インタビュー

「コミュ障は治らなくても大丈夫」の著者・吉田尚記さんにインタビュー、どうすれば会話上手になれるのか?


ニッポン放送アナウンサーの吉田尚記さんは、かつてゲストに「日本一絡みづらい」とまで言われたことのあるアナウンサーでした。しかし、アナウンサーという仕事の都合上、他人とのコミュニケーションは避けて通れないもの。そこで試行錯誤の連続や周囲の人々との交流を重ねた結果、「コミュ障は治らない。でも、コミュニケーションのルールを覚えれば、会話上手にはなれる」という答えを導き出しました。

その「絡みづらい」と言われた時代とはどんなものだったのか、いかにして答えにたどり着いたのか、たどり着いた後はどうなったのかという姿を描いたコミックエッセイ「コミュ障は治らなくても大丈夫」が6月23日に発売されるということで、実際に吉田さんに会って、お話をうかがってきました。

コミュ障は治らなくても大丈夫 | 吉田尚記 | 株式会社KADOKAWA メディアファクトリー
http://mediafactory.jp/Form/Product/ProductDetail.aspx?pid=9784040683737

吉田さんの仕事場であるニッポン放送へ。


インタビュー開始直前まで忙しそうだった吉田さん。使用しているPCには落書きがいっぱい……のように見えますが、これはラジオのゲストだったAKB48の皆さんにサインを入れられたものであり、その結果、番組のリスナープレゼントとして放出することに。


コレです。


吉田尚記(以下、吉田):
今回、コミック化を担当してくださった水谷緑さんがぐいぐい取材してくださって、僕自身の中でも散漫だった内容を構成してくれました。前に出版した「なぜ、この人と話をすると楽になるのか」と重なる部分もありますが、マンガとして成立させるためのものを、いろいろと引き出してもらいました。

GIGAZINE(以下、G):
「コミュ障は治らなくて大丈夫」では、吉田さんが過去に経験した具体的なエピソードが重ねられていますね。

吉田:
これを読んでもらえば、「しゃべるのがうまいからアナウンサーになったわけではない」ということが伝わるのではないかと思います。

G:
しかし、ラジオやイベントで活躍している姿からはとてもそうは思えないですよね……。

吉田:
むしろ「コミュ障だからこそ」という面があると思います。イベントに出たり、ラジオに来てくださる方々の中にも、コミュ障だという方は結構いらっしゃる……というか、そういう人の方が多いぐらいです。そういう方と一緒になった時に、僕は「このやりとりはちょっと辛いんだな」とか、何を考えているのかがわかるというのは大きいです。もともとしゃべることに向いている人だと、気まずいとも思わないだろうし、言葉に詰まったことがないだろうから、その気持ちは分からないんだろうなと。できる人にはわからなくてもしょうがないですよ。でも、僕の場合はコミュニケーション能力に関してマイナスからスタートしているのでわかることができて、「じゃあ、楽にしましょう」ということができるんです。

G:
今回の本の企画はどこから始まったんですか?

吉田:
これは「なぜ、この人と話をすると楽になるのか」と一続きになっているので、前の本の企画まで遡りますと、「どうしてコミュニケーションはこんなに辛いんだろう」というところです。助けを求めて「しゃべり方の本」に手を伸ばすんですが、その中身は「そうじゃないんだよなー」ということばかり書かれていて、たとえば「自分に自信を持ってみる」と言われても、それができないから困ってるんだよ、と(笑)


それとは別に、仕事をしていく中で、コミュニケーションとは「とりあえず会話が続いて、気まずくならなければいいんだ」ということに気付きました。つまり、コミュニケーションの目的はコミュニケーションそのものだと。

