「MicrosoftがWindowsでSteamをつぶすかもしれない」とEpic Gamesトップのティム・スウィーニー氏が心配する理由

Windows 10で導入された「ユニバーサルWindowsプラットフォーム(UWP)」は、PCやモバイル端末、Xboxなど異なるデバイス上でもWindows用のアプリケーションを動作させることができる統合プラットフォームです。UWP用のアプリを開発すれば、全てのWindows 10のデバイスで動作可能という便利な印象があるものの、Epic Gamesの創設者兼CEOであるティム・スウィーニー氏はUWP向けのアップデートがSteamをダメにする可能性があるとして警笛を鳴らしています。

Tim Sweeney thinks Microsoft will make Steam 'progressively worse' with Windows 10 patches | PC Gamer
http://www.pcgamer.com/tim-sweeney-thinks-microsoft-will-make-steam-progressively-worse-with-windows-10-patches/

Tim Sweeney claims that Microsoft will remove Win32, destroy Steam | Ars Technica
http://arstechnica.com/information-technology/2016/07/now-tim-sweeney-thinks-that-microsoft-will-use-windows-10-to-break-steam/

インタビューを実施した雑誌のEdgeによれば、スウィーニー氏はWindows 10のアップデートがサードパーティ製アプリの利便性や、SteamといったPCゲームのダウンロード販売プラットフォームを腐敗させると考えているとのこと。

スウィーニー氏は「Windowsには2つのプログラミングインターフェイスがあって、全てのアプリはどちらか1つを選ばなければいけません。Steamで販売されているPCゲームのほとんどは、そのうちの1つであるWin32というAPIを使っています」と話し、「Microsoftが全ての開発者にUWPを使用するように推奨すれば、開発者はWin32アプリケーションアプリから手を引いてしまうでしょう。もしそうなってしまうと、全てのアプリやゲームはWindows Storeでしか配信されなくなってしまいます。そのときがきたら、PC向けアプリケーションプラットフォームは閉鎖的な空間になります」とUWPの影響を懸念しています。

スウィーニー氏が言うことは技術的に正しいものの、MicrosoftがアプリやゲームをWindows Storeでのみ配信し、意図的にSteamのようなプラットフォームをつぶしてしまうのはMicrosoftにとって得策とは言えなさそう。この点についてスウィーニー氏は「Microsoftは今後の5年間で、Steamを弱体化させるようなアップデートを配信していくでしょう。MicrosoftはSteamを完全に破壊することはなく、壊れる一歩手前まで追い込み、ユーザーがSteamの代わりにWindows Storeの方が使えると考えるようになるのを狙っているはずです。これはMicrosoftが他の分野で競合他社に打ち勝つために行ってきた手法であり、次の狙いがSteamになります」とインタビューで発言しました。

スウィーニー氏の発言に対して、真っ向から異論を唱えているのがArs Technicaのテクノロジー専門の編集者であるピーター・ブライト氏です。大英図書館のデジタルアーカイブで勤務していた経歴を持つブライト氏は「UWPはWindows Storeに束縛されるわけではありません。開発者なら誰でも、Windows Storeを利用しなくてもWindows上でインストールと動作が可能なUWPを作れます。もし、MicrosoftがWin32を取り除いたとしても、Windows Storeの利用を強制するということはないでしょう」とスウィーニー氏に反論。

さらに、「UWPはWin32上で構築されていて、Win32のサブセットになりサンドボックスの環境で動作します。しかし、WindowsからUWPをそのままにしてWin32だけ取り除くという方法はありません。また、エクスプローラーシェルやOfficeSuiteといったWindowsのコアアプリケーションはWin32に依存しています。Win32を使わないようにするには、ものすごく長い年数がかかるはずです」と続けました。

スウィーニー氏の言うとおりMicrosoftが他の配信プラットフォームをなくそうと考えているのかどうかは確かではありません。MicrosoftがUWPでどのような戦略をとっていくのか、今後の5年がカギになりそうです。