取材

豚肉禁止のみにあらず、食器の使い分けや調理時間帯まで徹底した「ムスリムフレンドリー」な社員食堂がヤンマー本社で始まったので行ってみました


イスラム教において豚肉を食べることは禁じられており、日本で生活を送るイスラム教徒はアイスやマーガリンにも豚由来の成分が入っていていることがあるため、食事に困ることもあります。総合産業機械メーカーのヤンマーは、2016年3月からムスリムフレンドリー対応を開始しており、本社食堂でかなり徹底したムスリムフレンドリーメニューを提供するほか、祈祷室も会社内に作ってしまったということで、実際に行って見てきました。

ヤンマー
https://www.yanmar.com/jp/

ヤンマー本社があるのは阪急梅田駅のすぐ前。GUやユニクロなどが入っているビルです。


正面玄関から入ってみると……


中はこんな感じ。サラサラと水が流れ、ホテルのようなラグジュアリーな空間が突然現れてびっくりします。


エレベーターで12階まで上がると、ヤンマーの社食「Premium Marche CAFE」に到着。入り口は黒と木目で統一されていてモダンです。


扉の前にはメニューボード。左側のボードには「桜鯛の幽庵焼き 自家製だし巻き」を中心としたPREMAR SET(800円)のほか、銀鮭のバター醤油ソテー(350円)、親子丼(390円)、温玉冷やし担々麺(460円)などが書かれており……


右側にはムスリムフレンドリーのセット(600円)の献立が書かれていました。


食堂内はお店と言われても違和感がないほどに、むちゃくちゃカフェっぽい雰囲気。


テーブル席や……


ソファー席


心置きなくぼっち飯できそうな席もありました。


なお、食堂のメニューにはヤンマーの農機具を使っている農家提供の野菜が使われており、特にPREMAR SETにはふんだんに野菜が使われているそうです。


ちゃんと生産者の写真も飾られていました。


サラダバー


そして、通常の食事を提供するカウンターとは別に……


ムスリムフレンドリーメニュー専用のカウンターがあります。


「ムスリムフレンドリーメニューは食材・調味料・食器において全て専用のものを使用しているので、一般の調味料は使用しないでください」、という注意書きを発見。「ムスリムフレンドリー」と聞いた時は「豚肉を使わないメニューということ?」と思っていましたが、ヤンマー食堂のムスリムフレンドリーメニューでは豚肉・アルコールをメニューに含まないのはもちろんのこと、鍋やボウルといった調理器具・食器類の使用や洗浄、保管も一般メニューとは分けており、さらにイスラム教徒の社員が豚を使った油の飛びはねなどが気にならないよう、調理時間帯も一般メニューとはずらすという徹底ぶり。


ということで、これが取材した日のムスリムフレンドリーメニュー。メニューは季節ごとに16種類が日替わりで提供されるとのことです。


メインは牛肉のエスニックビビンバ。中東っぽいメニューなのかと思いきや、韓国料理ベースで、ぱっと見た感じはムスリムっぽい雰囲気はありません。


食器の洗浄がムスリムフレンドリーメニュー/一般メニューで分かれているので、間違えないようトレーには以下のようなメモが載っていました。


イスラム教の中で豚肉食が禁じられていることは有名ですが、そのほか、決まった方法(ハラール)によって屠畜されていない牛・鶏・羊などや、ポークエキス、動物性のショートニング、ゼラチンなども禁止なので、お皿に載っているものは全てハラール認証の食品だそうです。


キャベツとササミのナンプラー炒めや……


機能性野菜である紅法師のサラダ


ドレッシングも動物油やアルコールが一切使われていない特別仕様です。


ニンジンとコーンのスープに使われているだしもハラール認証の牛からとられており、豚肉などは一切含まれません。


実際にビビンバを食べてみたところ、牛肉は甘辛く味付けされていて、味は薄くも濃くもなくちょうどいい具合。ベースはビビンバなのですが、ほうれん草やもやしのナムルがクミンで香りづけされていて、イスラム教徒の人でなくともエスニック料理が好きな人なら好んでムシャムシャ食べてしまいそうです。Premium Marche CAFEは健康をコンセプトとしていますが、味も伴わなければ意味がないということで、ムスリムフレンドリーメニューも外のお店で食べるような完成度になっていました。


サラダに使われている紅法師はヤンマーシンビオシスで水耕栽培されたもの。ほんのり茎がピンク色の水菜・紅法師は目の健康や肝機能を維持するアントシアニンを通常の水菜の10倍以上含んでいるそうです。


キャベツとササミのナンプラー炒めはさっぱりとした味付けでした。


ヤンマーの社食にムスリムフレンドリーメニューが生まれたのは、社員でありイスラム教徒のイブラギモブ ショハルフベック(IBRAGIMOV Shohruhbek)さんがアイデアを出したのが発端。ヤンマーの本社は2014年11月に新しくなり、食堂も一新したのですが、ショハルフベックさんが食堂を訪れたところ食べられるものがあまりないということに気づいたそうです。通常であれば人は昼食を「食べたいもの」という判断で選びますが、ショハルフベックさんの場合は「食べられるもの」を選ばなければならないという状態だったため、毎日の選択肢が「サケ・サバ・サケ・サバ……」の繰り返しで、それもない時は慌ただしく外食することもしばしば。


ショハルフベックさんが「お弁当を用意してもらえれば……」ぐらいの気持ちで総務部に相談したところ、社員以外にもイスラム教徒の来客があった時に対応ができるように、ということで、ムスリムフレンドリーメニューの開発が始まったそうです。そして「ムスリムとはなんぞや?」というミーティングから開始し、最終的にはお弁当やレトルトではない、その場で調理したムスリムフレンドリーメニューの提供までたどり着いたとのこと。本社ともうひとつのビルのオフィスを合わせたヤンマー社員の数が約1200人なのに対し、現在のムスリム社員の数は4人なので、「正直ここまでやってもらえるとは思っていなかった」とショハルフベックさんは語りました。


ただし、ムスリムフレンドリーメニューは他の社員からも人気なので完売して食べられなかったことが過去2回ほどあったそうです。


食べ終わったら食器を返却しますが……


ムスリムフレンドリーメニューは別の棚に返却するシステムです。


さらに、食堂を抜け、通路を歩いていくと……


「PRAYER ROOM(祈祷室)」の文字。


さらに奥に進むと……


以前は休憩室として使用されていたスペースが礼拝専用の部屋として用意されています。


マットはこんな感じ。


ソファには帽子とコンパスが用意されていて……


ブラインドを下げれば人の目を気にする必要がないので、礼拝に集中することが可能です。


祈祷室から食堂に戻ってくると、中心に吹き抜けを発見。


何やら「梅田ミツバチプロジェクト」という札が立っています。


よく見ると、テレビで見る養蜂家のような巣箱が並んでおり……


箱の下には蜂の巣がどっさり。梅田のど真ん中にあるビルとは思えない光景です。


なお、食堂の真ん中にある扉から出ると……


真っ赤な階段がありました。


天井はガラス張りで自然採光が取り入れられています。


そして下を見ると、真っ赤ならせん階段。ヤンマーが世界で初めて小型化に成功したディーゼルエンジンにちなんで、熱を持ったシリンダー内部をイメージして作られたとのこと。階段にそってガラス張りの部屋が並んでいるので、階段を使って移動すれば社内の様子が把握できるようになっている仕組みだそうです。

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in 取材,   試食,   , Posted by logq_fa