取材

自転車好きにはたまらないシンガポールのシマノサイクリングワールドに行ってみた


ペダルを回してどこまでも駆け抜けてしまえば、嫌なことだって忘れてすっきり。そういうことってないですか。日本にも空前の自転車ブームが到来。そんな自転車好きがときめくこと間違いなしの施設がシンガポールにありました。

こんにちは、バックパッカーからチャリダーに復帰した自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。よく「昔から自転車が好きだったんですか」と聞かれるのですが、「旅がしたい」が先にあって選んだ移動手段ですから、そうでもありません。それでも、毎日のように生活を共にすれば愛着もわきます。詳しくもなります。だからこそ、シンガポールのシマノサイクリングワールドには心弾みました。

◆シンガポール・スポーツ・ハブ
ナショナルスタジアム、多目的体育館、水中競技施設からショッピングモールまであるシンガポールのスポーツ複合施設「シンガポール・スポーツ・ハブ」という場所の一角にシマノサイクリングワールドはあります。MRT(地下鉄)でもアクセスできるのですが、預けていた折りたたみ自転車を回収したこともあって、久しぶりのポタリングついでに立ち寄りました。

シンガポールのシマノサイクリングワールドはここ


2014年に完成した開閉式のドームを持つナショナルスタジアム


スポーツ施設だけあって、駐輪場も完備しています。


ちょうどテニスの大会が開かれていて、それに因んだ催しも行われていました。


ツーリストインフォメーションの入り口にあったセグウェイを彷彿させる乗物


ショッピングモールにあったクライミングウォールに熱中する人たち


◆シマノサイクリングワールド
シマノという会社を知らなくても、日本で自転車に乗ったことがあるならどこかでお世話になっていることでしょう。100万円を越える高級ロードバイクから、ホームセンターに置いてあるママチャリにまで、自転車であれば何にでもまんべんなくパーツを供給しています。大阪府堺市に本社を置くシマノは世界トップ規模の自転車部品メーカー。また、釣り具メーカーとしても有名です。

そのシマノが、東南アジアにおける自転車文化の発展や、自社ブランド価値の向上を目指して、シンガポールに立ち上げたのが「シマノサイクリングワールド」という展示施設でした。2014年9月25日にオープンしたという、できて間もない施設です。自転車好きが集まる宿に宿泊していたこともあり、「こういった施設があるよ」と教えてもらいました。

SHIMANOのロゴを掲げた入口


入るとすぐに、たくさんホイールとチェーンが動作するオブジェが歓迎してくれます。


無機質ながらも芸術的なオブジェでした


シンガポールの「シマノサイクリングワールド」にあるチェーンやホイールがくるくる周るオブジェクト - YouTube


入口から近い場所は、暖かな雰囲気でくつろげるエリアとなっています。


ここにも自転車心をくすぐられる様々なグッズが置いてありました。

フレームとホイールを囲む工具類


ロードバイクにおける最上級グレード「デュラエース」のコンポーネントセットは、まばゆい光を放っています。


シマノではないですが、イギリスメーカー「ブルックス(BROOKS)」の革サドルが展示されていました。使用するほどに革がお尻に馴染んで、自だけのサドルが出来上がることから、愛用者も多い有名なメーカーです。私も一時期ツーリングで使用していました。


唐突に日本を主張する兜飾りは、ヘルメットを中心に自転車用品を手掛けるオージーケーカブトさんの寄贈品。


液晶テレビに繋がれていたロードバイクは、テクノロジーの最先端といった雰囲気。


本棚には自転車に関するありとあらゆる本が置かれていました。子ども用の絵本まで自転車に関する内容です。


日本語の雑誌も発見


◆シマノの技術
シマノが運営するだけあって、自社製品のPRも忘れてはいません。入口から少し進んだところには、シマノが研究開発した成果の数々が動画とともに紹介されていました。

スタイリッシュでクールな展示スペース。


次のようなことが紹介されていて、自転車の発展に多大なる貢献を重ねるシマノの技術力を改めて実感。

こちらでは、マウンテンバイクにおける変速機構の変遷を紹介。


ひと昔前のマウンテンバイクに付いてたりするサムシフターという変速機。名前通り親指を使って操作します。


展示品は、シマノのMTBにおける最上級グレードXTRで、電動式のファイアーボルトシフターというものでした。実際の操作もできますが、左右片方のシフターだけで2万円近くする高級品なので、触れるのにすら緊張します。カチッ、カチッと即座に切り替わる変速は快感。


通常のシフターは手動でワイヤーを引っ張っているのですが、電動式ではワイヤーもなく全部自動化されています。現在の使用ギアが液晶に表示されるという近未来的な世界がありました。


