メモ

イーロン・マスクが語るAIとヒトが高レベルで共存する「未来の作り方」


数々のスタートアップに投資を行うベンチャーキャピタル「Yコンビネータ」が世界をけん引する人物にインタビューを行うHow to Build the Futureシリーズに、SpaceXやテスラといった革新的な企業を率いるイーロン・マスク氏が登場し、今の社会が取り組むべき課題や、AIとヒトの共存という概念について語っています。

This interview with Elon Musk is from Y Combinator's How to Build the Future series
http://www.ycombinator.com/future/elon/

インタビューはまず「今の世界に存在する5つの問題があるとすれば何ですか?」という質問からスタート。マスク氏が最初に挙げたのは「AI(人工知能)」で、「AIが近い将来の時間軸の中で、最も人類に影響を与えるものになるでしょう」と発言し、未来を素晴らしいものにするためには、AIの開発を進める必要があると指摘。


次にマスク氏が挙げたのが、遺伝子に関する研究です。マスク氏は「遺伝子をリ・プログラミング(再構築)することで、遺伝に起因する病気や、認知症、アルツハイマー病を克服することができたら、それは素晴らしいことになるでしょう」と語ります。

そして次に、人間の脳に情報を送り込む広帯域のインターフェースを搭載する技術を上げています。マスク氏は「現在の人間の体では、脳に対する情報のインターフェースは狭帯域なものとなっています。今の社会において、私たちにはEmailを使えること、コンピューターや電話、アプリケーションを使える存在としての、デジタル上に存在する『第3の人格』を持っています。これらの技術を持つことで、私たちは事実上の『超人類』であるといえます」と、デジタル技術が実は人間の在り方にも大きく影響を与えていると語ります。

その上で、「しかし、私たちの脳の中では、大脳新皮質と上記のような『第3の人格』とのインターフェースの通信帯域が極めて限られています。その帯域の限界を解決することが、私は非常に重要なことであると考えています」と、人間とデジタル技術をより一層近づける、あるいは一体化させる技術の重要性を説いています。

壮大な考え方を聞いたところで、インタビュアーがマスク氏に「野心にあふれる若者からよく『次のイーロン・マスクになるためにはどうしたらいいですか?』と尋ねられます。あなたは若い頃どんなことをやっていて、その後の社会にインパクトを与えるための準備をどのように進めてきていたのでしょう?」と質問。それに対してマスク氏は以下のように回答しています。

マスク:
そうですね、まず最初に、私が若かった頃は、今やっているようなことに関わることになるとは考えていませんでした。学生の頃、つまり25年前に私が考えていた5つのことは「複数の惑星での人類の生活」「再生可能エネルギーへの移行を加速させること」「インターネットを通じた広範囲への発言」「遺伝子工学」「人工知能(AI)」でしたが、当時はこれらのことに関わるようになるとはまったく考えていませんでした。


マスク:
事実、学生のころに研究していたのは、いかにして自動車を電子化させるかという分野で、そこで学んでいたことは極めて大量の電力を蓄えることが可能なコンデンサー「スーパーキャパシタ」についてのことでした。そしてその後に進んだスタンフォード大学で研究していたのは、電気自動車のための先進的なエネルギー貯蔵技術でした。その後は、インターネット関連会社を立ち上げるために研究を中断しました。当時はまだ、電気自動車に関する技術革新が起こる中間地点であり、まだまだ時間のかかることだと考えていたからです。世の中には、社会に役に立たないものに関する博士号が多く存在していますが、私は役に立つものを生みだすことに挑んでいました。

インタビュアー:
今の社会で、役立つ物を作り出すためには、博士号は必要ですか?

マスク:
多くの場合は必要ないでしょうね。

インタビュアー:
役に立つ物を作り出すために必要なことは?

マスク:
何らかの「見積もり」が必要でしょう。これから造りだそうとしているものがその時点の最新の技術と比較して「どの程度優れているのか」のを示す差分と、それによって影響を受ける人の数をかけ算することで、影響の度合いを見積もることができます。そのため、例えば技術が極めて優れていて、一方で影響を受ける人の数が少なくても、これは素晴らしいものといえます。逆に、技術そのものは大したことがなくても、影響を受ける人が極めて多い場合でも、同じことがいえます。これはいわゆる「曲線下の面積(AUC:Area Under the Curve)」と呼ばれているもので、いかに役立つのかを考える上で重要なものです。


インタビュアー:
その意味で考えると、SpaceXを立ち上げるというのは、当時はとても「クレイジー」なものだったと思うのですが?

