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「iPhone」「過去の失敗」「Appleの未来」についてAppleのティム・クックCEOが答える


Appleのティム・クックCEOが、The Washington Postのロングインタビューで、AppleのCEOとしてありたい姿や今後のスマートフォン市場、iPhone頼みの現状、過去の大失敗やAppleの次なる一手などについて答えています。

Tim Cook, the interview: Running Apple 'is sort of a lonely job' | The Washington Post
http://www.washingtonpost.com/sf/business/wp/2016/08/13/2016/08/13/tim-cook-the-interview-running-apple-is-sort-of-a-lonely-job/

Q:
あなたはかつて「よくいる伝統的な最高経営責任者(CEO)にはなりたくない」と言いました。これは何を意味するのですか?

クック:
伝統的なCEOは顧客から切り離された存在だと考えています。小売業のCEOの多くは、真に消費者と対話しません。また、伝統的なCEOは、自分たちの仕事とはバランスシートや損益計算書などにある、と信じているように思います。もちろんこれらは重要ですが、それだけが重要な事だとは思いません。

CEOには会社の従業員に対する信じられないほどの責任があります。そして企業が属するコミュニティや国に対しても責任があり、さらには製品を開発する人、組み立てる人など会社の生態系全体に対しても責任があるのです。この点で、私は伝統的なCEOとは異なる考え方を持っているのかもしれません。批判があるのは分かっています。もしも長期的な株主還元に関心があるならば、先ほど上げたことはすべて本当に重要なものになります。


Q:
iPhoneの販売台数が10億台を超えました。2011年のCEO就任時にはAppleの売上高の約44%を占めていたiPhoneは、今では3分の2に近い状態です。Appleは、iPhoneに縛られたビジネスからどのように移行するのですか?

クック:
それは秘密事項ですが、特別な問題ではありません。コンシューマーエレクトロニクス製品に関して言えば、人々が長期的にみて乗り換えるであろう何か別の製品をあなたは知っていますか?私は別の選択肢があるとは思いません。

Q:
どういう意味ですか?

クック:
PCの世界販売台数は約2億7500万台で、この数は減少しています。スマートフォンの世界市場は14億台です。時間がたつにつれて、世界のすべての人がスマートフォンを持つようになると私は確信しています。もちろんそれまでには時間がかかり、また、すべての人がiPhoneを持つわけではありません。しかし、コンシューマー向けの電子機器という点では、スマートフォンは地球上で最も巨大な市場です。家庭にはテレビがあります。幸せな家庭は複数台のテレビを持っています。しかし、テレビは1人に1台というわけではありませんし、そうなることはないでしょう。

今日のスマートフォンを作り上げている技術を見てください。スマートフォンの未来で支配的になる技術を見てください。例えば人工知能(AI)のような。AIはスマートフォンをさらに必要不可欠な存在にします。AIは今あるよりももっとよいアシスタントになります。すでにスマートフォンなしでは外出できないようになっているかもしれませんが、将来にはもっとスマートフォンにつながることになるでしょう。

Q:
Appleの手持ち資金は2315億ドル(約23兆4000億円)にも上ります。「Appleが次に世界を変える技術は何だろうか?」と聞く人たちに対して、あなたは、スマートフォンのようなものは他にはないと言っているのですか?

クック:
テクノロジーは、毎週のように新しく美しい技術が登場する産業です。ネットブックが登場したとき、誰もがこれこそ私たちが求めていた、信じられない出来事だと言いましたし、振り返ればPDAだってそうです。テクノロジーはこのような素晴らしいものであふれています。

「私たちは何もする必要はない」と言っているわけではありません。私は、信じられないような製品カテゴリーにスマートフォンがまだあると言っているだけです。それは、この四半期だけのことではなく、通年、そして数年を通してあてはまることです。ですから、素晴らしい日々は過ぎ去ったと思って欲しくありません。

Q:
しかし、一部のアナリストはそう言っています。

クック:
私は気にしません。正直にいうと、彼らは2001年にAppleについて同じ事を言っていました。2005年にも言っていました。2007年には「これが愚かなiPhoneだ。誰がこれに夢を見る?」とも言っていました。彼らはAppleはピークを迎えたと2010年に言いました。2011年に600億ドル(約6兆600億円)の売上を達成すると、「これ以上成長できない」と。ひるがえって、昨年のAppleの売上高は2300億ドル(約23兆2000億円)です。確かに、今年は売上が落ちるでしょう。すべての年で成長するわけではないのはご存じの通りです。このような意見は散々聞いてきました。ですから、私はそれについて論じることはしません。なぜなら、それは多くの点で「巨大であるが故にさらに大きくなることはできない」というような古典的な考えだからです。

Q:
「投資家たちの焦り」に起因するフラストレーションを感じますか?

