「ザ・ロック」と呼ばれた絶海の孤島で難攻不落の刑務所「アルカトラズ」から生きて脱獄したかもしれない3人の男

By Henrique Pinto

アメリカ・サンフランシスコ市から2.4kmに浮かぶ小さな島「アルカトラズ」は、1963年まで連邦刑務所として使用され、「ザ・ロック」として犯罪者に恐れられていました。過去、アルカトラズからの脱獄を試みた受刑者の数は36人で、そのすべてが脱獄前に身柄を拘束されるか、射殺されるか、海で溺死するかという道をたどったと考えられています。ジョン・アングリン、クラレンス・アングリン、フランク・モリスという3人の男もアルカトラズからの脱獄を試みた受刑者で、これまで彼らは溺死したと考えられていたのですが、最新のドキュメンタリー映像では彼ら3人がアルカトラズから脱獄して生き延びた唯一の生存者であるとしています。

Did three men actually survive the escape from Alcatraz? - Telegraph
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/northamerica/usa/11927025/Did-three-men-actually-survive-the-escape-from-Alcatraz.html

1979年公開のクリント・イーストウッド主演の映画「アルカトラズからの脱出」は、1962年にアングリン兄弟とフランク・モリスの3人により決行された脱獄を基としています。アングリン兄弟は強盗の罪でアルカトラズに収容され、フランク・モリスも10代後半に麻薬所持や強盗の罪で逮捕されたのちに、1960年にアルカトラズ連邦刑務所に護送されました。3人が脱獄を決行したのは1962年のことで、海に出た後は生存も死亡も確認されておらず、消息は不明とはなっていたものの、脱獄は失敗に終わって3人は溺死したと考えられていました。

以下の写真は刑務所内で撮影された顔写真を左からフランク・モリス、クラレンス、ジョンの順番に並べたもの。上段が若い頃の写真で、下段は年をとってからの3人の写真。

ジョン・アングリンは貧しい家庭の14人兄弟のひとりとして生まれ、1960年にアルカトラズに収容されました。当時のアルカトラズにはマフィアのボスであるアル・カポネやジェームズ・ジョセフ・バルジャーなど裏社会の大物が多数収容されていたのですが、ジョンはそういった囚人たちとは異なり、おもちゃの銃を使って決行した銀行強盗の罪でアルカトラズに護送されました。ジョンはアルカトラズの囚人になってから複数回にわたって脱獄を試みており、収容されて1年が経過してから、彼の兄弟であるクラレンスもアルカトラズに収容されます。

クラレンスはアルカトラズの中で、フランク・モリスと仲良くなり、3人は独房を掘り進め、アルカトラズ内で盗み出したレインコートを浮き輪代わりにして海を泳ぎ切る、という脱獄計画を練り上げます。脱獄時に看守の目を欺くため、3人は実際の髪の毛をつけた人形を作り、ベッドのシーツの中にこの人形を入れました。脱獄を決行したのは1962年の6月で、その後3人の姿を見た人はいません。

By Andrew Dupont

アングリン兄弟の母親は、息子のサインが入ったクリスマスカードを3年間受け取っていました(いつからいつまで受け取っていたのかは不明)。このカードの中には脱獄後に受け取ったカードが存在し、筆跡鑑定により本人のサインであることまでは証明されます。しかし、カードがいつ書かれたものかまでは証明することができず、脱獄して生き残った証拠としては扱われませんでした。そこで、アングリン家は2人の兄であるアルフレッド(アラバマ刑務所を脱獄しようとして処刑された2人の兄)のDNAと、アルカトラズから脱獄して溺死した人々の骨のDNAを鑑定してもらったそうです。DNA鑑定の結果、骨の中にアングリン兄弟のものは見つからなかったそうで、結局は消息不明なままとなっています。

アングリン兄弟と同じタイミングでアルカトラズに収容されていたギャングのジェームズ・ジョセフ・バルジャーは、兄弟に対して「脱獄した後は、全ての交友関係を断ち切らなければいけない」とレクチャーしていたそうで、この教えを守って2人が行方をくらました可能性も十分に考えられます。

フランク・モリスが脱獄用に独房に開けた穴。

また、2014年に行われた調査は、夜中の23時にイカダで海に出てアルカトラズから北に向けて漕ぎ出した場合、生きて脱獄に成功する可能性は十分にあるとしています。

さらに、アングリン兄弟の甥っ子にあたるケン・ワイドナーさんとデービッド・ワイドナーさんの2人は、自分たちの叔父が脱獄に成功して生き残り、1980年代までブラジルで暮らしていたと考えています。以下の写真ケンさんとデービッドさんがHistory Channelで公開した「アングリン兄弟が生き残った確固たる証拠」となる1枚の写真。これは1975年にブラジルで撮影されたものと思われており、左がクラレンス、右がジョンと考えられています。つまり、アングリン兄弟は脱獄に成功した後に、ブラジルに亡命していたというわけです。

新たに見つかったアングリン兄弟の写真が本物なのか偽物なのかは不明ですが、遺骨は見つかっておらず、2人が「死亡した」という証拠も何も見つかっていないので、その真相は謎のまま。もしも脱獄に成功していたとなれば、閉鎖してから50年以上が経過してから「一度も脱獄を許さなかった刑務所」としての名声が崩れ去ることになります。

なお、Telegraphでは記事内で「アルカトラズから脱走した3人は生きていると思う？」というアンケートを実施しており、67％が「生きていて、おそらくブラジルにいる」と回答しています。