G:
それを伝えるために、本にしたと。

吉田:
過去の自分に向けて、こういう本があればよかったな、という本ですね。一通りまとまったのだから、形にしようということでもありました。

G:
「自信を持とう」ってアドバイスはよく見かけるものですね。

吉田:
でも「それができないんだよ!」って話ですよね(一同笑) それは精神論だから、精神論抜きでやろうと。

G:
本書の中では、実際にコミュ障だという方を集めて会話をさせてみるというくだりがあり、とても頷かされました。

吉田:
「そうそう、こうなるよなー」って思いますよね。前の本でも書きましたが、前提として、僕はコミュニケーションとは会話のやりとりを続けるゲームであり、気まずくならなければ勝ちだと考えています。そして「1000本ノック」をこなしてきた結果、コミュニケーションの一手一手を解説できるようになったんです。


G:
コミュニケーションの手の解説。

吉田:
サッカーで「このパスがよかった、ここからラストパスにつながるんです」という解説がありますが、コミュニケーションで同じような解説をするのが得意になったんです。別の言い方をすれば「会話の盤面解説」ですね。これは面白そうだと、前の本の出版時に三省堂さんでイベントを開催したら、すごく盛り上がりました。

G:
面白そうですね。

吉田:
こぼれ話ですが、このイベントに来た人はこういう本を買う人だから基本はコミュ障の人たちですよね。ところが、後で聞いたところによれば、そのうち13人ぐらいがイベント後にグループで飲みに行ったというんです。

G:
えぇ、それはすごい。

吉田:
僕も「マジか!すげえ!」と驚きました。さらに、リスナーさんから、そのグループの他にも9人ぐらいのグループができてましたよという情報をもらいました。つまり、イベントに参加していた人のうち3分の2以上が、初対面だった人と飲みに行けるようなイベントができたと。これはよかったなと思いました。「~hontoで学ぶ~ 出版ライブ!! 吉田尚記の「コミュニケーション・コーチング」という同種のイベントは、内容を文字起こしして、音声も収録した電子書籍にもなりました。

ニッポン放送アナウンサー吉田尚記の1時間でわかる「コミュ障の会話術」【音声付】/吉田尚記/~hontoで学ぶ~実行委員会 - honto電子書籍ストア
http://honto.jp/ebook/pd_27582632.html

今回行ったものは水谷さんが冷静にレポートしてくれていて、とても面白かったです。

G:
レポート部分に吉田さんが手元に書いていた、会話の流れが分析するメモがちらっと映っていました(p133)が、あれを見て「あの会話、あそこでパスをしっかり受けなければいけなかった、ここは決めに行く場面だった」ということはあるなーと思い返しました。

吉田:
それを「まずいな」と思えるセンスがあるなら、具体的にわかっているということなので、きっと改善できるということです。でも、精神論で「自信がないからだ、もっと自信を持とう」だと無理なんです。僕の場合は、会話が生放送で流れているわけですから(笑) 最初のころは、本当に辛かったです。

G:
生放送を担当していると、しゃべりの回数もとても多くて経験値も桁違いではないかと思いますが、「まずい」というやりとりは今でもあるものですか?

吉田:
いやいや、よくありますよ。「あっ、これは失着だ。なんでこんなことを言ったんだろう」って。でも、出した言葉は引っ込められないですから……。僕は今「ミュ~コミプラス」という番組を週に4回やっていて、年間で200回ぐらい放送がありますが、失着のない放送は年に……うーん、10回ぐらいじゃないでしょうか。

G:
失着なしというのはそんなにも少ないものですか?

