約850万円を最低年収として従業員全員に与えた会社にその後何が起こったのか?

by Kaje

「全従業員に最低年収7万ドル(約850万円)を保証する」と2015年4月に発表したアメリカ・シアトルのクレジットカード処理会社Gravity Paymentsは、発表と同時に一躍世間の注目を集めました。半年が経過して、最低年収の方針が会社にどのような変革をもたらしたのかを、CEOが自ら語っています。

Here's What Really Happened at That Company That Set a $70,000 Minimum Wage | Inc.com
http://www.inc.com/magazine/201511/paul-keegan/does-more-pay-mean-more-growth.html


クレジットカード処理会社Gravity PaymentsのCEOであるDan Price氏は、2004年に大学に通いながら兄のLucas Price氏と共同で会社を設立しました。Gravity Paymentsは設立から7年後の2011年には、従業員1人あたり平均で1年に3万5000ドル(当時のレートで約280万円)の給料を払うことができるほどの企業に成長したのですが、入社したばかりの従業員がPrice氏に対して「給料が低すぎてバカにされている気分だ」と主張したそうです。Price氏はリーマン・ショックの影響を考慮して市場の相場をもとに給与額を決定していると説明したのですが、従業員は「計算上は正しくとも現状の給料では最低限度の生活を送ることができない」と訴えかけたとのこと。Price氏は従業員に対して十分な待遇を与えていると自負していたため、この訴えは非常にショックなものだったそうです。

そこで、Price氏は3年間かけて会社の収益を見直し、2014年に給料を従業員全体の平均で20%アップすることに成功。2015年春には「120人の従業員全員に今後3年間、1年あたり最低7万ドルの給料を保証する」と発表しました。従業員の給料をアップさせるために、Price氏は自身の給与額を110万ドル(約1億3000万円)から7万ドルに引き下げ、従業員をクビにすることなく最低賃金を増やす計画で、70人の従業員が昇給し、そのうち30人の給料は倍以上に増やすことができたそうです。

by Tax Credits

この発表は世界中に衝撃をもたらし、SNSの共有数やニュース番組の動画再生数が合計5億回にも及ぶほどでした。Gravity Paymentsの従業員はPrice氏に対する不満が解消され、さらにGravity Paymentsに就職を希望する人々が続々と現れて、最低賃金の発表から1週間で4500通を超える履歴書が送られてきたそうです。

また、Price氏は「最低賃金7万ドル」の発表で自社の従業員の心をつかんだだけでなく、アメリカ各地で「従業員に支払う最低金額はどの程度にするべきか?」という討論会を開催。アメリカでは2000年から不況のあおりを受けて労働者の賃金が全く上がらないという状況が続いていましたが、Price氏が討論会を開催したことで専門的な知識が一般の人々にも浸透して、労働環境の改善に一役買ったとのこと。

一方で、アメリカのニュース放送局Fox NewsやTimes誌などは「Price氏がニュースやSNSを利用して自社の評判を広めた」として非難。また、Price氏の兄のLucas Price氏が、「CEOはこれまで自分の報酬を高額に設定していた」として裁判を起こしています。その結果、Price氏は持ち株を全て売り、年金貯金を空にして、2件の不動産を抵当に入れ、合計で300万ドル(約3億6000万円)の私財を会社に投じることになりました。

しかし、発表から半年経った後、Gravity Paymentsの収益と純利益は前年度の倍に増加していて、顧客をほとんど失うことなく順調に営業を続けています。Price氏は「最低賃金を実現するために自身の給与を大幅に下げましたが、会社の収益が増えれば元に戻すことができるでしょう」と前向きに語っています。

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