取材

「狩猟犬をGPSで追尾」「10分以下でイノシシ解体」など、熟練ハンターによるイノシシ狩り取材レポ


一部地域を除いて毎年11月15日から狩猟鳥獣の捕獲が認められる猟期が全国で始まります。猟期になると福井県の山でイノシシ狩りを行っているという熟練ハンターの集まりに参加する機会があったので、数十年間にわたって狩猟を続けて、多い時は1回の猟期中に70頭以上ものイノシシを仕留めたこともあるというプロのハンターが一体どのように狩猟をしているのか、猟期解禁日に丸一日密着してきました。

福井県のハンターの集まりは、わなフェスティバルが行われた大阪の「高槻国際射撃場」のオーナーであり、オリンピックのクレー射撃で監督として選手の指導を務めている人物でもある寺西 寛氏を中心としたもの。福井県の山のふもとに宿舎を構えており、毎年日本各地からハンターが集まってイノシシ狩りを行っているとのこと。また、寺西氏は狩猟に興味を持つ次の世代の育成を兼ねて学生や新米ハンターの見学も受け付けており、毎年宿舎には多くの人が訪れているとのことです。

◆ハンターの装備
狩猟解禁日の前日である11月14日に宿舎に到着すると、窓際では大量の無線機が充電されていました。イノシシ狩りは複数人で行うため、離れた場所にいる仲間との連携が重要になるわけです。無線を使う以前は「竹笛を吹いたら下山」といった合図を決めていたそうですが、近年では狩猟の装備もハイテク化が進行中で、無線が届かない距離は携帯電話で連絡をとっているとのこと。


さらに玄関口では謎の機器が大量に充電されていました。これはなんと狩猟犬に取り付ける「GPS付きの首輪」で、山で狩猟犬を放ってディスプレイで現在地を確認可能。ただし、狩猟犬が地下道まで行ってしまった時はGPSがうまく位置情報を送信できず、「海の上に犬がいる」と大騒ぎになったこともあったとか。


寺西氏が狩猟に出る際にいつも身につけている装備も見せてもらいました。ポーチの中には弾丸を入れるのかと思ったら、歩きながら食べる物を入れたりするそうです。


ナイフ類は腰の左側に位置するように取り付けられていました。


なお、取材に訪れた編集部員は狩猟免許を持っていますが、猟銃の所持許可は持っていないため、イノシシ狩りの同行は学生が見学に来る時と同じ流れで行うことになっています。ルールとしては「付いていくハンターの前に絶対出ないこと」「ハンターが停止したらすぐに自分も停止すること」を厳守するよう伝えられました。今回狩猟に出るハンターは寺西氏を含め2人で、どちらも70代という年齢ながら、見学の学生がついて来られないことがあるほどすさまじい体力の持ち主です。

◆箱わなにかかったうり坊を見に行ってきた
翌朝はあいにくの雨でしたが、箱わなにイノシシの子どもがかかったという情報が入ったため、狩猟に出る前に親イノシシが近くに来ていないか様子を見に行くことになりました。実際に箱わなにかかっている子イノシシの様子は以下のGoProムービーから見ることができます。

箱わなにかかった3匹のうり坊、親イノシシは来ているのか? - YouTube


というわけで、わなの設置場所を目指して山に入っていきます。狩猟の際は一目で人間とわかる明るい服を着るのが基本で、2人のハンターはどちらもオレンジ色のジャケットを着て山に入っていました。


宮城県で銃砲店を営んでおり、かれこれ20年以上も毎年福井県でイノシシ狩りに参加しているハンターの銃はこんな感じ。


しばらく山道を歩くと、わなの設置場所に到着。わなに近づく前にハンターが親イノシシを調べにいきましたが、この時は近くに来ている痕跡はなかったとのこと。うり坊は人間が近づくとわなの中を激しく走り回っていました。


◆GPS付きの猟犬によるイノシシ狩りはこんな感じ
イノシシ狩りには猟犬が必須とのことで、良い猟犬がいればそれだけイノシシの捕獲率も高まります。山に放った猟犬はイノシシを見つけるとほえ立てて動きを止めるよう訓練されており、犬がイノシシが逃げないように足止めしている間に人間が駆けつけて銃で仕留めるのがセオリーとのこと。