吉田:
失着、めちゃめちゃありますよ!イベントでも「我ながら、いい回し方ができた」と思うこともあれば、一方で「やっちゃったな」ということもあります。

G:
相手方からしても、吉田さんからいいパスが出たのにうまく決められなかったなーというのはありそうですが……。

吉田:
僕が気付いたときには、今度はうまく決められるように今度は丁寧にアシストを、と心懸けています。

G:
さすがですね。

吉田:
でも、すべてにリアルタイムで気付けるわけではないので、終わってから「相手の意図はこうだったんだな」と気付くこともあります。


G:
数をこなしたからこそ身についた技術、という感じでしょうか。

吉田:
僕の場合は「こなす」というより「こなさざるを得なかった」ですから(笑)、普通なら気がつかないことに、強制的に気付かされたんです。以前、日本サッカー協会会長をされていた川淵三郎さんが、「サッカーは体を接触させるプレーが多くて、すごく痛い。でも、痛いのを我慢しないと前に進めない」と仰っていたことがあるんですが、これはコミュニケーションも同じだと。

G:
ほうほう

吉田:
コミュニケーションがうまくなるために「努力しなくていい」とはまったく思わないけれど、世の中で言われている「努力」がまったく無駄な我慢だというケースはあります。自転車に乗るときに、転んで痛い思いをせずに乗れるようになる人は少ないと思いますが、それと同じで、転ぶことによる痛みは味わわなければいけない。でも、無駄に痛い思いをする必要もない。僕は100とか200とか痛い思いをして、その上でコミュニケーションをうまく行うために必要な努力というのは「2つだけ」だとわかったんです。

G:
吉田さんが自らを犠牲に、努力する2つのポイントを見つけ出してくれたと……。

吉田:
そうです(笑)。まず1つ目は「口火を切る勇気を持つ」です。相手に質問をしたり、話が途切れそうになった時に続ける勇気。これは自分が頑張らなければいけません。もちろん、相手がやってくれればすごく楽ですけれど、来なかったら自分から行かなければいけません。そしてもう1つは「ネガティブなことを言われても凹まないこと」。たとえ悪口を言われてもテンションを下げないことです。この2つができれば、あとは数をこなせばコミュニケーション上手になります。


G:
知らない人が相手でも、とりあえず「あの」と話しかけることですね。

吉田:
自分が相手のことを何か知っているなら、それをベースに聞けばいいですし、知らなくても、誰が相手でも聞けるような質問があれば、それをベースに広げていけばOKなんです。僕もインタビューに伺うことがありますが、そのときに著者さんに向けて「本にはこう書かれていて、このようにお考えになったんですね」と聞くのでは意味がなくて、「このようにお考えになるのは、何か事件があったんですか?」と聞くと「実はそれは」という話になったりします。

G:
確かにそうですね、話が広がります。

吉田:
こうしてすぐに通用するノウハウがあるわけなので、「回りくどいこととか精神論とか言うんじゃない!」と思っています(笑) 実際、このノウハウが生きた例として、「コミュ障は治らなくても大丈夫」の中に、ゲストとウミガメの話が出てきます(p88~)。ディレクターはそもそも「楽しい放送をしてね」とか「笑わせてよ」と言ってきます。

G:
「笑わせて」を実行するのは難しくないですか。

吉田:
確かに困りますけれど、ラジオを聞いている人の立場ってそういうことですもんね。かといって、具体的な指示なんてできるわけがないんです。ゲストについてのすべてを知らないと「ウミガメの話を引き出して」なんて指示は出せませんから。だから、僕は「その時間が楽しければいいんだ」と思って話を重ねていたんですが、そうすると偶然出てきたのがあのお話で、それこそ、本人すら忘れていたわけです。「ああ、こういうことか」と具体的な気付きがありましたね。


G:
そのときは「このエピソードを引きだそう」ではなく「楽しくやろう」と。

吉田:
そうです。そのおかげで、プラスアルファで意味のあるエピソードもボコボコと出てきたわけです。そりゃ、楽しくやっていた方がしゃべってもらえますもん(笑) 人によっては「怒らせろ」という人もいますが、僕は絶対にイヤです。「その方が本音を引き出せる」なんて、どうかな?って。

G:
コミュニケーションゲームで、気まずさと一緒に戦う仲間ですもんね。しかしこの本はコミュニケーションの話でありつつ、吉田尚記を知るための本としてもよくできていますよね。冒頭部分、わずか1ページでニッポン放送入社までの吉田さんがまとめられていて。

