メモ

2006年にYouTubeで爆発的な人気を得たユーチューバーの走りとなった女性の話


YouTubeがサービスを開始してから約11年が経過した2016年時点で、自作のムービーをアップロードしてお金を稼ぐYouTuber(ユーチューバー)の存在はインターネットだけでなくテレビでも取り上げられ、多くの人に認知され始めました。そんなYouTuberの走りとも言えるのが「Lonelygirl15」というユーザーで、16歳のブリーという女性が自分の日常を淡々と語るムービーをアップロードし大人気を得たのですが、実はプロデューサーや脚本家が存在し、ブリーさんは存在しない架空の女性であることが判明し、物議を醸したことがありました。

Lonelygirl15: how one mysterious vlogger changed the internet | Technology | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2016/jun/16/lonelygirl15-bree-video-blog-youtube

2006年6月、ブリーと名乗る16歳の女性がLonelygirl15というアカウント名で「First Blog / Dorkiness Prevails」というムービーを投稿しました。ムービーは、お気に入りのビデオ・ブロガーについて話したり、「自分が住んでいる街は退屈でPCばかりしている」「親がカルト宗教を信仰している」などの少し変わったプライベートなことを話したりという内容で、この後にもドンドンとムービーが投稿されるようになり、時にはブリーの親友であるダニエルとの恋模様を描くなどユーザーの人気を集めてたちまちYouTubeで話題のムービーシリーズになりました。その人気はすさまじく、大手新聞紙のThe New York Timesで特集が何度も組まれるほどでした。

Lonelygirl15が初めて投稿したビデオ・ブログは以下のムービーから確認できます。

First Blog / Dorkiness Prevails - YouTube


しかし、Lonelygirl15のシリーズに登場するブリーやダニエル、そしてムービーで語られた全ての話は創作であり、裏にはカメラマンや脚本家がいました。Lonelygirl15の仕掛け人は外科医の研修医から映画製作へと転じたマイルズ・ベケットという男性。YouTubeがサービスを開始したばかりのころ、ベケットさんは「ウェブカムを使うだけで誰でもムービーを投稿できる上に、公開されているムービーが本物か偽物かの区別はつけにくく、フィクション作品を投稿するにはうってつけであり、テレビの番組のようなことができるかもしれない」と考えたとのこと。

ベケットさんは、バーで意気投合した脚本家のメッシュ・ フリンダースさんと協力して「主人公はブリーという16歳の女性で、いつもインターネットばかりをしている。歴史と科学が大好きで、親友のダニエルと遊ぶことが多い。いたって普通の女の子だけど、両親がカルト宗教を信仰しているという変わった点もある」という簡単な脚本を作成させました。また、YouTubeで人気を得るために人気のユーザーの話し方や撮影場所を徹底的に調査したそうです。

そして出演者を雇うべくオーディションを開催し、ブリー役に当時19歳だったジェシカ・リー・ローズさんを、親友のダニエル役にユセフ・アブ・テレブさんを選出。オーディションに受かるまでインターネット上の番組であることを知らなかったローズさんは事実を知ってから「だまされているのでは?」と考え、出演を一度は思いとどまったそうです。当時は「インターネットのコンテンツに女優として出演する=ポルノ映画」という風潮がまだあったようで、ローズさんはLonelygirl15も実際はポルノ映画なのではと考えましたが、ダニエル役のテレブさんと相談した上で、出演を承諾することにしました。

ブリーを演じるローズさんと、ダニエルを演じるテレブさん。


Lonelygirl15の仕掛け人であるベケットさんは、友人で弁護士のグレイグ・グッドフリードさんにビジネス面での責任者になってもらい、さらにグレイグさんの奥さんであるアマンダさんがローズさんやテレブさんの身元を隠し、MySpaceで実際には存在しないブリーやダニエルのアカウントを作って運営することにしてプロジェクトは始まりました。

