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完璧なチームはどうやって生み出されるのか?

By Keith Allison

Google内部で行われているプロジェクトの「Project Aristotle」では、完璧なチームを作るための方法を調査しています。2016年の時点で同プロジェクトを先導しているのはジュリア・ロゾフスキさんで、彼女が完璧なチームを作り上げるために必要なことを明かしています。

What Google Learned From Its Quest to Build the Perfect Team - The New York Times
http://www.nytimes.com/2016/02/28/magazine/what-google-learned-from-its-quest-to-build-the-perfect-team.html


◆「共同作業は生産性を高める」という研究結果
2016年1月、経営学誌「ハーバード・ビジネス・レビュー」に「マネージャーや従業員が共同作業する時間は、過去20年で2倍以上に増加。多くの企業で、従業員の4分の3が1日の大半を同僚とのコミュニケーションに費やしている」という研究結果が掲載されました。「グループ作業が生産性を高め、ミスを減らすことに繋がる」ということは、シリコンバレーでは現場レベルで導入されていて、多くのIT企業でソフトウェアエンジニアの共同作業を推奨しています。また、他の研究では「チームで働くことがより良い結果を生み、より高い仕事に対する満足度を生み出すことにつながる」ということも示されています。

大小さまざまな企業と同様に、政府機関や学校レベルであっても、チームは組織構成の基本単位となります。もしも企業がライバル企業よりも高い成果を望むなら、個人レベルの仕事だけでなく、「従業員がどうやって同僚たちと働いているのか」まで目を配る必要があります。

By woodleywonderworks

◆Googleの取り組み「Project Aristotle」
ここ10年間で、Googleは何百万ドルもの資金を従業員の生活面を改善するために投入しており、5年前からは組織内に完璧なチームを作るための取り組みをスタートしています。Googleの人事部門ではどのくらいの頻度で同僚と食事を共にしているのかから、マネージャーにとって最良の役割分担とは何かまで詳細に調査しています。これはGoogleのトップが「最良のチームを作り上げることは、最高の人材を組み合わせることを意味する」と信じているからだそうです。そこでGoogleが取り入れたのが、「内向的な人はまとめた方が良い」「メンバーが仕事から離れても友達である方がチームはより有能になる」といった考え方でした。

しかし、実際にこういった考え方が合っているのかを研究した人はそれまでいなかったそうで、Googleは2012年から「Project Aristotle」というコードネームの調査プロジェクトをスタート。これは、Googleで働くチームが「何でつまずき」「何が理由で急成長したのか」を調査するためのプロジェクトです。プロジェクトリーダーを務めたアヴィール・ダービー氏は、調査のためにGoogle内から統計の専門家や心理学者、社会学者、エンジニアなどを集めました。この中に、イェール大学を卒業してGoogleに入社したジュリア・ロゾフスキさんの姿がありました。

By jacinta lluch valero

◆「やりたいこと」がわからない
多くの人がそうであるように、ロゾフスキさんも25歳のころは自分がやりたいことが何であるかがわからずにいました。

初めに入社したのはコンサルティング会社でしたが合わず、ハーバード大学の研究者に転身。ところが研究職は、仕事内容は面白かったものの孤独な仕事で、「誰かと一緒にコミュニティを形成したかった」というロゾフスキさんには向かない職でした。彼女は可能性を求めて、インターネット関連企業で働いたり、博士号を取得したりしましたが、合う仕事に出会うことができませんでした。

◆イェール大学マネジメントスクールで得た経験
2009年、ロゾフスキさんはイェール大学のマネジメントスクールに通い始めました。スクールでは、学校が組んだタイトなスケジュールで研究グループに参加します。これは、グループに課題に取り組むことで集団力学を操れる人材を作り出そうという目的としたもので、経営学修士(MBA)取得のための通過儀礼のようなプログラムでした。

ロゾフスキさんは授業中や食事の時間に、同じグループの生徒と課題に取り組みました。このときのメンバーは、みんな頭が良くて好奇心が強く、「同じような大学に通って、同じような企業で働いた経験がある」という共通点がありましたが、チームワークは円滑になるどころか、ぎくしゃくした関係だったそうです。メンバーが顔を合わせると、自分が何とかしてリーダーに立とうとしてみたり、お互いのアイデアを酷評し合ったりで、当時のことをロゾフスキさんは「誰もが声を張り上げたり、相手よりも多く喋ることで、チーム内で権威を示そうとしていました。私はといえば、彼らの前で誤りを犯さないようにと慎重に振る舞っていました」と語っています。

新たにロゾフスキさんが所属することになったグループは、いろんな業種を経験してきた人ばかりが集まって共通点は少なかったのですが、ミーティングではジョークが飛び交うなど和やかな雰囲気で、各人がそれぞれの提案を自由に行えるような、非常に良いチームを作ることができたそうです。この新グループは最終的にコンペで大きな成果を挙げました。当時、自分が所属した2つのグループでこれほどまでにチームワークに差が出た理由がわからなかったロゾフスキさんですが、やがて「人の習慣や傾向に関する研究」を行いたいのだということに気付くことになります。

By Steven S.

