サイエンス

0.5秒でガンを見分ける職業

by Slices of Light

人間には状況を一目見るだけで概要を把握する能力が備わっており、例えば自分の部屋のイスが突然部屋から消えれば、実際に部屋をじっくり調べなくともチラッと見るだけで「イスがない」ということに気づくことができます。米国科学アカデミー紀要(PNAS)で発表された新しい論文によると、これと同様に、レントゲン・MRI・CTといった画像技術から乳ガンを発見することを専門とした放射線科医は0.5秒で正常な乳房X線撮影像と異常な乳房X線撮影像を見分けることができると報告されました。

A half-second glimpse often lets radiologists identify breast cancer cases even when viewing the mammogram of the opposite breast
http://www.pnas.org/content/early/2016/08/24/1606187113

Doctors don’t have to see cancer to suspect it’s there | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2016/09/doctors-dont-have-to-see-cancer-to-suspect-its-there/

人が大きな写真をちらっと見ただけで意味を把握できる現象はグローバル処理と言われています。イギリス・ヨーク大学に在籍するKarla K. Evans教授らは放射線科医らに画像を一瞬だけ見せ、放射線科医らの見立てと画像解析結果とを比べることで、彼らのグローバル処理がどのような精度なのかをテストしました。

by Carol Romero

すると、わずか0.5秒のあいだX線画像を見せただけであっても、放射線科医らは偶然とは言えない確率でガンを検知できることが判明。時に放射線科医らは画像に写った特定の異常を見つける前でさえも、画像を少し見ただけで「悪く見える」という知見を述べることがありますが、今回のテストの結果はこれらの逸話を裏付けるものと言えます。放射線科医らは実際に細胞のどこでガンが育っているかが分からなくとも、画像全体からガンのシグナルを読み取れるのだということが示されたわけです。

また、驚くべきことに、ガン細胞の異常成長が見られない乳房のX線画像であっても、放射線科医らはガンの存在に気づいたとのこと。研究者らによると、放射線科医らがガンの有無を見分けるとき、正常な乳房の細胞と比較することはないように見えたそうです。ただし、同様に一瞬だけ画像を見せて「ガン細胞のある場所を見つけてください」と言った場合の検知率は、偶然と言えるレベルにまで落ちたそうです。

もちろん医者も放射線科医と同様に患者のガン細胞を見分けることができますが、マンモグラムから一瞬でガンを見分けることができるのは放射線科医ならではの技術と言えます。研究者らは、コンピューター化されたガンのスクリーニング検査の精度を上げるべく、放射線科医らが画像から一瞬にして受け取る「シグナル」が一体何なのかを今後の研究で明らかにしていきたいとしています。

by Army Medicine

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「がん」がヒトの進化の過程で作られてしまった経緯とは? - GIGAZINE

コーヒーはがんの原因にならないことを世界保健機関が発表、ただし熱すぎる飲み物はがんの原因になる - GIGAZINE

がんによる腫瘍が血管から栄養を横取りして成長して全身に拡散していく方法とは? - GIGAZINE

平均寿命100歳の世界で人はかつてないほど充実した人生を送れる - GIGAZINE

人間の老化に対する初の遺伝子治療が成功か - GIGAZINE

老化を食い止め若返らせて寿命を延長する効果が期待される薬や物質 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.