吉田:
これは水谷さんさすがだなと思いました。1ページのためにあれだけの話を聞いてくださって、しかもこうして見事にまとまっている。

G:
幼稚園のころからPCに触れていたという、衝撃のスタートでしたね……。

吉田:
コモドールのマックスマシーンというPCでした。1982年発売だから、幼稚園ではなくて小学校1年生だったかも……。

G:
いやー、今の時代の小学1年生ならPCに触ることも珍しくないかもしれませんが、30年以上前ですからね。これは、マックスマシーンが家にあったということですか?

吉田:
うちが「新しい物好き」だったんですよ。それこそ、ファミコンより前のカセットビジョンとかの時代だったんですが、うちのオヤジが「今からはPCの時代だ、ゲーム機じゃない」と思ったらしく、このマックスマシーンを買ってきたんです。ただ、PCの形はしているけれど、ほとんどゲームしかできないんですけれどね(笑) でも、子どもだからもう、どっぷりですよ。

G:
「PCを触っていた」というよりも「触っていたゲーム機が実はPCだった」と。

吉田:
まさにそんな感じです。

G:
もし触っているのがファミコンだったら、何かが変わっていたかもしれませんね。

吉田:
そうですね、どうなっていただろう……。ファミコンが小学校2年ぐらいの時だったかな、当然すごく欲しいんですけれど、「ファミコンでは将来の仕事の役には立たない」ということで、代わりにMSXを買われてしまうという。

G:
なんということ……。

吉田:
当時、同じように「ファミコンの代わりにMSXを買われてしまう子ども」というのが10人いれば1人か2人はいたはずなんです。僕は12人クラスでしたが、僕のほかにムトウ君もMSXを持っていました。ペーパープログラムを入力してテープに録音できた……というのは今の子に言ってもまったくわかってもらえないんですが(笑)、そのテープを交換したりしていました。そこからこのギークさは来ているのかもしれない。

G:
みんながファミコンの話題で盛り上がる中でMSXの話をしていると、ちょっと浮いてしまいそう。

吉田:
なんだかんだでファミコンを買ってもらったのはその2年後ぐらいですね。でも、このMSXの件については最近面白いことを耳にして、「子どもの頃、ファミコンが欲しかったのに買ってもらったのはMSXだった」というエピソードを持っているIT企業の社長が一杯いるというんです。

G:
ああー……ファミコンの代わりに触っていたのがMSXだったというのは、人生観に影響を与えそうですもんね。

吉田:
ほんと、あると思います。だって、うちには10歳の娘がいるんですが、プログラミング教室に通わせ始めちゃいましたから。

G:
えっ、早くないですか?

吉田:
放っておくと1日中YouTube見てますし、PCを渡すとその前から離れないので、それならPCでどういうことができるのか分かった方がいいかなと思って、通わせてみたんです。今はプログラミング言語もその教育課程も進化していて、ウェブ上でブロックみたいなものを組み立てていくだけでJavaScriptが書けたりするんです。

G:
同年代のお子さんも通っているような教室ですか?

吉田:
ちょいちょいいますね。うちの子はチャットアプリ作ってます。

G:
早くもアプリ開発者に!?

吉田:
テキストに合わせて作っているだけですけれど、できるものですね。本人がそのことをわかってくれればいいなと思います。かつて天才と呼ばれた高校生が今は起業していて、その彼と話をしたときに「PCは生産の道具だけれど、スマートフォンは消費の道具だ」と言われて……。


G:
ああー、それは納得です。

吉田:
「スマホでプログラミング」は、できなくはないけれど不自然ですよね。原稿を書くにしても、PCで書くもので、スマホで書くことはあまりないじゃないですか。

G:
全部スマホでやれと言われたら泣きそうです。

吉田:
ですよね。つまり、スマホでできてPCでできることはないと。だから、娘には連絡用にガラケーを持たせようと思ってますが、あとはPCだけ与えて、スマホは与えないでおこうかなと思っています。これ、たぶんMSXの時の感覚ですね。

G:
新たな教育方針ですね。

吉田ルーム 益子プロデューサー:
それが奥さんのツイートの一件にも関係しているんじゃないですか。

G:
ツイートというと?

