恐ろしくも美しい唯一無二のモンスター「エイリアン」をH・R・ギーガーはどのようにデザインして作り出したのか?


1979年に公開された映画「エイリアン」は、画家でありデザイナーであったH・R・ギーガーのイラストを忠実に立体化させることで大きな成功を収めました。恐ろしさだではなく美しさも秘めたエイリアンがどのようにして生みだされたのか、その誕生秘話と製作の秘密がYouTubeで公開されています。

Alien - H. R. Giger's Beautiful Monster - YouTube


1979年に公開された映画「エイリアン」に登場するエイリアンの姿はそれまで人々が抱いていたモンスターのイメージを覆すものとなりました。


このエイリアンのデザインをしたのがスイス出身の画家兼デザイナーのH・R・ギーガーです。


ギーガーはチューリッヒで建築とインダストリアルデザインを学んだデザイナーで、エイリアンの製作に携わる前から既にアーティストとして成功していました。


ギーガーの作り出すものは超現実的でありながら機械的であり……


同時に性的な要素を含んでいました。


ギーガーが映画の世界に与えた影響は大きく、エイリアンを見たことがない人でも、現代の映画やゲーム美術の中にギーガーの影響を見ることができます。


しかし、ギーガーの作品のように人を不安にさせるダークなものが商業的な魅力を持つのは非常に珍しいことです。そこにはどのような物語があったのでしょうか?


映画にギーガーが携わるようになったのは、1977年。ギーガーのエアブラシ・ペインティングの作品集を目にし、感銘を受けた映画監督のリドリー・スコットと映画脚本家のダン・オバノンがギーガーにコンタクトを取ったのがきっかけです。


この時、作品集の中に登場した「Xenomorph(ゼノモーフ)」こそが、のちに映画に登場するエイリアンのもととなったデザインです。


これがゼノモーフのデザイン。2人は映画を製作するにあたって、ギーガーのデザインを忠実に再現することを重視しました。


ギーガーのデザインは、SFと産業主義と抽象的なイメージを完璧に融合させており、2人が映画を未来的な雰囲気にするために求めていた要素そのものでした。


つまり、映画にとってギーガーのデザインは不可欠な要素だったわけです。


また、ゼノモーフだけでなく、作中に登場する惑星LV-426もギーガーのデザインがもとになっています。


風景から……


宇宙船に至るまで、あらゆる部分がギーガーのデザインに忠実に作られています。


エイリアンが1979年に公開されるまで、ホラー映画に登場するモンスターはクモ・サメ・オオカミなど、地球上の生き物をベースにされていました。


しかし、ギーガーの作り出すものは1970年代に親しまれたどのデザインとも異なりました。


機械と生物を融合させた、恐ろしくも美しい、正真正銘の「エイリアン(異質なもの)」が作り出されたわけです。


もともと二次元で描かれていたゼノモーフを三次元の作品にするのは非常に難しい作業でした。


そのため、ゼノモーフの造形や映画セットの作成にはギーガー自身が大きく携わったとのこと。


このような二次元の作品が……


三次元化するとこうなります。


また、ギーガーはインダストリアルデザインの出身であるため、「長い頭部の中にはもう1つの口が収納されている」など、エイリアンの構造は実用的に作られています。


この時、エイリアンの唇はコンドームで作られており……


前頭部には本物の人間の頭蓋骨が使用されました。


また、映画エイリアンの特徴は、クリーチャーが「人間に寄生して成長する」という形をとっていること、そして作品中で専門家が誰1人エイリアンの起源や「どうして人を襲うのか」という点を説明できないということにあります。


そのため映画の視聴者はエイリアンの生態について言葉ではなく、作品内の登場人物の体験という「視覚」的な要素によって理解していくことになります。


エイリアンというクリーチャーの成長や進化そのものが「物語」、つまり映画の核になっているのです。


しかも、モンスターに弱点がある典型的なパニックムービーとは違って、エイリアンは不死身。殺そうと試みると登場人物が死んでいくので、生き残る方法が「逃げ」の一手であるというのも映画のユニークなところです。


話は変わって、モンスターの姿を映像に映さず、緊張感のある恐怖を生み出した映画としては「ジョーズ」が挙げられますが……


明るい場所でクローズアップした映像になると、ジョーズの恐怖は薄らいでしまいます。


しかし、エイリアンは暗い場所だけでなく、明るい場所でどんな角度から見ても視聴者に不安を抱かせる見た目です。


エイリアンはちらりと見えるだけで視聴者の恐怖を増幅させます。しかし、このとき、恐ろしいだけでなく、なぜか視聴者に「見たい」と思わせるのがエイリアンの魅力。これは、ギーガーがエイリアンを美しいものにしたいと考えていたことが反映されているためです。


「モンスターはただ気持ちが悪いものではなく、ある意味で美しいもの。その動きは優雅でしなやかです」というのがギーガーの言葉。


このようにして作られたエイリアンは、20世紀に作られた最も影響力を持つデザインの生き物の1つになりました。


1本の映画から始まり、ゲーム・映画続編・マンガなど数々の作品が生み出され、40年近くたった今でも人々を興奮させ、恐怖を与える力を持ちます。


そしてエイリアンが生み出されてから40年間で、エイリアンほどの力を持ったキャラクターは類を見ず、今でもなお、唯一無二の「美しく恐ろしい悪夢」となっているわけです。

・関連記事
映画「パシフィック・リム」ギレルモ・デル・トロ監督のすさまじいスケッチ集 - GIGAZINE

アカデミー視覚効果賞の歴代受賞映画を集めたムービーが圧巻 - GIGAZINE

黒澤映画の分析により映像作品においてセリフではなく「動き」が重要だとよくわかる「Akira Kurosawa - Composing Movement」 - GIGAZINE

映画「スター・ウォーズ」が日本の時代劇の影響を受けた経緯がよくわかるムービー - GIGAZINE

VFXのすさまじい進化を映画の歴史と共に振り返る「The Evolution Of Visual Effects」 - GIGAZINE

ここ100年でどのようなゾンビが生まれてきたのか - GIGAZINE

スタイリッシュに進化した新しいロボコップスーツ制作の裏側はこんな感じ - GIGAZINE

in 動画,   映画, Posted by logq_fa