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バスケットボールの理想的なシュート条件は解明済み、NBAや強豪大学では理想のシュート練習マシン「Noah」が導入されている

By slgckgc

科学やテクノロジーの進化によって、あらゆるスポーツでアスリートのトレーニング方法が激変しています。バスケットボールに関して言えば、研究によってシュートが成功しやすい「理想的なシュート条件」がすでに判明しており、そのシュートをコンスタントに打つための専用トレーニングマシン「Noah(ノア)」が開発され、NBAを始めアメリカの大学リーグの強豪校で導入されています。

This Machine Knows Shooting Better Than Steph Curry - Bloomberg
http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-06-08/this-robot-knows-shooting-better-than-steph-curry

材料科学の元・教授でベンチャーキャピタリストだったアラン・マーティ氏は2001年に、当時、中学生だった娘にバスケットボールを教えるために、理想のシュートを探っていました。マーティ氏はカリフォルニア州のシリコンバレー在住だったこともあり、ロボット工学やロケット工学の専門家に助けを求めた結果、バスケットボールにおける理想的なシュート条件を探求するプロジェクト「Noah」がスタートしました。

当初、シュートを分析するためのセンサーはバスケットコート内のスピーカーに取り付けられましたが、直線でのみ正確に作動し左右の動きに対する精度が低いことなど、問題点だらけだったとのこと。しかし、スタンフォード大学関係者からNoahプロジェクトを聞きつけたダラス・マーベリックスのチーム関係者は、「マシンが完成したらすぐに買いたい」と申し出たそうです。さらに、マイアミ・ヒートは試作段階のユニットのために2004年に2万ドル(当時のレートで約220万円)を支払っています。これは、当時ヒートのセンターだったシャキール・オニールのあまりにも下手くそなフリースローを矯正するためだったと考えられています。


その後、Noahマシンは、リング(リム)の上13フィート(約4メートル)の場所に取り付けたKinectセンサーにより、1秒間に30回以上もバスケットボールをスキャンすることで、すべてのシュートの情報を収集するものに進化しました。

研究者がNBA、WNBA、大学、高校などのプロ・アマチュアを問わずにあらゆるレベルのプレイヤーのシュートを徹底的に分析したところ、リングへのボールの進入角度に大きな特徴が見つかったとのこと。リングへの進入角度は「45度」が最もゴールの確率が高く、それ以下でもそれ以上でもシュート成功率は低くなることが判明したそうです。


さらに分析を重ねた結果、ボールの中心がリングの縁から11インチ(約28センチメートル)の場所を通過する場合にシュート成功率が高まることも判明。リングの中央である縁から9インチ(約23センチメートル)よりも少しだけ奥を狙う方が良いシュートということが分かりました。


なお、正確に言うとシュートの角度・リングの縁からの距離はシュートを打つポイントによっても微妙に異なることが分かっています。


ちなみに、2年連続NBAのMVPを獲得したステファン・カリーの2014年シーズンのシュートの進入角度の平均値は「46度」。これは、身長188センチメートルとNBAプレーヤーの中では小柄なカリーが大男たちの頭上を越えるシュートを放つ必要があることから45度をわずかに上回っていると考えられています。


しかし、基本的には「45度の角度で入るように、リング中央よりも少し奥を狙う」というのが最も成功率の高い「理想のシュート」であるのがNoahプロジェクトの結論だとのこと。とはいえ、理想のシュートの条件が分かったところで、それがどんなシュートなのかを体感することは非常に難しいものです。そこで、Noahプロジェクトから誕生したのが、自分のシュート情報を即座に教えてくれるマシン「Noah」です。

Noahがどんなマシンなのかは、以下のムービーを見ればよく分かります。

What is Noah Basketball? - YouTube


バスケットボールの理想のシュート進入角度は「45度」であることが研究で分かっています。


コートでプレイヤーがシュートを打つと、即座に「45度」という音声が流れました。


次のシュートでは「46度」


コートサイドの壁に取り付けられた黒い箱のようなマシンがNoah。Noahは、コートで放たれたシュートをスキャンして、即座に進入角度などを割り出して音声でアナウンスする機械です。


Noahの情報を手がかりに理想のシュートとの隔たりを理解することで、プレイヤーは体の使い方を微修正することができ、トレーニングでこの修正を繰り返すことで、理想のシュートを体に覚え込ませることが可能というわけです。


さらに、研究ではリングの縁から11インチ(約28センチメートル)の場所をボールが通過するときにシュート成功率が最も高いことも分かっています。


Noahはリングの縁からどれくらいの場所をボールが通過したかを判定することも可能。角度とともに、ボールを落とす位置についても練習で体感することができます。


専用アプリですべてのシュートのログ情報を保存可能なので、自分のシュートのクセを知り、理想のシュートに近づけるためのメニューを考えるのにも役立てられます。


Noahを製造するNoah Basketballによると、理想的なシュートを放つプレイヤーは、高校生では10%未満。大学生では50%、NBAでも85%とのこと。


Noahを使えば、理想的なシュートを身につけられるため、大学の強豪校やNBAチームですでに導入されています。


理想のシュートトレーニングマシンNoahは、本体価格が4599ドル(約49万円)で、アプリのデータ解析プログラムが月額100ドル(約1万700円)で提供されています。

Noah Basketball Shooting System | Basketball Technology
http://www.noahbasketball.com/products?utm_referrer=http%3A%2F%2Fwww.noahbasketball.com%2F

なお、NBAにおける3ポイントシュートの割合は、年々上がっていることがデータから分かっています。史上最高のスモールフォワードと言われるラリー・バードの3ポイントシュートのシーズンベストが「98」だったのに対して、カリーは2015年-16年シーズンで「402」という驚異的な記録を出しています。正確なシュート技術の習得に果たす、科学・テクノロジーの貢献度は大きいと言えそうです。

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in ハードウェア,   動画, Posted by darkhorse_log

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