サイエンス

腸内バクテリアの都合によって私たちの「食べるもの」がどう左右されているかが報告される

by Brian Dewey

不安やうつは腸の状態と関係あり、腸内バクテリアが変われば行動も変わる」と言われるなど、消化器官は第2の脳と呼ばれて人の感情や考えをコントロールしていることが知られています。また、消化器官内のバクテリアは宿主である人の脳に「これを食べてくれ!」という信号も送っているのですが、新たな研究で、バクテリアがどのような情報を脳に送っているのかの手がかりが示されました。

Commensal bacteria and essential amino acids control food choice behavior and reproduction
http://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.2000862

How Gut Bacteria Tell Their Hosts What to Eat - Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/how-gut-bacteria-tell-their-hosts-what-to-eat/

これまでの研究によって、私たちが何を食べるかによって消化器官中のバクテリアの状態が変化することがわかっており、どのバクテリアが多いか少ないかによって、活性化される遺伝子や吸収される栄養素が変わってくることも判明しています。

このとき、食べ物とバクテリアの関係は一方通行ではなく、「食べ物にバクテリアが影響される」のに加えて、「バクテリアの状態によって食べたいものが変わる」のですが、これまで、実際のところどのようにしてバクテリアが私たちの食べるものに影響を与えているのかはわかっていませんでした。

by Thomas Kelley

しかし、バイオメディカル分野の研究を行うChampalimaud Centre for the UnknownのCarlos Ribeiro氏が率いる研究チームは新たに、特定のタイプの腸内細菌叢が宿主に足りない栄養素を検知し、どのくらいの量の栄養素を摂取すべきかを測定するということを発見。研究チームはキイロショウジョウバエの食習慣を研究することで、この仕組みを解明しました。

研究で、まずチームはグループ1のハエに必須アミノ酸を全て含んだショ糖の溶液を与え、グループ2のハエにはいくつかの必須アミノ酸を取り除いた餌を与えました。必須アミノ酸はタンパク質の合成に必要な物質なのですが、体内で作り出すことができないので、体外から取り入れるしかないものです。そして3つ目のグループのハエには、どの必須アミノ酸がバクテリアによって検知されているのかを明らかにすべく、1つずつ必須アミノ酸を取り除いた餌を与えました。

それぞれの食事を与えられたハエは、72時間後、プロテインを豊富に含んだイーストと通常のショ糖溶液が食事として与えられました。すると、必須アミノ酸を欠いた食事を行った2つのグループのハエは、足りない栄養素を補うべくイーストを強く求めたとのこと。しかし、その後、研究者らがラクトバチルス・プランタルム、ラブレ菌、アセトバクター・ポモラム、コメンサリバクター・インテスティニ、エンテロコッカス・フェカリスという5種類のバクテリアをそれらのハエの消化器官内で増加させると、必須アミノ酸を制限した食事を行っても、ハエはイーストを求めないようになったそうです。

by Paladin27

この時、特定のバクテリアを取り除いたハエの必須アミノ酸レベルは低いままで、ハエやバクテリアがが自分で足りない必須アミノ酸を作り出したということはありません。にも関わらず、「必須アミノ酸がなくても問題ない」と消化器官のバクテリアが宿主の脳に伝えているかのような働きが生まれていたわけです。

5種類のバクテリアのうち影響力が大きいのはラブレ菌とアセトバクターで、この2つのバクテリアの量を増やされたハエはタンパク質への渇望が抑えられ、糖をより強く求めたそうです。通常であればアミノ酸の欠乏は細胞の成長や再生が疎外し、ゆえに生殖能力も落ちるのですが、このバクテリアを増やされたハエは、機能を回復させたとのこと。


続いて、研究チームは、アミノ酸の一種であるものの必須アミノ酸ではないチロシンを処理するのに必要な酵素をハエの体内から取り除きました。これによって、ハエは必須アミノ酸のようにチロシンを食べ物から取り入れる必要があるのですが、体内のラブレ菌とアセトバクターを増やしても、ハエが食べ物からチロシンを求めることを抑制することはできませんでした。つまり、ハエの腸内細菌叢は必須アミノ酸の摂取だけを滴定できるようになっていたわけです。

今回の研究によって、宿主である生物と体内のバクテリアの間に独特の進化があることが示されると共に、腸内のバクテリアが宿主の脳に情報を送っていることを強く示す事象が確認されました。バクテリアは「宿主が何を食べているか」によって食事が左右され、また宿主が社会的であった方が繁殖範囲を広げていけるので、「必須アミノ酸しか検知しない」といったシステムには、バクテリアが進化するにあたっての理由が何かあるのかもしれない、とRibeiro氏は見てます。

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in サイエンス, Posted by logq_fa

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