クック:
私たちはすべての投資家を歓迎します。しかし、私たちは長期的視点に基づいて意志決定をしていることを明確にしようとしています。過去5年間に行ってきたやりかたを見れば、当社の株主還元率は100%以上だと思います。これはかなり良い数字です。そして、現時点でApple株を所有しているほとんどの人が満足だろうと考えています。


Q:
誰もが次が何かを知りたがっています。自動車やテレビについて。人工知能や拡張現実については語りましたね。これらの偉大なアイデアが、巨大な組織でどのように具現化するのですか?

クック:
素晴らしい人々が素晴らしいアイデアを具現化します。小さなチームが巨大な一枚岩となることを信じています。プロダクトチームは水平な関係です。ハードウェアチームもソフトウェアチームも協業します。私たちは部門を持っていません。私たちはビジネススクールがやらないことを、他の大企業がやらないことをやろうと考えています。他の大企業は会社を小さな部署に分けます。各部署がそれぞれにマーケティング、コミュニケーション、オペレーションを行います。

顧客が私たちに何を求めているのかについて考え続ければ、シームレスなユーザー体験に戻ってきます。誰もがiPhoneで取り組んでいる作業をいつでも再開したいと思います。また、作業環境をMacにも移したい。そしてそれらが完全にシームレスであることが望まれます。これを保証できる唯一の方法は、物事を部署ごとではなく一度に行うことです。これは、会社のトップが協力的であるべきことを意味します。

Q:
振り返って、学ぶべき事があった失敗はありますか?

クック:
マップ(アプリ)は失敗でした。今では誇りに思えるアプリになっていますが。私たちはこれが最高の状態ではなかったと自ら認める正直さを持っており、他の道を選ぶ勇気を持っていました。それは重要な事です。これこそが組織が学習する唯一の方法です。伝統的な大企業の失敗とは、自らの過ちを認めないことです。その点で、二重の失敗です。たいていの大企業の持つプライドやエゴというものは、「自分たちは間違った」と言うことを許さないほど大きなものなのです。

何か他のものにギアを入れ替える場合には、早いほど良いと考えます。正直であれば、人々は疑いから利益を与えてくれます。もしも霧がかったもやの中で立ち往生し、間違いを継続するならば、必ず従業員や顧客の信頼を失うだろうと思います。

Q:
他には?

クック:
私は小売り業務の責任者(元・Dixonsのジョン・ブロウェット氏)に間違った人選をしました。これは明らかにむちゃくちゃでした。彼について悪く言っているわけではありません。彼が文化的にAppleに適合しなかっただけなのです。彼に話を聞き、私は最終的な決定を出しましたが、それは間違っていました。私たちは事態をすぐに認識し、迅速に変更を行いました。その決定を誇りに思っています。

それは孤独な仕事のようなものです。格言にもあるとおり、CEOの仕事は多くの点で孤独です。私は同情を求めていません。見えない死角が誰しもあることを認識しなければなりません。死角は移り変わります。周りに真に素晴らしい人を置くだけでなく、あなたを鼓舞しベストを引き出してくれる人を置かねばなりません。

Q:
直近の四半期で、巨大市場の中国で33%も売上が落ち込んでいます。Huaweiのような低価格市場で成長してきた企業が、(iPhoneのような)プレミアムなスマートフォン市場に参入し始めています。中国について話しましょう。競争相手や中国の規制についてどれくらい脅威に感じていますか?

クック:
Appleは長期的な視点に基づいて投資判断を行います。90日ごとに事業報告をしていますが、それはルールだからであって、短期的な視点で企業運営をしているわけではありません。長期的に見て、中国は信じられないほどの市場です。需要や潜在的な利益という視点だけでなく、才能の宝庫という点で見てもです。中国には150万人以上のiOSアプリ開発者がいます。前年同期比では112%増加していますし、2年間というスパンで見れば、四半期に50%以上のペースで増加しています。


Q:
仮想現実についてどう思いますか?

クック:
拡張現実(AR)は非常に興味深く、コア技術の一つだと考えています。ですから、はい。それは私たちが話しているカーテンのうしろでたくさんやっているものです(笑)

Q:
Appleカーについてはたくさんの報告があり、公然の秘密のように思える注目を集めています。なぜ自動車について何も言わないのですか?

クック:
私たちは発表されていない何かについての質問に答えることはできません(笑)

Q:
Appleカーについてはコンスタントに注目が集まっています。詳細について共有したくなることはないのですか?

クック:
私たちは常に人々が驚きを喜ぶのを見てきました。日常生活において、驚きはまだ十分ではないのです。

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in メモ,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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