実際に猟犬を連れて山道を歩き回る様子はGoProで撮影した以下のムービーを見るとよく分かります。

GPSを付けた狩猟犬と共にイノシシを探して山を駆け回ってみた - YouTube


猟犬に取り付けるGPS付きの首輪はこんな感じで、発信器とアンテナを搭載しています。以下に写っているのは狩猟に出たことのない若い猟犬ですが、GPSによって見失うことなく山に慣れさせることができるわけです。


以下の2匹は長年狩猟に出ている経験豊かな猟犬。それぞれ異なる信号を発するGPS付きの首輪をつけています。


こっちが受信機で、設定したGPSの位置が地図上に表示されています。表示を切り替えれば、全てのGPSの方角や、現在地からの距離をメートルで一覧表示することも可能。しばらくGPSが動く様子を見せてもらいましたが、実際にGPSが現在地に近づくと、まさに受信機が表示する方向から猟犬が現われ、精度は高めな模様。


猟犬の位置を確認しながら、かなり険しい山道を突き進んでいきます。ハンターと猟犬は、もはや獣道すら見当たらないほどのただの斜面や道なき道をどんどん進んで行き、ついてこれない学生がいるというのも納得できるほど。


なお、どのような山道を歩いて行ったのかが3倍速でわかるムービーは以下から見ることができます。

イノシシ狩りでどれだけ険しい道を突き進むのかわかるGoProムービー - YouTube


山道を歩いていると、散弾の跡なのか、穴だらけになった切り株を発見。


山頂あたりで謎の水たまりにも遭遇しましたが、尋ねてみたところ、これは「ぬた場」と呼ばれるイノシシが泥を浴びて寄生虫などを落とすための場所でした。ただし、ハンターの目から見るとあまり使われていないため、近くにイノシシはいないそうです。結局この日は雨が続いていたせいか、今年はイノシシが山深くに潜んでいるためか、イノシシはおろか動物の痕跡もあまり見つからず。雨がかなり強くなったため、猟犬を回収して引き上げることになりました。


なお、帰路についている時も、ハンターは車から降りてたんぼ道をじっと見つめるなど、翌日以降の狩りに向けてイノシシの気配がないかどうかチェックしていました。一体どこを見ているのか全くわからなかったのですが……


以下のように、畑を荒らしに来たイノシシの足跡を見せてくれました。さらに土の固まり具合から「数日中のものではない」と判断するなど、長年狩猟で培った経験によって、足跡ひとつ見るだけでイノシシの動きが読んでいたことには驚き。


◆イノシシの解体
「狩りに絶対はない」と聞いていたものの、イノシシを発見できず残念に思っていたところ、寺西氏のハンター仲間から「イノシシを仕留めたので解体を手伝ってほしい」という連絡が入り、イノシシを受け取りにいくことになりました。

銃猟のハンターが仕留めたイノシシがコレ。大きいイノシシは200kg近くになることもありますが、今回捕獲されたイノシシは「フルコ」と呼ばれる生まれて2年目のイノシシで、食用にはフルコが最も適しているとのこと。


というわけで、捕獲後にまず行う「血抜き」はすでに済ませていたため、水場に持っていって内臓を抜く手順を見せてもらえることになりました。


なお、イノシシを解体して内臓が取り出されるまでを撮影したムービーは以下から見ることができます。グロテスクな映像なので苦手な人は閲覧注意です。

熟練のハンターがイノシシを解体して内臓を取り出しているところ - YouTube


ムービーは7分ほどに編集したものですが、実際に解体にかかった時間もわずか10分以下で、あっという間に処理が終了。あとは食肉として切り分けるだけの状態になりました。


解体しているとニオイをかぎつけたトンビが集まってきており、自然の中で息絶えた動物もこのように別の動物の食糧になっているのか……、と気付かされました。


内臓を抜いたイノシシは宿舎の庭にあるテントに吊るされ、仕留めたイノシシはまとめてさばかれるそうです。


というわけで、取材は1日のみの予定だったため今回は実際にイノシシを仕留める瞬間には立ち会うことができず。「狩猟は予定通りにいかない」という厳しさを知る結果になりましたが、猟期は3月15日まであります。1月~2月ごろになって福井県の山に雪が積もると、イノシシを追跡しやすくなるとのこと。次回は雪の中のイノシシ狩りに再挑戦するレポートを掲載する予定です。

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in 取材,   生き物,   動画, Posted by darkhorse_log

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