インタビュー

あのパロディ腕時計「フランク三浦」を作ったディンクス・下部良貴社長にあれこれ聞いてきた


1本4000円台からというチープな価格設定で完全非防水というパロディー時計として知られているのが「フランク三浦」です。全国の都道府県の特色を反映した「ご当地三浦」や、秋葉原駅前商店街振興組合がコラボした限定モデル「フランクアキバ」など次々とユニークなモデルが登場しており、多くの有名人にも愛されるフランク三浦ですが、この一大ムーブメントを生み出した時計メーカー・株式会社ディンクスの下部 良貴社長に、フランク三浦についてあれこれ聞いてきました。

フランク三浦公式オンラインショップ
http://tensaitokeishi.jp/

GIGAZINE(以下、G):
本日はよろしくお願いします。あちこちで人気のフランク三浦ですが、会社が大阪にあるとは知りませんでした。

株式会社ディンクス 代表取締役 下部 良貴(以下、下部):
西成区発祥で今は鶴橋という、いかがわしい感じでやらせてもらって、今に至るんですけども。


G:
先日発売された「フランク三浦 七号機(新)」も、すぐに楽天リアルタイムランキングで1位になって大人気ですね。

下部:
実はミスプリントとかあったんですけどね(笑)。やり直すのに2カ月くらいかかる言われたんで、「イヤや」って言ってそのまま発売しました。

G:
たまにそういうミスプリントを「プレミア」として販売されているのを見かけますが、それがネタとして認められるのがすごいと思います。

下部:
他にできないところというか、「ナナメ右下」くらいを狙ってやってます。半分くらいストレス解消のつもりでやってるんで。僕、面倒になったらほんまにやめてしまうんですよ。


G:
2015年も一時期休止されていましたよね?

下部:
フランク三浦が一気に広まった反面、お客さんの層が少し変わってしまったんですよね。取り扱い説明書の意味がわからないという苦情が入ったり、「ウチだけは保証期間延ばしてほしい」って言うお店も出るようになって。「絶対壊れる」って書いているようなパロディ時計だったのが、ファンが増えればアンチも増えて、ジョークが通じなくなってきたんです。そのことを東スポの人に話したら「じゃあフランク三浦殺しましょうか(笑)」って話になって、「フランク三浦死亡」みたいな記事を出してもらって、死んだような行方不明になったような状態にして最近まで休止していました。

編集部注釈:実際にフランク三浦シリーズに入っている「取り扱い説明書」がコレ。「三浦一族は基本的に全て完璧な非防水です」「汗、気圧、温度変化などありとあらゆる水気や空気中の水分にすら耐えられません」「落下などのショックによる耐久性は全く持ち合わせておりません。2センチ以上の高さから落とした、ほんの少し壁やドアに接触したなどで故障した場合も全て自己責任です」「一日の遅れや進みが大きい場合⇒電波時計を参考に毎日時刻合わせして下さい」など、片っ端からツッコミたくなるようなユーモア満載の内容。


G:
もともとフランク三浦を思いついた時も、笑っていたのはディンクスの営業マン1人だけだったとお聞きしました。

下部:
そんなところまで読んでもらってありがとうございます。冗談で生まれたような製品やったんで、おおっぴらに売る気もなかったんです。機械式時計を作っていた会社が、フランク三浦を持って営業に出たもんですから、当初は「ディンクスさんアタマおかしくなったんと違うか」と言われてました(笑)。売れなかったら無料で配ろうと思っていたくらいだったんですが、プロ野球選手とか芸能人とか、有名人の方々がSNSで拡散してくれたことで、一気に火がつきましたね。

G:
ブレイクは予想外だったのですね。2016年になって行方不明になっていたフランク三浦が完全復活した経緯を教えてください。

下部:
もう在庫限りでやめるつもりやったんですけど、ちょうど特許を巡る裁判が重なったのもあって、めちゃくちゃ注文入ったんですよ。ひっきりなしに発注が来て、しまいには電話の取り過ぎで突発性難聴になったほどでした。でも問屋さんからは「お客さんが喜んでいるので、またお願いします」と言われていて、「これはまたやらないとあかんな」となりました。

G:
Twitterでもよく強気なツイートを見かけるんですが、あのムキムキの「フランク三浦」とは何者なんでしょうか?

下部:
アマレスで無敗のムキムキのオッサンの天才時計師ということになってますけど……、これフリー素材なんですよ。


G:
フリー素材!?(笑)

下部:
「フランク三浦」を思いついた時、時計のデザインとかよりも先にコンセプトから考えたんです。「アマレス400戦無敗」とか「西成区出身」とか。次にモデルを誰にしようってなって、ネットのフリー素材からこのムキムキのオッサンに決まりました。フリー素材と言ってもいろいろなところで使えるような契約で使用料を払っているんですが、最近気付いたら、知名度が上がったせいか、この人の「笑顔バージョン」とか、「衣服バージョン」が増えていたんですよ。使用料もちょっと上がってて(笑)。会社で「この人笑ってるで!(笑)」と話題になりました。


G:
取り扱い説明書しかり、Twitterのツイートしかり、ウェブの商品説明のページもユーモアに富んだ内容満載ですが、これは下部社長が考えてるんでしょうか?

