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Netflixで作品配信が行われない場合はBD・DVDの売り上げが伸びることが判明

by porcupiny

映画産業の中で家庭向け分野の最大の収入源となっているのはBDやDVDといった映像ソフトのパッケージ販売で、二番手がストリーミング配信です。この2つはライバル関係にあるわけですが、特にストリーミング配信大手のNetflixは作品の配信が終了するとDVDの売り上げが24.7%伸びるぐらいの大きな影響力を持っていることが、香港大学と香港城市大学の調査で明らかになりました。

The Causal Impact of Video Streaming on DVD Sales: Evidence from a Natural Experiment by Yinan Yu, Hailiang Chen, Chih Hung Peng, Patrick Y. K. Chau :: SSRN
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2897950


Netflix is 'Killing' DVD Sales, Research Finds - TorrentFreak
https://torrentfreak.com/netflix-is-killing-dvd-sales-research-finds-170117/

The Digital Entertainment Groupによれば、2015年のアメリカの映画産業(興行収入)の規模は106億ドル(約1兆2000億円)。映像ソフト販売・レンタル・ダウンロード・ストリーミングなどすべてを合わせた「家庭向けエンタメ市場」の市場規模は180億ドル(約2兆円)です。このうち、物理的なパッケージ販売が61億ドル(約7000億円)、ストリーミング配信が51億ドル(約5800億円)を占めます。

Digital Entertainment Group 2015 Year End Home Entertainment Report
(PDFファイル)http://degonline.org/wp-content/uploads/2016/01/External_2015-Year-end-DEG-Home-Entertainment-Spending-1-5-2016.pdf

ただし、ストリーミング配信がここ3年で25%~33%増という成長を見せたのに対して、映像ソフト販売はここ3年で10%以上ずつ数字を落としているという状態にあります。映像ソフト販売の冷え込みがストリーミングの盛り上がりによるものではないかという見方をする研究者はもちろんいますが、それが本当なのか、あるいは他の要素が存在するのかについての研究はこれまでありませんでした。


そこで行われたのが今回の研究です。対象となったのはパラマウント・ピクチャーズとライオンズゲート、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)という3つの映像制作会社のコンテンツ配給を担当するEPIXの作品です。

もともとEPIXは2010年からNetflixとライセンス契約を結んでいたのですが、2015年9月末で契約が満了となり、今度はHuluと複数年の契約を結びました。このため、2015年9月末日をもってEPIXの扱う作品はNetflixでは視聴不可能となり、代わりにHuluで視聴ができるようになりました。

しかし、契約切り替え時点でNetflixのユーザー数が4320万人だったのに対して、Huluのユーザー数は約1030万人と、Netflixがおよそ4倍。つまり、ストリーミング配信を行うサービスの規模が縮小したことで、該当する作品をストリーミングで見られる人の数は減るので、代わりに映像ソフトを購入する人が出ると考えられます。

研究グループは作品を「2015年9月末日までNetflixでのみ見られたが、翌日からはHuluでのみ見られる」というAグループと、「2015年10月1日の前後どちらでもNetflixでのみ見られてHuluでは見られなかった」というBグループに分けて、その映像ソフトの売り上げの差を調査しました。もしストリーミング配信サイトの切り替えが発生しなければ映像ソフトの売り上げは変化しなかったはずなので、2015年10月1日以降の数字の違いは「ストリーミング配信の利便性(利用しやすいか否か)」に起因すると考えたわけです。

2つのグループの関係を図示したものがコレ。Aグループは図中ではTreatment Group、Bグループは図中ではControl Groupと表記されているもの。


そして調査の結果、ストリーミング配信の利便性が下がると映像ソフトの売り上げは伸びるという結論が出ました。具体的には、Aグループの作品については配信サイト切り替えから3カ月で映像ソフトの売り上げが24.7%増加していました。

特に、発売時期が直近ならば直近であるほど、劇場成績が高ければ高いほど、映像ソフトの売り上げは伸びていたとのこと。このことから研究チームは、「最新作」「劇場で評判の良かった作品」は映像ソフトの需要が高いので「共食い」を避けるためにもストリーミング配信する時期を先にした方がいいと助言しています。

ただし、今回の研究で調査対象とした作品は新しい作品ばかりではなく、中にはストリーミング配信されないからといっていまさら映像ソフトが売れるような作品ではないものもあったとのことで、将来的な研究では初めてストリーミング配信される作品ではどういう数字の違いが出るのかを調べる予定だそうです。

また、研究では海賊版についても考慮していないものの、公式なストリーミング配信が行われるようになると海賊版の数は明らかに減少することがわかっているとのこと。たとえば、海賊版の流通経路として用いられることがあるBitTorrentがネットのトラフィックに占める割合は2008年には31%でしたが、2015年には4.35%にまで減少。一方で、2015年のインターネットトラフィックでNetflixが占める割合は34.7%にもなっています。

コンテンツの権利者にとっては、ストリーミング配信がさらなる力をつけてきたときに、映像ソフトの発売と配信開始とのタイミングをどうするのか、難しい問題となりそうです。

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in メモ, Posted by logc_nt

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