吉田:
うちの娘が、国語で「対義語」を書く宿題が出たときに、「現実」の反対のところに「二次元」と書いていたという話がありまして……。そこは「理想」だろ、と(笑) 回り回って、村上隆さんのFacebookにまで載ったという(笑)


奥様である吉田めぐみさんのツイートがコレ。


G:
そこは「二次元」でも○あげたいですね。

吉田:
そちらが正しいんじゃないかという気すらしますね。

G:
教育のたまものでしょうか……。

吉田:
教育はしてないです。単に、好きなだけ読めるマンガが山のようにあるだけです(笑) あ、そういえば娘の話から水谷さんにつながりますね。娘が読んでいたマンガがすごく面白くて、その作者が水谷さんだったんです。

G:
おお-、そこから繋がりが。

吉田:
娘は僕に違わずマンガ好きに育ちまして、本人はどこまで本気かはわからないですが「将来は医者かお笑い芸人になりたい」と言っています。テレビはアニメとバラエティばかり、そういえば全然ドラマは見てないな……。見ているのが下ネタでも止めはしないし、「教えるかどうかは俺が判断するが、自分で調べる分には好きにすればいい」というスタンスを取っています。その中で特に「おそ松さん」がものすごく好きみたいです。「おそ松さん」ってアニメだけれど、「アニメキャラが出演するバラエティ番組」ですよね、シリーズ構成の松原秀さんがバラエティの作家さんですし。……ちょっと戻って、その娘が研修医のマンガを読んでいたんです。僕も読んでみると、これがマンガファンとして「これは面白い!」と断言できるものだったんですよ。

G:
ほうほう。

吉田:
これが、KADOKAWAの山﨑さんという編集の方からコミックエッセイのお話を頂いて「それは面白いな」と思っていたところだったので、漫画家さんのリストをいただいたときに「水谷さんってどうでしょうか?」と僕から名前を出したんです。

G:
タイミングよく話が来たと。

吉田:
そうするとちょうど水谷さんと編集部さんとの間に繋がりがあって、オファーをかけてみたら水谷さんもやる気があるということだったので、話が進んでいったという形です。水谷さん自身も面白い方ですよ。すごくコミュ障な方で、本にも載ってますが、丸亀製麺のエピソード(p125)は僕、大好きです。

益子:
コミュ障ではあるけれど、そこらのビジネスマンよりもすごい行動力でした。これだと決めたら取材の時にも「これいいですか?」とグイグイ来る方でした。スイッチが入っちゃうんでしょうね。

吉田:
水谷さんを取材するのもきっと面白いと思いますけれど、すごくお忙しい方だし、何より、取材する側ではあっても、自分が取材を受けたりするのは嫌がりそうだなと思います。

G:
なるほど、そういう方なんですね。

吉田:
面白いですよ、この本の目的は孤独死を防ぐこと、とか作品中(p125)でも言ってますもん。

G:
コミュ障が抱える問題として、友人を増やせないというのもあるかもしれませんが、「出会い」ができないというのもありますね。

吉田:
「よくモテる人」「友達の多い人」っていますよね。なぜ友達になれるのか、異性に好かれるのかを語る本はありますが、どれもびっくりするぐらい嘘くさい!

G:
ウソっぽいと思うのはどのあたりですか?

