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パリ同時多発テロでも使われたアプリの開発者、「罪悪感を持つべきでない」とする一方でISのアカウントを停止

By xdbooking

2015年11月13日にフランスで発生し、少なくとも130人以上が死亡したと言われているパリ同時多発テロ事件では「イスラム国(IS)」が関与を主張する声明を発表しています。そんなISが組織内での通信や活動に用いていたとされる暗号メッセージアプリ「Telegram」の開発者であるパーヴェル・ドゥロフ(Pavel Durov)氏はかつて「罪悪感を感じるべきではない」とアプリがISによって使用されていることについて語っていましたが、パリ同時多発テロの発生後にはISに関連するアカウントを停止したことを発表しています。

Founder of app used by ISIS once said ‘We shouldn’t feel guilty.’ On Wednesday he banned their accounts. - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/news/morning-mix/wp/2015/11/19/founder-of-app-used-by-isis-once-said-we-shouldnt-feel-guilty-on-wednesday-he-banned-their-accounts/

ドゥロフ氏はTelegramを開発した人物である一方で、ロシア国内でFacebookと人気を二分するというSNS「VKontakte(VK)」を設立した人物でもあります。ドゥロフ氏の開発したTelegramは、送受信するメッセージの内容を暗号化して通信することで高い秘匿性を実現しているメッセージングアプリとなっているのですが、その秘匿性が結果的にISによって悪用され、パリ同時多発テロが発生したとする指摘があり、「アプリを禁止すべきだ」という意見すらも挙がっています。


そのような指摘が挙がる中でも、ドゥロフ氏はTelegramの存在に意味があるとしてアプリの削除には応じない方針を明らかにしています。事件が発生する前の2015年9月に行われたTechCrunchのイベントに登壇したドゥロフ氏は、「究極のところ、プライバシーと、私たちのプライバシーに関する権利は、テロのような恐ろしいことが起こる恐怖よりも重要なものだと考えます」とTelegramの存在意義を語っていました。

さらに、「ISに関して言えば、中東で戦争状態になっていることは明らかです。最終的にISは組織内でのコミュニケーションに用いる手法を見つけるでしょう。そして、安全が確保されないとみなした場合は、また次のツールを探すでしょう。私たちはアプリを開発していることに罪悪感を感じるべきではありません。私たちは、ユーザーのプライバシーを守るという正しいことを行っているのです」とTelegramを開発したことを後悔していない旨の発言を行っていました。その様子は以下のムービーの14分40秒あたりで見ることができます。

Pavel Durov of Telegram: WhatsApp Sucks - YouTube


暗号化メッセージングアプリの禁止を求める声についてドゥロフ氏はVKへの投稿で「禁止ワードの導入」を提案しつつ、Facebookの投稿では、イスラム過激派と同様にフランス政府内にいる「近視眼的な社会主義者」を事件の責任者として非難する声明を発表しています。ここでドゥロフ氏は事件の犠牲者に哀悼の念を示しつつ、事件を「フランス政府の政策と不注意さが招いた結果」と厳しく批判しています。

そんな厳しい批判を繰り広げていたドゥロフ氏でしたが、11月18日にはTelegramのサイトへの投稿(要アカウント)で「Telegramは、ISがTelegramのパブリックチャンネルを使ってプロパガンダを拡散していたことが判明して困惑しています。我々は、12か国語にわたって存在していたISに関係する78のチャンネルを停止しました」と発言し、自身のサービスの一部を停止する対応をとったことが明らかになった際には驚きの声が挙がったとのことです。


Telegramの機能は、大きく分けて「個人およびグループ間でのプライベートチャット」と、「チャンネル」と呼ばれる一般に公開されるフィードに分類されており、これはTwitterの「ダイレクトメッセージ」と「パブリックフィード」に類似するものとのこと。ドゥロフ氏が対応をとったのはこのチャンネルの機能となっています。

ドゥロフ氏と彼の兄弟であるニコライ氏が立ち上げたVKは、ロシア国内ではFacebookを上回るほどの人気を持つSNSとなっていますが、注目されるのはその「過激性」にもあるとのこと。ドゥロフ氏が打ち出す方針は政府の体制に反旗を翻すものが多く、VKはユーザーが著作権を持たないムービーやファイルのアップロードを許可していたことからアメリカ政府から激しい非難を受けたこともあったとのこと。また、第二次世界大戦の終結を祝うソビエト・ロシアの戦勝記念日について「67年前、スターリンはヒトラーからソビエト連邦の人民を圧政する権利を勝ち取った」と発言して物議をかもしていたこともありました。


さらにドゥロフ氏の過激な行動は「奇妙」と「独創的」のはざまをさまよっている感すらあるとのこと。紙幣を紙飛行機にして建物の窓から投げ、眼下の道路で奪い合う人々の様子を眺めたり、元NSA契約職員で国家の機密を流出させたことで時の人となったエドワード・スノーデン氏がロシア政府に匿われたことが判明した際には、同社での職をオファーしたりと、いずれも奇抜な行動を繰り返すことで人目を引いている状況があるようです。

Easy money: Russian Zuckerberg provokes crowd fight over $160 notes — RT News


また、2011年に行われたロシア議会の選挙の真偽性に疑問を投げかけるエントリーがVKに投稿された際に、政府から削除を求められたドゥロフ氏は、舌を出す犬の写真を「公式見解」としてTwitterに投稿したこともあります。この投稿が原因でサンクトペテルブルクにあるドゥロフ氏の自宅がSWATに包囲されたとのこと。後にSWATは撤収したのですが、この一件からドゥロフ氏は暗号化メッセージングアプリのようなツールの必要性を感じ取り、Telegramの開発へとつながったようです。

2013年には警察官の足を車で轢いた疑いで捜査の手が回り、ドゥロフ氏は否定したものの追求は収まらず政府からの圧力が高まります。その後、2014年にVKを利用していたウクライナ人反対派のデータ提出を求められた際にドゥロフ氏はついにギブアップし、所有していたVKの株式を売却して国外へ逃亡するに至ったとのこと。

2015年9月にリリースされたばかりというTelegramの「チャンネル」機能は、早くから「イスラム過激派の活動を助長する」として指摘の声が挙がっていました。9月29日に公表されたMiddle East Media Research Institute(MEMRI)の報告書では自爆テロ行為の温床となることが警告されているほか、イギリスの研究機関が「Twitterだと1000回アカウント停止されても、Telegramでは常にオンラインのままでいられる」とISの支援者が発言していることを指摘するなど、Telegramの危険性に疑問を投げかける声が続出していました。

そのような状況でTelegramはIS関連のチャンネル凍結を発表。しかしその声明では「今回の措置は、地域における発言の自由の制限に適応するものではありません。例えば、ある国で政府を批判することが違法である場合でも、Telegramは政府主導による検閲には関与しません。そのような行動は、設立者の意図に反するものです。今回はIS関連のアカウントをブロックする措置がとられましたが、Telegramは平和的な代替案が示される場合はブロックを行いません」とする姿勢を示しています。


今回のTelegramの措置を受け、かつてTelegramを利用していたISメンバーは「Telegramに対する戦争が始まった」と発言しており、怒り心頭といった様子を見せているとのことです。

Important. Major #IS user on @Telegram: "the war on Telegram has started". #IS accounts suspended. BIG policy shift. pic.twitter.com/qFY0ldi2xU

— Charlie Winter (@charliewinter)

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in メモ,   ソフトウェア, Posted by darkhorse_log

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