下部:
Twitterのつぶやきとかは僕が空き時間に管理しています。ウェブのページも僕が大体30秒くらいでコメント作って、うちのデザイナーに「これで世界観作ってみて」って投げて作っています。ディンクスの本業はブランド時計の並行輸入とか、セレクトショップ向けにOEMを作ることなので、低価格で出しているフランク三浦に時間をかけたら本業がおろそかになってしまいます(笑)

G:
あちこちに露出しても、フランク三浦がメインになっているというわけではないのですね。

下部:
よくもうかってると思われるんですが、パロディ時計ということで説明書にも「絶対壊れる」とか書いていますし、洒落が通じる値段にしています。Twitterとかで「フランク三浦には身代わり地蔵の役目がある」みたいなことを言っているので、もし壊れたら「心筋梗塞になる運命だったのをフランク三浦を受け止めてくれた」と思ってもらえたら(笑)。

G:
確かにTwitterでことあるごとに「買え!」って言っているのを見かけます。

下部:
正直なところ、フランク三浦と同じクオリティで数万円台の時計って、世の中にいっぱいあるんですよ。フランク三浦は冗談みたいなコンセプトから始まってこの値段なので、今さら値段を変えるのはもう無理ですね……。ただし、流行っているから買うというのではなく、「三浦」っていう世界観を理解して、笑って買ってくれる人がいてくれれば、それだけでうれしいですね。しまった。真面目なこと言ってしまいました。


G:
そんなフランク三浦には全国47都道府県をイメージした「ご当地三浦」のシリーズや、コラボ企画などさまざまなモデルがあります。ご当地三浦の最新作となる「フランクアキバ」はどんなモデルなのでしょうか。

下部:
文字盤がグラデーションになっていたり、数字の8がデジタル表示になっていたりと、近未来をイメージした今までと違った切り口になっています。ウチの女性デザイナーのアイデアなので、これまでの僕にはなかった発想になっていると思います。


G:
フランクアキバもやはり「完全非防水」ですね。いずれもフランク三浦は完全非防水をうたっていながら、飲食店とのコラボモデルがいくつかあることに不思議だなと思っていました。


下部:
いろいろやらせてもらっています。たとえばもうやんカレーさんとコラボした「特製もうやんカレー時計」というモデルがあるんですけど。実を言うと最初はベルトをカレーの匂いにしようと思いついて、工場にサンプルまで発注したんです。カレーの匂いの消しゴムとかに使う香料を使ったらいけるかなと思ったんですけど、仕上がった実物から「ドブのニオイ」がして、これは提案はやめようと、お蔵入りになったこともありました(笑)

G:
フランク三浦が「ジョブズはワシが育てた」と言っているのを見かけたのですが、Apple Watchのような「スマートウォッチ版フランク三浦」が出ることはありますか?


下部:
お金がかかるので絶対にないです(笑)。結局Appleでさえも、スマートウォッチの市場を作れなかったじゃないですか。そこに対抗していくにはあれこれ機能が必要になるので、パロディ時計には向いてないと思っています。一度中国からBluetooth連携機能のあるムーブメントを試しに買ってきたことがあるんですけど、Bluetoothにつないでみたら、そこら辺にあるスマートフォンとかPCに次々と自動的につながってしまう恐ろしいシロモノやったんです。「さすがにフランク三浦でも洒落にならん」ということになりましたね。もし、何かやるなら背負うくらいドデカイ時計を作って、「こんなにデカイのに機能はApple Watchに負けてます」みたいなのを作りたいですね。

G:
株式会社ディンクスの資料に「業界を問わずサプライズを仕掛けていく」とあったのですが、フランク三浦以外でも何か考えていることはありますか?

下部:
今の若い世代はあまり時計をはめないですよね。その中でファッションの一環としてはめる「チプカシ」みたいな安い時計が出てきています。そういう時計は高級時計屋さんじゃなくて、雑貨屋さんとか本屋さんで取り扱うことが多いので、そんな若者が手軽に手に取れるような場所で、機械式時計であったり高級時計に興味を持ってもらえる「きっかけ」になるようなアイテムをやっていきたいと思っています。

G:
年末年始に向けて何か考えていることはありますか?

下部:
本業があるのでフランク三浦ではあまり考えていないですけど、福袋とかどうですかね?コンビニの袋にフランク三浦を10本くらい入れて、5000円くらいで「どや!」って(笑)。あとは「フランク三浦を裏で操っていたのは自分だ」って言える権利を誰か買わへんかなと思っています。2000万円から3000万円くらいの応相談で、「本気で売ります!」って書いておいてください(笑)。

G:
本日はありがとうございました。

というわけで、当地三浦の最新モデル「フランクアキバ」は、Amazonで税込5800円で購入可能です。

Amazon.co.jp | 【フランク三浦】MIURA ご当地三浦 秋葉原 「フランクアキバ」 | ホビー 通販

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in インタビュー,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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