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1300年前の文書を近世に作られた本の装丁から発見、文字の解読にも成功


ヨーロッパで16世紀ごろに作られた本の背表紙やカバーの内側に、補強用の紙として中世に書かれた写本が使われているのが発見されました。最新のX線分析技術を使った研究により、古書を裁断せずに写本に記された文字を読むことに成功しています。

X-Rays Expose a Hidden Medieval Library | medievalbooks
https://medievalbooks.nl/2015/12/18/x-rays-expose-a-hidden-medieval-library/

X-rays reveal 1,300-year-old writings inside later bookbindings | Books | The Guardian
https://www.theguardian.com/books/2016/jun/04/x-rays-reveal-medieval-manuscripts

近世の古書の装丁に中世の写本が使われていることは、これまでにも装丁が破損している古書の研究により判明していました。


しかし、写本の大部分は装丁の内側に隠れているので、古書を一見した限りでは写本全体を見ることはできません。また、装丁がキレイに残っている古書の場合、装丁の内側を見るには本を裁断しなければならず、貴重な古書を傷つけることになります。


そこでオランダの科学者と学者たちのグループは、マクロ蛍光X線分析(macro x-ray fluorescence spectrometry、MA-XRF)を使うことで、本を裁断することなく内側に隠れた写本を解読することを試みました。研究ではオランダ・デルフト工科大学のJoris Dik教授のチームが開発した専用のX線分析機器を使い、古書を傷つけることなく内側をスキャン。


16世紀に作られた古書の背表紙の内側に文字が重なって隠れているのが見つかりました。さらにインクの組成分析を行い、鉄、銅、亜鉛の割合から、背表紙の内側にあるのは中世の写本の断片であると判明。つまり、中世に書かれた写本は後の世でリサイクルされていて、新しく本の装丁を分厚く丈夫にするために、裁断した写本を何重にも重ねて貼り合わせていたということです。


マクロ蛍光X線分析で見つかったのは、15世紀に書かれたと見られる写本や、8世紀のイングランドの聖職者・キリスト教聖職者のベーダ・ヴェネラビリス(ビード)が残した文書の抜粋を含む12世紀の写本などで、合計5冊の古書から発見されています。研究者は、マクロ蛍光X線分析で得られたデータから、のりで貼り付けられた3枚のページを別々のデータに分けて、文字を正確に読むことにも成功しています。


オランダ・ライデン大学で中世の本について研究している歴史家のErik Kwakkel博士は、「今回の発見は、埋蔵物と同じような貴重な発見です。非常にわくわくしています」と語っています。Kwakkel博士によれば、見つかった写本の大部分は14世紀から15世紀にかけて書かれたものでしたが、中には9世紀以前のカロリング朝時代のものも見つかっているとのこと。発見された写本の中でも最も重要なのは、非常に古い聖書の写本だそうです。

また、今回の研究で使われた古書と同時代のものが、大英図書館やオックスフォード大学ボドレー図書館などに何千冊も収蔵されています。したがって、今回の発見を皮切りに、過去の歴史をひもとくための新事実が見つかる可能性が高いとのこと。研究はオランダ王立芸術科学アカデミーの若手アカデミーの補助金を受けて、今後も続けられる予定です。しかし、1回の分析に24時間以上も時間がかかるのが問題で、より速い解析技術が求められています。

マクロ蛍光X線分析に似た解析技術は他にも存在しています。例えばイタリアのヴェスヴィオ火山が2000年前に噴火した際の火山灰から見つかったパピルスの巻物は、以下の写真の通り黒く燃え尽きていましたが、2015年にX線技術を使って巻物の形を崩すことなく内側の文字を解読することに成功しました。しかしDik博士は、「パピルスに比べると、中世の本に使われている羊皮紙ははるかに分厚く、光を通しにくいものです」と語り、パピルスの解析技術を古書を分析に使うのは難しいようです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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