吉田:
「本音で話し合ったら友達」とか、「本音って?そのためにはどうすればいいの?」って思いませんか。知り合いと友達をどう分ければいいかというのは、今回の本でもちょっと考えていて……僕は、わざわざ「俺たち、友達だよな」って確認し合うのはすごくイヤなんです。

G:
イヤですねえ……。

吉田:
「もうやめて」って思いますよ。コミュニケーションゲームでその時間の会話が終わらないようにしていると、その中に努力しなくても終わらない人がいるんです。やがて、「この人とはしゃべらなくても大丈夫だな」となってきます。こうなれば友達だと思うんです。だから、「知り合い」から一足飛びに「友達」になることはできません。この「一足飛びはできない」というのは真実だと思うんですが、誰も言いませんね。彼氏や彼女も同じで、まずは知り合いになって、そこから仲が深まっていってなるんじゃないでしょうか。最初に戻ると、よくモテる人・友達の多い人というのは、まず「知り合い」の数が多いんです。


G:
ああー。

吉田:
知り合いのうちどれだけ友達になるかというのは人によると思いますが、「知り合いが1人」という人と「知り合いが100人」という人なら、どちらの友達が多いか、恋人のいる確率が高いかは自明です。コミュ障の壁を乗り越えて話しかけさえすれば、まず知り合いの数は絶対に増えます。すると、友達や恋人ができる確率もそれだけ上がっていきます。そういうことなんだと思いますよ。

G:
なるほど。確かに、知らない人からいきなり「お友達になって下さい」と言われても、ちょっと困りますよね。

吉田:
うーん、きっつい……。

(一同笑)

G:
いきなりパーソナルスペースに入られた感じがありますね。

吉田:
そういう時にまずは拒否感が出ますよね。「この人、そういうこと言う人なんだ」って……。たまに、肩を叩いて「なっ?」みたいな人はいて、その人に悪気がないのは分かるけれど、「ちょっと濃いなぁ……」というのはありますね。

G:
その人とお近づきになりたいなら嬉しいですけれど。

吉田:
だから、「特定の人とお近づきになりたい!」と視野を狭くするのではなく、まずは知り合いを増やしていけば、その先に進める人も増えてくるはずです。

G:
結局、友達作りにしても恋人作りにしても「数打ちゃ当たる」に近いのでしょうか。

吉田:
いやー、もう「数打ちゃ当たる」ですよ。それこそ、結婚とかどうしてこの人と結婚したのかわからないですもん。

G:
それは、吉田さんもですか?

吉田:
うーん、そうですね。たぶん、多くの人がそう思っているんじゃないでしょうか。理由なんてないですよね。最近仲良くしている人の中に、石川善樹さんという予防医学研究者がいるんですが、この人と話をしていたら「結婚は絶対にできない人がいる。いい人がいたら結婚しようという人は結婚できない。結婚というのは、まず『結婚しよう』と決めて、次に『この人でいいや』だ」と言われました。「すべての結婚とは『でいいや』なんだ」と。これは「わかる~」と思いました。

G:
えっ、吉田さんも「でいいや」の人だったんですか?

吉田:
「結婚してみたかった」ですね。

G:
!?(笑) 「ここで結婚しておこうかな」と?

吉田:
やったことのないことをやってみたかったんです(笑)。20代から30代の男性にありがちなのが、付き合っている彼女がいて「私と別れる気はあるの?」「いや、別れる気は全然ない」「じゃあ、結婚する気はあるの?」「うーん、してもしなくても一緒でしょ?」と。だから、結婚する必要はないんだけれど……というのが多いと思うんです。そこで、うちの嫁さんは「じゃあ、結婚したことはある?」と聞いてきたんです。なるほど、確かに結婚したことはない。だから結婚しました。


G:
背中を押されたんですね。

吉田:
うちの嫁さんは僕の操縦法がよくわかっているなと思います。自分自身でもそこまでうまく操縦できませんよ(笑)

G:
「妥協」というと言葉が悪いかもしれませんが、そういうものなんでしょうか?

