メモ

フレキシブルな働き方をすると病気になる

by Alessandro Valli

テクノロジーの進化によってPC1台あればいつでもどこでも仕事ができる、という職業も増えてきました。しかし、時間に捕らわれない「フレキシブルな働き方」は裏を返せば「常に仕事体勢である」ということと同義で、労働者に精神的な重荷を課すことに加え、ストレスホルモンの分泌を増やして健康上の被害も考えられるとして専門家らが警告しています。

Work-life balance: flexible working can make you ill, experts say | Money | The Guardian
http://www.theguardian.com/money/2016/jan/02/work-life-balance-flexible-working-can-make-you-ill-experts-say

仕事だけでなく、家庭や地域においても多様な生き方が実現できるという「ワーク・ライフ・バランス」の考え方は、しばし話題になります。日本だけでなく、イギリス政府や企業もワーク・ライフ・バランスを実現するため在宅勤務やテレワーキング、パートタイム契約など、フレキシブルな働き方を推進していますが、企業内カウンセラーであるベッドフォードシャー大学のGail Kinman教授は「これらの考え方が進むにつれ、懸念は大きくなっています」と語りました。

「ずっと仕事をし続けて仕事の心配をしていると、体のシステムが基準値にまで戻らないので、適切に回復しないのです」とKinman教授。「睡眠を取っても『適切に』は眠れていないという状態になり、免疫系の力が弱まります」とのことで、フレキシブルな働き方をすることによって、人がいつまでも「オン」の状態になってしまうことを警告しました。家で仕事を行う場合には、運動や料理など趣味を行うこと、あるいはお酒を飲むことが「リラックスモード」に入る即効性のある方法としてオススメされています。

また、Royal College of PsychiatristsのSimon Wessely教授は「理由は判明していませんが、仕事中の心理状況は心臓病と関係があるということが分かっています」と語っており、重大な病気を引き起こす可能性も指摘されています。

テクノロジーの進化によってフレキシブルな働き方が可能になり、かつ「より速く」「よりハードに」仕事が強いられるようになった点も大きな問題です。「フレキシブルな働き方を」と主張する団体は多くありますが、「フレキシブルな働き方」は雇用者に選択肢が与えられている時のみ、うまく機能するということを覚えておく必要があります。

by Cyndy

近年、勤務の平均時間は減ってきていますが、一方で共働き夫婦の割合は増加し、家事や家庭内の仕事が山積みになっているという人も少なくありません。国家統計局の調べによると、イギリスで働く人の半数は仕事と楽しみのバランスに満足していますが、4分の1以上の人々は満足していないと答えたとのこと。さらに、2015年、100人に1.4人の人が「仕事がらみのストレス・不安・うつ病」を理由に休暇を取ったそうです。

また、そもそも「安定した職を得られにくくなっている」というのも、ワーク・ライフ・バランスの大きな問題の1つ。適切な仕事につけず、人がソーシャルネットワークから外れて孤立してしまう現在のあり方をなんとかする必要があるわけです。

◆「ワーク・ライフ・バランスの」が単なるスローガンで終わっていない会社とは?

by kylesteed

オランダ発の広告会社・Heldergroenは「よりよいワーク・ライフ・バランス」を実行している会社の1つ。オフィスは小さめですが、エントランスには大きなダイニングテーブル、キッチンにエスプレッソマシンが設置してあります。仕事用のデスクは収納式になっており、広々としたスペースを作ってランチタイムを行ったり、ヨガのクラスを開いたり、イベントを行えるようになっているとのこと。

また「オフィスが開放的」というだけでなく、残業は一切なし。広告担当は2週間の休暇を取ることが可能で、CEOのSander Veenendaal氏は従業員の要求に対してまず「そうだね」という肯定的な言葉から交渉を始めるそうです。さらに、「よりよい働き方」を追求するためにスタッフは就業時間外は仕事のメールをチェックすることさえ禁じられているという徹底ぶり。

Veenendaal氏はIT企業によく見られる「新しい働き方」に反対している人物で、「みんながどこでも仕事ができる、なんてことは信じていません。特に広告に関しては、人が集まることで仕事が進みます。そしてそれは非常にストレスのたまることです」と語っています。

by Ben Raynal

Veenendaal氏は大学を中退して会社を立ち上げ、会社を成功させるため熱心に働きました。当然ながらストレスはたまる一方で、ある日、友人が「夏休みの3週間と冬休みの2週間は会社をクローズして、週に2~3日は夜に自由時間を作れば」とアドバイスしたそうです。もちろんVeenendaal氏は提案に対し「無理だよ」と返したのですが、友人に勧められる形で最終的には休暇を実行しました。

この時のアドバイスが現在のHeldergroenにも残っており、仕事を「朝9時~夕方6時まで」とする日を決めることで、Veenendaal氏は子どもたちと過ごす時間を作っています。

時間を制限することで、スタッフは仕事に集中し、気晴らしとしてゲームをしたりメールをする時間を減らせるとのこと。一方で、「昇進したい」というスタッフは勤務時間を増やすことができますが、その場合、「君が物事を達成できると思っている」というような言葉がかけられ、「仕事を楽しんでいるか」という確認が取られるそうです。

「従業員の勤務時間を増やせば収益が増えると思いますか?」という質問にVeenendaal氏は「はい」と答えていますが、一方で「でもそれに意味がありますか?私はないと思います。そのことによって『できなくなること』を考える必要があるのです。勤務時間を増やせば私はより成功できますが、家で子どもとたちと過ごせなくなります。それは私にとって大きな損失です」と語っています。

by Kevin Shorter

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in メモ, Posted by logq_fa