「Project Aristotle」では過去の研究データなども参考にしながら、「最高のチームは似た関心事を持つ人々により構成されるのか?」あるいは「どういった種類の報酬がモチベーションを高めることにつながるのか?」について調査を始めます。調査では「チームメイトがどのくらいの頻度でオフィス外で交流しているか?」「同じ趣味を持っているか?」「学歴に類似点はあるか?」「すべてのチームメートが優れている方が良いのか?それとも全員がシャイな方が良いのか?」などについて調べられ、どのチームが目標を超える成果を挙げたのかなどを追い続けました。さらには、チームでの労働時間や性別のバランスなどがチームの成功に及ぼす影響力までも調べ上げた模様。

しかし、どれほど多くのデータをまとめあげても、チームの構成がどのような違いを生み出したのかをはっきりさせることはできず、最良のチームメイトを見つける方法はわからないままでした。ダービー氏は「我々は180ものチームを追い続け、多くのデータを得ましたが、特定の性格タイプやスキル、バックグラウンドが違いを生み出しているということはありませんでした」と語っています。

◆チームを成功に導く「集団規範」
調査結果で、「最良のチーム」と判断されたものの1つは、会社の外でも交流のある「友達」が集まって形成されたチームでした。一方で、全くの他人同士が組んで良い成績を収めたチームもありました。チームの中には強力なリーダーシップのあるリーダーを求めるものもあれば、階層的なチーム構造を嫌うチームもありました。「何がチームを成功に導いたのか?」を明らかにするため、ロゾフスキさんと同僚たちが着目したのが「集団規範」でした。

「規範」は行動や判断の基準となる模範・手本のこと。チームによって意見の不一致を回避することが優先されることもあれば、異なる意見が出てくることを歓迎するチームもあります。こうした、チーム内のメンバーで共有される行動・判断の基準が「集団規範」です。この「集団規範」は非常に重要なもので、チームメンバーがそれぞれの仕事に対して異なるスタンスや傾向を持っていようと、一度チームが集まればその個々人の傾向よりも集団規範は優先されるもので、それによりチームに対する尊重が生まれます。

Project Aristotleが「集団規範」に関するデータを集めたところ、「リーダーが会話の順番を決めて、メンバーが孤立しないようにしたことで、全員が順番を守りチーム作業に参加しやすくなった」「メンバーの誕生日を祝ったり、ミーティング前に雑談をして週末の予定を立てたりした」という意見が上がりました。チームによって「集団規範」の中身は様々ですが、メンバーを理解して適切な規範を設けることがチーム改善の鍵になる、というのがProject Aristotleの出した結論です。現在、プロジェクトの主任であるロゾフスキさんは「どういった集団規範が重要なのか?」を解明しようとしています。

By Alessandro Prada

チームAは、スマートな成功者により構成されたチームです。ミーティング中、メンバーの中の専門家たちは皆がわかるように詳細を説明します。 誰かがコメントを行う際にも、話し手は議題がそれないように会議を進めます。 このチームは非常に効率的で、アイドルに関するおしゃべりや長い討論はしません。また、会議は予定通り進められ、メンバー全員が時間になれば自分のデスクに戻って仕事を再開できます。

対するチームBは、幹部や中間管理職、専門家など異なる階級のメンバーがそろったチームです。 チームメンバーは仕事の話題とそれ以外のプライベートな話題を繰り返し、チームメンバーが急に話題を変更すれば、残りのメンバーは新しい話題に沿って会話を続けます。 メンバーはゴシップの話やプライベートな会話も行うので会議は予定時間をオーバーすることも間々あります。

このような2つのチームがある場合、 どちらのチームがより優れたチームなのでしょうか?2008年にカーネギーメロン大学とMITの心理学者たちによる研究チームが行った研究では、チーム単位で与えられた課題についてスコアを出したところ、最もスコアが高くなったのは「チームメンバーがそれぞれが本当に望んだアイデアを犠牲にした時」だったそうです。このとき、1つの課題を成功させたグループはその他の課題もすべてうまくこなすことができましたが、1つの課題でつまづいたチームは、その他でもつまづく傾向がありました。この結果から、研究チームは「良いチーム」と「悪いチーム」の区別はチームメンバーがお互いをどのように扱うかであると結論づけました。言い換えれば、集団規範こそがグループの集合的知性を向上させることにつながることがわかったわけです。しかし、成功したチームの規範はそれぞれで、リーダーが強いリーダーシップを発揮するチームからメンバーが平等にそれぞれの役割をこなすチームまでさまざまだったとのこと。

By Atos

しかし、さまざまなチームの中で、成功したチームで見られる2つの共通点が明らかになりました。その共通点の1つは「メンバーがほぼ均等に話をしている」という点。これは課題によってリーダーシップを取る人が変わるということにつながり、集団的知性が誰かしらの方向に傾くことも防いでいます。共通点のもう1つは「高い『平均社会的感受性』を持っていた」ということ。これは声色や身振り手振りから、相手がどのように感じているのかを察する力で、これらが、心理的に安心できる環境を生み出す助けとなり、他人の話を聞く余裕などにつながっていたようです。

これらの結果から、チームAとチームBのいずれかに参加する機会があるならば、チームBに参加するのが得策であるとGoogleの研究者たちは結論づけています。チームAは個人個人の仕事の効率を最適化することができていますが、集団規範は無駄な会話を禁止しており、自由に発言する機会が少なく、個人個人のもつ情報を共有する機会がないという欠点を持ち合わせています。対して、チームBでは自由に発言することができるので、メンバーそれぞれの力をチームの目的に注ぎ込むことが可能となるようです。

他にも、Googleの中で成果を挙げたチームに共通する「5つの鍵」が以下の記事でまとめられています。

成功したGoogleのチームに備わっている5つのカギとは? - GIGAZINE

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in メモ, Posted by logu_ii