撮影に使われたのは脚本家のフリンダースさんの部屋で、内装や家具を16歳の女の子らしいものに作り替えて撮影が進められました。シリーズ最初の数作品は「ウェブカメラの前で自分の人生を語り出す」というすでにYouTubeで人気を得ていた他の作品のプロットを踏襲。さらに、全てのコメントに返信して総コメント数を増やしたり、サムネイル画像を思わずクリックしてしまうような魅力あるものに変更したりして再生回数を伸ばし、Lonelygirl15は「YouTubeで最も視聴されている作品」の常連になるほど人気を得ることになりました。


プロジェクト開始当初、シリーズは6カ月で終了させて、その続きとなるインディーズ映画を制作して公開する予定だったそうですが、YouTubeが爆発的な人気を得てユーザー数を伸ばしたことで、Lonelygirl15の人気は不動のものとなり、当初の予定を変更してLonelygirl15は打ち切られることなく続けられることになります。このころの人気は、例えばムービーをアップロードして約2時間で5~10万回の再生回数をたたき出すほどでした。

しかし、Lonelygirl15がファンを得れば得るほど、Lonelygirl15に反対する、いわゆるアンチの数もどんどんと増加していき、ついにはブリーさんやダニエルさんが本当に実在するのか、Lonelygirl15は16歳の女の子が本当にアップロードしているムービーなのか、調査を始めるユーザーが出てきました。

アンチだけでなくLonelygirl15のファンたちもが調査を開始し、Lonelygirl15の公式サイトがシリーズ1本目となるムービーの公開前に設立されていたことや、MySpaceのブリーさんのページが他人によって運営されていることが判明。さらには、ファンによって調査結果が新聞紙のLA Timesに送られ、Lonelygirl15の疑惑はLA Timesの一面を飾るニュースになりました。

このときまで、「ブリーさんを演じているのが誰なのか?」かは暴かれておらず、ブリーさんを演じたローズさんは「いつ自分の存在がばれてしまうのか毎日おびえていて、ファンの人たちが調査を進めれば進めるほど怖くなっていきました。なぜ怖くなったのかと言うと、私たちがウソをついていたと誤解されてファンの人たちを怒らせたくなかったからです。私たちはコンテンツとして楽しんで欲しかっただけで、ウソはついていません。ユーザーの人から『Lonelygirl15はフィクションですか?』と聞かれたときも、一切答えませんでした」と話しています。

しかし、ついにローズさん自身のMySpaceやFacebookのアカウントが発見されてしまい、数々の証拠からブリーさんとローズさんが同一人物であるということがバレてしまいます。ついに来るところまで来てしまい、Lonelygirl15を率いたベケットさんは、すぐに記者会見を開き全てを明らかにしました。その結果、ブリーさんもといローズさんはファンから嫌われてしまうという事態にはならず、大きな注目を集めたことで新しいファンを獲得し、それまで以上の人気を得ることになります。

ただし、この一件を機にローズさんはLonelygirl15から身を引き、2016年現在は結婚してオーストリアで女優業を営みながら平穏な暮らしを送っています。「Lonelygirl15は何もかもが早すぎました。私は、あれだけの人気を得るにはまだ若かったし、準備ができていませんでした。また、YouTubeで女優をするという私にとっての最初の仕事が、その後も長く続けていく仕事になるとは思っていませんでした」と、Lonelygirl15をやめたときの心境を語っています。


Lonelygirl15はローズさんやダニエルさんが抜けた後もシリーズを続け、2016年現在においてもムービーがアップロードされています。ただし、ビデオブログという形式ではなく、日常世界をゲームの一部として取りこみユーザーがインタラクティブな体験をできる「代替現実ゲーム」という形式になっているとのこと。

ローズさんは、2016年現在でもファンの人から「YouTubeでローズさんのムービーを見たい!」とお願いされることがありますが、Instagramにアカウントを作るときでさえもLonelygirl15に出演していたことでさまざまな問題が発生したため、YouTubeにムービーを投稿することは二度とないとのことです。しかし、「私はブリーというキャラクターを演じるのが大好きだったし、今でも私のお気に入りのキャラクターです。今でもあの瞬間が恋しくなることもあります」と話しており、Lonelygirl15がローズさんの人生に多大なる影響を与えたことがよくわかります。

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