健康管理デバイスFitbitの計測データを「不正確」とする研究結果が公表、Fitbitは研究結果こそが「不正確」と反論

日常のありとあらゆる健康に関するデータを管理できるリストバンド型アクティビティトラッカーの「Fitbit」は、2016年1月にユーザーから「計測された心拍数データは不正確であり、宣伝文句とかけ離れている」として集団訴訟を起こされました。その集団訴訟を起こしたユーザーたちの弁護団により依頼を受けたカリフォルニア州工科大学の研究チームが、Fitbitに搭載されているPurePulseで計測される心拍数データを「かなり不正確」とする研究結果を公表し、Fitbitが反論する事態になっています。

Validation Study Final.DOCX - Fitbit_Validation_Study.pdf
(PDF)http://www.lieffcabraser.com/pdf/Fitbit_Validation_Study.pdf

公開された研究報告書によると、研究チームは22人の成人男性と21人の成人女性からなる合計43人の被験者を集め、集団訴訟で問題となっている「Fitbit Charge HR」と「Fitbit Surge」という2つの製品を両腕に1つずつ装着してもらい、これらのデータと比較するために「正確に心拍数を計測できる機器」として医療用の心電計に接続した心拍数計測システムである「BioHarness」でも心拍数を計測しています。研究では、これらを装着した状態で「立ち通し」「ジョギング」「トレッドミル」「階段昇降」などのアクティビティを各5分間行ってもらい、デバイスから収集されたデータを比較・分析しました。

実験の結果、Fitbit Charge HRとFitbit Surgeは鼓動回数に毎分最高20回の誤差が出ることが判明したとのこと。また、運動中にデータを測定できなかった、つまりPurePulseが正常に動作していなかったことがありました。実験では、Fitbit Surgeの方がFitbit Charge HRよりもデータの食い違いが大きかったとされています。研究員は「PurePulseが計測したユーザーの心拍数は不正確です。特に高負荷の運動を行っていた際にはデータの不正確さが顕著に出ました。このことから、Fitbit Charge HRとFitbit Surgeは、ユーザーにとって有意義な心拍数データを提供するのに使用できません」と結論づけています。

By Julien Doclot

弁護団の1人であるジョナサン・サルビン氏は、「私たちはFitbitが医療用デバイスだと主張しているわけではなく、これは今回のこととは関係がありません。今回の訴訟はFitbitのマーケティング方法や、心拍数を計測できるデバイスとして両製品の価格が他のものより高く設定されているにも関わらず、有意義な計測データをユーザーに提供していないことに対して起こしたものです」と述べています。

Fitbit Charge HRとFitbit Surgeが測定する心拍数データが不正確とする今回の研究に対して、Fitbitは研究結果が不正確とする声明を公開。声明では「原告の弁護団が『研究』と呼んでいるものは偏見が含まれており、事実無根であり、弊社から賠償金を引き出すための試みにすぎません。研究結果は科学的に不正確で、欠陥のある実験方法が用いられています。研究は当社に対して訴訟を起こした弁護団が費用を支払っており、実験で用いられた心拍数計測システムは医療向けでなく消費者向けの製品です。付け加えると、実験で用いられた心拍数計測システムが正確な心拍数データを計測できるという証拠はありません」と反論しています。

Fitbitによると、PurePulseの技術はFitbit製品が市場に登場する3年前から研究チームが厳格な調査を行い開発したものであり、製品比較調査で知られるConsumer Reportsが集団訴訟の後に独自調査を行ったところ、Fitbit Charge HRとFitbit Surgeの両製品に対して「優れた製品」と評価したとのことです。

ボールステイト大学臨床実習生理学科の准教授であり、以前にFitbitを含めたウェアラブル製品のテストを行ったことがあるアレックス・モントーヤ氏は「さまざまなアクティビティに対してFitbitは適切なデータを計測していますが、Fitbitがトラッキングできるとしているアクティビティは、完璧に計測するには難しいと思われます。また、Fitbitの製品ページでは『計測』ではなく、『トラッキング』という単語が使われています。ユーザーはFitbitを医療レベルのデバイスとは考えるべきではありません。Fitbitも製品を『医療用』とは一言も説明していません」と話しています。