吉田:
やっぱり「妥協」ですよ。いや、妥協というと違うのかな……でも、あのとき妥協していなかったら、今のかけがえのない一瞬は生まれていなかったということになりますから。

G:
娘さんにプログラミングをさせられるのも、その産物ですもんね。

吉田:
そういうことです。だからといって「かけがえのないものがある、世界って素晴らしい」みたいな気持ちの悪いことをいうつもりもないですけれど(笑)

G:
「結婚サイコー!」でもない(笑)

吉田:
それはもう、してもしなくてもどちらでもよいと思います。したことのない人はする意味はわからないだろうし、しなかったからといっていけないわけではないですから。

G:
「結婚は墓場だ」みたいなことを言う人も多いですが……。

吉田:
そうですねー……みそ汁を飲んだことがない人に、「みそ汁ってしょっぱいんでしょ?」と聞かれたら「うん、確かにしょっぱいよ」とは答えられますが、実際にはしょっぱい以外にもいろいろな要素があって、でもそれは言葉を並べてもしょうがないから一度飲んでもらうのが手っ取り早い、という感じでしょうか。「とりあえず、飲め!」と。

G:
みそ汁はそこにあるものを飲めばよいんですが、結婚は「するぞ」でできないのが難しいですね。

吉田:
でもきっと、知り合いが増えていくと、その中に現れますよ。……実は、この本の後半に「会話の技術 実践編」が載ってますけれど、もう1つ「合コン編」があったんですよ。

G:
なんと!!

吉田:
実際に会うところまではやってみたんですが、うまくいかなかったんです。まず質問ができなくて、感想で終わってしまっていたり、ちょっと年上の女性側が、コミュニケーションだということを織り込み済みでちょっとキツめの質問をしたら、男性側がそれをもろに受けて凹んじゃったり……。「そこ!その2つだよ!!」というポイントで引っかかってしまって。

G:
掲載されている実践編でも、男性に対してラストぎりぎりまでイライラしていたと水谷さんが描いておられました(p137)。

吉田:
そのことは僕も下描きを見て初めて知りました(笑) 僕は特に腹は立たなかったですけれど、でもあの面白さが最後の最後まで出てこなかったんですよ。改めて、自分のイメージは自分が決めるものじゃないんだなと思いました。

G:
他の人が見たら「それって面白いよ!」ということでも、本人が気付いていないということは多々ありますね。

吉田:
もう、いっぱいあります、ラジオをやっていてもよくあるんです。先日はラジオのゲストにAKB48の方々が来ていたんですが、その中に向井地美音という子がいたんです。話を聞いてみると、めちゃくちゃAKB48のオタクで、AKB48に入って一番嬉しかったことは「今までは自分で頑張ってコピーしていた振り付けを、本物の振り付け師の先生に教えてもらえること」と。

G:
そこかー!(笑) 本の中に出てきますが、まさに「人はエピソード集」ですね。……この他にも、本書はこれまで「コミュニケーションゲーム」が辛かった人の助けになる本だと思うので、ぜひ気になる人は読んでもらえればと思います。本日はありがとうございました。

ということで、吉田さんの「コミュ障は治らなくても大丈夫」はコミックエッセイ劇場にて第1話~第3話と最新話の合計4話を読むことが可能。第1話が「コミュ障がアナウンサーになった」、第2話が「話し相手の気持ちを汲み取れない」、第3話が「アイドルインタビューとつまらないやつ認定」という、とても心に刺さる内容です。

コミュ障は治らなくても大丈夫|吉田尚記|コミックエッセイ劇場
http://www.comic-essay.com/episode/80

単行本、およびKindle版はともに6月23日発売。価格は共通で1080円です。

コミュ障は治らなくても大丈夫 コミックエッセイでわかるマイナスからの会話力 | 水谷緑, 吉田 尚記 | 本 | Amazon.co.jp

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in インタビュー, Posted by logc_nt

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