けました。販売実績データを中心に、28万台の自販機をいくつかのクラスター(性質の似たデータの集まり)に分類して、最適な品ぞろえの仮説・検証を続けています。シーズンごとに仮説を立てて効果検証を繰り返しているので、少しずつ成果が出てきたのではないかと感じています」と答えておられて、現場の経験や勘に基づく品揃え、みたいな話も書いてあったんですけれども、実際にデータ分析をやってみると、そういう今までの経験や勘と違ってくるものなのでしょうか?それとも合ってるケースがほとんどですか?

髙松:
両方の結果が出てきてまして、今そこをどうバランスを取るかってところですね。

G:
一致してるのは多分問題ないと思うんですけれども、一致してないケースがあった場合は、どういう風に対処するのですか?

髙松:
まだいろいろ試行錯誤してるんですけど、あまり細かく分け過ぎてもいけないんで、今7つくらいのクラスターに分けてるんですよ。うちは一人の現場の社員が自販機を百何十台も担当してるんですけど、基本的にはそれぞれの自販機に「この自販機はクラスタ1番です」とか、「3番です」とか、「5番です」というシールを付けていまして、「1番だったらこの品揃えがデータ上は最適ですよ」みたいな商品のセット表みたいなのを配って、それに合わせてやるようにしています。でも、「いやいや違うやろ、ここでこんなもん売れへんやろ!」みたいに言う社員や、「こんなもん見んでもこの通りにやってるわ!」とか、いろんな反応がありますね。


G:
そうなってくるんですね(笑)

髙松:
「でもまあ、そう言わんとこれやってみてや」と、実際にやってもらって「あっ、ほんまや。これ予想してなかったけど売れたわ」みたいのがちょこちょこ出てきたり。そうやって現場とプロジェクトチームの間の距離が徐々に近づきつつあるような感じです。あんまりこっちが押し付けてもいけないですし、現場に任せすぎてもコントロールできなくなってくるので、どっちも。現場の感覚がすごく強いというのは、我々の強みであることには間違いないんですけど、それを活かしながらよりサポートするような感じに機能していくと一番いいかなと思って、試行錯誤してるところですね。

G:
Smile STANDや今のお話でもそうですが、ダイドードリンコさんって段々IT系企業みたいになってますよね。最先端を突っ走っているというか。

髙松:
そうですね。できるだけそういうものは活用したほうが良いという考えはありますし、世の中的にも、そういったものを活用した変化ってすごいので、同じような波に乗らない手はない。上手く活用していきたいなという思いがあります。

G:
さっきの話に戻るんですけど、今言ったような「次は何をしようかな」ということを考えるのも社長業のうちのひとつですよね。そういう情報やアイデアは社内で会議で上がってくると思うんですけれど、これから先のことを考えると、社長としては社員にどういうようなアイデアを出してほしい、とかはありますか?

髙松:
ある程度しょうがないのかもしれないですけど、従来のダイドーには「言われたことを言われた通りに言われた範囲内で」みたいな文化というか……。

G:
どちらかというとオペレーション重視ですか?

髙松:
はい。そうだったんですけど、今は、枠を飛び出してというか、「従来の発想にとらわれないことにも積極的にチャレンジをしていこう」みたいな仕事をやってもらいたいな、という期待はしています。

特に最近入ってきた若手社員に対して言ってるのは、平たく言えば「もっとやんちゃでもいい」ということです。うちの傾向として真面目な社員が多いので、やりたい放題って言ったらあれなんですけど、もっと思い切って色んなことに挑戦をするようになってもらいたいと言っています。あと、できるだけ社内に閉じこもってるんじゃなくて、先程から言ってるように世の中の変化がすごく大きいので、もっと社外に目を向けてほしいと。社内の同期とか同僚だけじゃなくて、他の会社や業界の人たちとコミュニケーションやネットワークを持っていた方がいろんな発想ができるので、そういったことを意識してほしいとはよく言っていますね。最近の子はいろんなツールを持っているので、実際には既に繋がっているのかもしれないですけど。


G:
なるほど。今のお話を聞いていると、DyDoの社名の由来そのものですね。ダイナミック(Dynamic)にチャレンジを行う(Do)みたいな。


髙松:
そうですね。

G:
(笑)社名そのもののような社員を求めてるように聞こえました。

髙松:
なかなか、社名通りではなく、「こぢんまりしてきてたな」というのがあったので、3代目社長になった前後くらいに、もう一回そこにフォーカスをして、企業理念としても「チャレンジをする」ということを全面的にうたっています。「みんなで変わっていこう」という取り組みを、やっているところです。

G:
業界的な立ち位置もあると思うんですけど、未来志向なんですね。なんだか凄まじいくらいに攻めてますね。

髙松:
まだ足りないと思います。

G:
まだ足りない!?要するに、社長としてはまだ足りないので「もっと攻めたい」と感じられているんですか?

髙松:
僕がそれくらいの気持ちを持ってないと、多分、周りはそれ以上にはなれないと思いますから。

G:
なるほど!本日はありがとうございました!

というわけで、ほかのインタビューでは断片的にしか分からなかった社長像について、できるだけ実像に近くなるようにああでもないこうでもないとさまざまな切り口から攻めてみた結果、「めっちゃくちゃフレンドリーになんでも話してくれるじゃん!」ということで、想像以上に話が盛り上がりました。インタビュー記事中に「(笑)」とある箇所も場合によっては「(爆笑)」と書く方がいいのではないか?と思ったほどです。

実際のところ、インタビュー開始前には別の会議室での社長同席の会議が白熱して異様に盛り上がっていたとのことで、結果的にこのインタビューの開始時刻が遅れてしまったほど。なので、そういう「熱意」はインタビューに応じている最中もあちこちの部分で感じられました。特に「IoTや人工知能」のところでの食いつきがすさまじく前のめりな印象だったので、「ああ、やはり普通の飲料メーカーと違い、自販機というモノを扱っているだけのことはあって、かなり技術ドリブンなところがあるのだなぁ」と妙に納得してしまいました。

社風というのは結局、社長風のことだ」というのを以前に誰かから聞いたことがあるのですが、まさにそのとおりで、現在のダイドードリンコの勢いはこういう考えと性格のトップがいるからなのだな、というのが今回のインタビューで伝われば幸いです。

創刊 3分で分かるダイドードリンコ|企業情報|ダイドードリンコ
https://www.dydo.co.jp/corporate/3min/

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in インタビュー,   動画,   広告, Posted by darkhorse_log

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