マスク:
確かにクレイジーでしたよ。当時は誰もがそう考えていました。リスクとリターンを考慮したリスク調整後リターンが最終的な目標であるとすれば、SpaceXを立ち上げることはクレイジーでした。しかしそれは私が考えていたゴールではありませんでした。

もし、ロケット技術を進歩させようとする動きがなかったら、我々はずっと地球上から飛び出せないままだったでしょう。巨大な航空宇宙産業が考えているのは「いかにして自分たちの古い技術を毎年少しずつ進歩させていくか」ということであり、急進的な進歩には関心がありません。事実、技術は後退していると言うこともできます。1969年、人類はサターン5型ロケットで人類を月にまで運ぶことができました。しかし、現在ではスペースシャトルが地球を周回する低軌道(国際宇宙ステーションなど)に人を送り込むことがやっとで、そのスペースシャトルも全機が退役しました。この流れは、ゼロに向かう流れといえます。

技術というものは、自動的に発展していくというものではありません。技術は、優れた頭脳を持つ人がクレイジーな構想の実現のために努力することによって進化するものです。これは歴史を振り返っても明らかなことです。古代エジプト人は巨大なピラミッドを作ることができましたが、今ではその技術は失われてしまいました。また、当時の文字であったヒエログリフも失われてしまいました。その後のローマ帝国の繁栄と衰退も同じです。


インタビュアー:
あなたのエピソード中で私が好きなのは、あなたはあり得ないほど怖いもの知らずで、誰に向かっても面と向かってクレイジーな考えを話すところです。私が知っている多くのクレイジーな人々の中でも、あなたは飛び抜けています。その考え方や、人々に批判されても気にしないその強さはどこから来ているのでしょう?


マスク:
私にも恐れを強く感じることはありますよ。「恐怖の感情が欠落している」というわけではありません。そこには信じるに足る重要な理由があり、恐怖を押し切ってでも進める必要があると感じているから物事を進めるのです。

マスク:
これには、「運命論」が何らかの力になるのかもしれません。(「可能性」とは別の)「蓋然性」を受け入れることで、恐れる気持ちが小さくなるでしょう。SpaceXを始めたときは、成功する確率(可能性)は10%もないと考えていて、私は全てを失うかもしれないと思っていました。しかし、それによって何らかの進歩が生みだされます。私たちが一歩を踏み出すことで、たとえ私たちがいなくなっても、次の誰かがバトンを引き継いでくれて、さらに前に進めてくれると考えています。これはテスラにも同じことがいえます。新興EVメーカーが成功する確率は非常に低いだろうと考えていました。

◆火星移住の実現について
火星への移住の実現性について尋ねられたマスク氏は「可能性はある」と返答。そして「いつ行けるのか?」という質問に対しては、以下のように答えています。

マスク:
自己欺瞞だと思われたくはないのですが、「方法はある」と考えています。ここでいう「成功」とは、火星のコロニー(植民地)が自己増殖する段階のことをいいますが、私はそれが可能だと思っています。数年前までは可能かどうかわかりませんでしたが、必要十分な数の人を火星に送り込むということは、おそらく10年以内、ひょっとしたらそれよりも早く実現可能だと考えています。それまでにSpaceXがなくなってしまわないように、そして私自身が死んでいなくなってしまわないようにしなければなりませんね。仮に私がいなくなっても、誰かが後を引き継いでくれるでしょう。


◆AIについて
最後に、技術進歩のペースが非常に速くなっている人工知能(AI)についてインタビュアーが「あなたはこれまでにAIについての発言を多く行ってきました。AIの明るい将来がどのようなものになるのか、お考えを聞かせていただけますか?」と質問。それに対してマスク氏は、「これは私の予測ですが」と前置きした上で、「私が思いつく有効な代替案のうち最良のものは、『AIテクノロジーの民主化』だと思います。これはつまり、AIが特定の企業や数人の人物によってコントロールされるものではないということを意味します」と、AI技術が特定の誰かによって占有されるべきではないという考えを明らかにしています。


仮に最先端のAIが誰かによって独占されることになると、優れたAIが独裁者や国家の諜報機関に狙われる可能性が起こります。マスク氏はこの状況を非常に危険と考えており、AI技術を広く開放することで最先端のAI技術を民主的に管理して、誰でも公平に入手できる状態にしておくことの重要性を説いています。

また、AIが抱える最大の問題についてマスク氏は、AIが自らの性能を高める能力を手に入れることで人間をはるかに超える能力を身に付けてしまうことではなく、やはり悪意のある誰かによって独占されてしまうことであると主張。そのため、マスク氏はAIをオープンに公開する非営利団体「OpenAI」を立ち上げ、AIを広く共有財産にする取り組みを進めています。

OpenAI Blog


OpenAIの仕組みを立ち上げることでAIを共有・保護することと同時に、マスク氏はAIを人間の脳機能の強化に役立てようとする構想を語ります。インタビュー冒頭で触れていた「狭帯域な脳のインターフェースを補完する」というのがその狙いです。大脳新皮質と、インタビュー冒頭で触れられていたデジタル的な概念で存在している「第3の人格」とのつながりを強化させることでAIとの融合をはかり、「AI・ヒト共生生物 (AI-human symbiote)」へとつながる構想が述べられています。

・関連記事
太陽光発電・低価格EV・カーシェアなど、テスラのマスク氏が今後の10年を示した「マスタープラン・パート2」とは? - GIGAZINE

2020年までに稼働予定のテスラの超巨大バッテリー工場「ギガファクトリー」のいま - GIGAZINE

イーロン・マスク氏が「人類はコンピューター・シミュレーションの中で生きている」と考えるわけとは? - GIGAZINE

イーロン・マスクのSpaceXはどのように人類を火星に運ぼうとしているのかをムービーで解説 - GIGAZINE

テック系企業と共和党の重鎮たちが極秘会議を実施、その内容とは? - GIGAZINE

in 動画,   メモ, Posted by logx_tm