サイエンス

「子どもが将来社会的な成功を収める」ために必要なこととは?

By Will Folsom

欲望を抑える自制心を持った子どもの方が将来的に社会的な成功を収めやすいことを示した、行動科学における実験の中でも最も有名なテストが「マシュマロ実験(マシュマロ・テスト)」です。心理学者のウォルター・ミシェル氏がスタンフォード大学で1960年代から1970年代にかけて実施したこの実験をより良いものにリメイクするために必要な考えが新しい研究で明らかになった、と心理学関連のトピックを取り上げるPsychology Todayが紹介しています。

The Marshmallow Myth | Psychology Today
https://www.psychologytoday.com/blog/strategic-thinking/201703/the-marshmallow-myth

気が散るようなものが何もない机と椅子だけの部屋に4歳の子どもを呼び、目の前においしそうなマシュマロをひとつだけ置き、「私が戻ってくるまで15分間マシュマロを食べるのを我慢したら、マシュマロをもうひとつあげる。戻ってくる前にマシュマロを食べたら2つ目はあげないよ」と言い、子どもがマシュマロを食べることを我慢できるかどうか観察するのが「マシュマロ実験」です。

この実験の結果、マシュマロを食べずに我慢して2つ目のマシュマロをゲットできた子どもは全体の約3分の1だったそう。さらにその後の追跡調査の結果、就学前の4歳という年齢で2つ目のマシュマロ(将来的な報酬)のために自制心を持つことができた子どもは、その後の学校で「優秀」と評価される数が相対的に多く、大学進学適正試験(SAT)の平均スコアはマシュマロを食べてしまったグループより210点も高くなることが判明しました。さらに、この自制心の強さは生涯にわたって続くことが分かっています。つまり、子どもの頃に自制心を持っている人は、将来的に社会的成功を収める可能性が高くなることが判明しているわけです。

By Mark Bonica

そんなマシュマロ実験をより良いものにリメイクするのに適した研究結果が、アメリカの国立生物工学情報センターであるNCBIで公表されました。研究結果を公表したのはシカゴ大学の研究者であるケイトリン・ウーリー氏とエイレット・フィッシュバッハ氏で、これによると「楽しい行為」のような実行すればすぐに成果を得られるような行為(即時報酬)は、「健康の改善」のような成果を得られるまで時間がかかる行為(遅延報酬)よりも、持続性の強い因子であるそうです。また、即時報酬が「勉強」や「運動」に対する持続性に関わってくるのに対し、遅延報酬はこれらを行う理由にしかならないとのこと。

つまり、遅延報酬は長期目標の設定や、「長期目標に従事すること」に対する意欲にしかならず、即時報酬こそが長期目標を達成するための持続性に強く関連しているというわけです。これがどういうことかと言うと、「細身のパンツを履く(遅延報酬)」ために「痩せる」という目標を立ててジョギングを行う場合、話すのが好きなジョギングパートナーを見つけたり、ジョギングの代わりにズンバに挑戦したりすることで、「痩せる」という目標達成の行程の中に「楽しい行為(即時報酬)」を織り交ぜていくことが、長期目標を持続するためには重要なことであるというわけ。

By John Benson

マシュマロ実験でマシュマロの誘惑に耐えることができたのは、目の前のマシュマロから目をそらしたり他のことを行うなどして気をそらすことに成功した子どもたちでした。子どもたちがどのように気をそらしたのかというと、歌を歌ったり頭の中でゲームをしたりといったことで、「マシュマロを見つめたまま待機する」といったような強く自分を律する必要があるようなことは行いませんでした。これまではマシュマロを我慢した子どもは「将来的なより大きな報酬のために自分を律することのできる子ども」と考えられていましたが、今回の研究結果を合わせてみると、「遅延報酬(マシュマロを2個もらうこと)」のために「即時報酬(歌を歌ったり、頭の中でゲームをすること)」を間に挟んだと考えることもできます。

つまり、マシュマロ実験で「社会的に成功する」と判断された人は、「将来的な成功のために今を我慢できる人」ではなく「あらゆる状況で満足度(即時報酬)を見つけられる人」であるとPsychology Todayは記しているわけです。小さな違いにもみえますが、「小を捨てて大に就く」のではなく「細かい楽しみを見つける」ことが重要と言われれば、実践する側としては心的印象はかなり違うはず。


なお、マシュマロ実験を考案した心理学者であるウォルター・ミシェル氏の著書「マシュマロ・テスト:成功する子・しない子」はAmazon.co.jpで販売されており、Kindle版が1847円、単行本が2052円です。

マシュマロ・テスト:成功する子・しない子 | ウォルター・ ミシェル, 柴田 裕之 |本 | 通販 | Amazon

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「成長する考え方」と「成長できない考え方」の違いが20年の研究で明らかに - GIGAZINE

子どもたちへのアドバイスとしての「1000時間ルール」とは? - GIGAZINE

自らのやる気を引き出してモチベーションを維持し続けるには一体どうすればよいのか? - GIGAZINE

目標に向かって前向きに毎日のタスクをこなしていけるようになる手帳「Passion Planner」 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article here.