同様に、ロードバイクにおける変速機構の変遷も紹介。ダウンチューブシフター(左)と最先端のデュアルコントロールレバー(右)の違いを体感できるようになっています。


右クランクと軸が一体となったホローテックIIの紹介もありました。一世代前は、四角テーパーやオクタリンクといったボトムブラケットとクランク軸が一体となった形式でしたが、ホローテック化されると剛性が増してペダルを回すときの力のロスも減ります。踏み込みの力がぐいぐいと前へ進む推進力に変わる感覚。ペダルを外すのではなく、クランクを抜くようになって、旅での輪行もやりやすくなりました。


XTRのクランクセット(FC-M9000)の断面図。軽量化のためにクランクの内部も空洞化されています。


SG-S700という型番の11スピード内蔵ハブの紹介です。内蔵ハブは軽量でメンテナスも必要ないことから、長期海外ツーリングで使う人もいるアイテムですが、この形式はドイツのローロフというメーカーが有名。シマノも作っているなんて知りませんでした。


内蔵ハブの変速も体感できるようになっています。


略称のSPDだけを覚えてしまったのですが、正確には「Shimano Pedaling Dynamics」という単語の頭文字を繋げた言葉なんですね。シューズにクリートという金具を取付けペダルと固定することで、力の伝達をスムーズなものへと変えてくれます。私は2010年から使っているのですが、今は自転車旅に欠かせないアイテムの一つです。


スティールリム(1353g)と最先端のカーボンリム(483g)の比較もできるようになっていました。石のように重いスティールと羽根のように軽いカーボン、870gの重量差は大きかったです。


◆自転車コレクション
施設内には、様々な種類の自転車が展示されていました。タンスの引出しを空けるように、自転車を引っ張りだして閲覧できるようになっています。天井にはカーテンのようなレールが敷かれていました。年代を感じさせるレアな自転車から、最先端の技術を積み込んだ最新式の自転車まであるので、好きな人ならきっと見入ってしまうでしょう。

自転車のイラストと説明


中はこのように、たくさんの自転車が吊るされていました。


ここには、このような自転車が収蔵されています。

Safty Bycycle


こちらは日本語で「安全型自転車」と呼ばれる自転車です。それまで一般的だったペニー・ファージングと呼ばれる巨大な前輪にペダルを取り付けた自転車は、どうしても重心が高くなり、転倒した際には大怪我をする恐れがありました。そうした欠点を克服すべく、安全型自転車は、2つのホイールを同じ大きさにし、チェーンを介し後輪を駆動するようにしています。1885年に販売されると大好評で一気に自転車の主流に。その形状は、現代の自転車に通じるものがありました。


3Rensho


こちらはフレームビルダーがハンドメイドで作り上げた日本製の自転車です。名前の由来は、競輪で予選、準決勝、決勝と3連勝(3Rensho)すると優勝できることから。今となっては手に入るのも貴重な珍しいメーカーの自転車です。空気力学を追求したというプロトタイプの展示品は、これまでに見たことのないフレームの形状でした。


Road Bycycle(Kenneth Tan)


こちらは、シンガポール出身のサイクリストKenneth Tan氏が、シマノのレーシングチームに在籍していた1989年~1990年にかけて使用していた自転車です。車体は一昔前の雰囲気。彼はシンガポールで最も結果を残したサイクリストで、東南アジア競技大会やアジア選手権で、いくつものメダルを獲得しています。


Giant(Denis Menchov)


イタリアの有名な自転車レース「ジロ・デ・イタリア」で、2009年に優勝したDenis Menchovが乗っていた車体も飾ってあります。2009年のジロ・デ・イタリアは92回目ながらも、初めての競技開催から100周年という記念すべき大会でした。車体のGiantは台湾で設立された世界屈指の自転車メーカーで、いわゆる今風のロードバイクです。


Cross Country Trail Bicycle


こちらは山道や林道といった悪路に対応したクロスカントリー用の自転車になります。前後サスペンションと前後ディスクブレーキという構成でした。


ここのコーナーの片隅に、ポスターにして持って帰りたいほどの、様々な自転車が載ったアートが飾ってありました。


ツーリングバイクを発見


カーゴを付けた自転車も便利そうです


このように、十分に見応えのある展示施設となっていました。これだけの内容がありながら、今のところ入場料は無料。自転車好きの方でしたら、絶対に楽しめる場所なので、機会がありましたら、ぜひ足を運んでみて下さい。自転車についての理解がよりいっそう深まる素敵な場所でした。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak
)

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in 取材,   乗り物,   動画, Posted by logc_nt

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