取材

「リトルウィッチアカデミア」はアニメ現場っぽいと吉成曜監督&トリガー大塚社長が語る


10月9日(金)に公開された映画「リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード」について、吉成曜監督・トリガーの大塚雅彦社長がいろいろと語るイベントが「マチ★アソビ vol.15」の中で行われました。この中で、主人公のアッコたち魔女は実はアニメーターのことなのかもしれない、という事実が明かされました。

映画『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』公式サイト
http://littlewitchacademia.jp/

まずは眉山山頂にあるステージでトークイベントが行われました。


左から東宝の弭間友子プロデューサー、吉成曜監督、トリガーの大塚雅彦社長。吉成監督は「アニメミライ」のイベントで2年前に徳島に来た経験アリ。一方の大塚さんは、最近のマチ★アソビではおなじみです。


そもそも「リトルウィッチアカデミア」は文化庁の若手アニメーター育成プロジェクト「アニメミライ2013」の1作品として公開された作品です。トリガーは「キルラキル」を作るためにできた会社ですが、できたての会社ではアニメーターの育成が必要。そこで大塚さんが目を付けたのが、アニメーター育成を第一に掲げたプロジェクトである「アニメミライ」でした。大塚さんから打診を受けた吉成監督も、キルラキルに向けて人材を育てるという意味合いで、若手と作品を作ることを決意。トリガーのアニメミライ参加が決まりました。


そこで「リトルウィッチアカデミア」という魔女ものが作られたのはプロデューサーの提案で、「アニメーターがなぜアニメを作りたいか」という点はそのまま魔女に置き換えられるのではないか?という考えがあったそうです。吉成監督としては「アニメが好きというだけではアニメは作れない」という考えもあり、アッコのことを「アニメがよくわかっていないアニメーターみたいな部分がある」と表現していました。

「魔法仕掛けのパレード」に1作目から続けて出ているキャラクターはアッコ、ロッテ、スーシィ、ダイアナら。新人育成なので「絵として難しくないキャラクターであること、多少似ていなくてもそのキャラクターに見えること」というデザインがなされています。最近のアニメキャラクターは、造型がちょっと違うだけでそのキャラクターに見えなくなることがあるため、吉成監督は「まずは造型に気を遣わずに思い切って動かせることが大事」と考えたとのこと。


キャスティングについては、1作目のメインキャストは全員オーディションで選ばれています。その基準は絵に合うか、物語の要求する芝居に声が合うかというところで、「3人組」のバランスには気をつけ、その上で監督の意見を尊重して決めたとのこと。例えばスーシィの村瀬迪与さんは声を聞いた瞬間に「この人」と決まりましたが、アッコはわりと難航したそうです。

吉成監督によるアッコのイメージは「とにかくバカっぽくて、器用ではない」というもの。候補が潘めぐみさんともう1名にまで絞られた末、大塚さんいわく「フレッシュなところが魅力で、決め手になった」と潘さんがアッコを担当することになりました。しかし、潘さんはオーディション時とは違って、いろいろなヒロインを経験した上でアッコ役を演じることに。芝居の幅が広がったため、ちょっとキャラクターが変わった部分もあるものの、「それはそれでいい方向に転がった」のだそうです。


「魔法仕掛けのパレード」にはアッコたち3人組のほかに、新たな3人組が登場します。コンスタンツェの非常に長い名前は脚本の島田満さんが名付けたもので、ドイツの貴族をイメージしています。作中では明確に語られていませんが、魔女学校はお嬢様学校なので、通っている生徒たちはみんなお金持ちという設定があり、不良っぽく見えるアマンダも家は資産家だとか。


この3人のキャスティングについては、監督が「この人がいいかな」という候補をある程度選んだ上で、最終的にはプロデューサーが決定。残念ながら、アマンダ以外の2人はそれほどセリフの量は多くないのですが、新宿で行われた舞台挨拶でコンスタンツェ役の村川梨衣さんに会った吉成監督は「舞台挨拶で初めて村川さんがああいうキャラクターだと知り、もしそうだと知っていればもっとやりようはあったのに」と、ちょっと残念そうでした。村川さんは舞台挨拶であまりにも動きまくっていたため使える写真が少なかったとのことで、吉成監督が「アニメーションの動きに参考にしたいぐらい」と表現したほどです。


ここで、アンケートを使ったトークへ。人気キャラクターを聞いたところ多かったのはアッコ(35%)、次いで僅差でスーシィ(32%)、ちょっと離れてアーシュラ先生(20%)。そしてダイアナ(8%)、ロッテ(5%)の順。


アッコはトラブルメーカーで、「魔法仕掛けのパレード」でも独りよがりだと言われるシーンがあるため、人気があるのは意外だと吉成監督。むしろ、監督としては「ダイアナがアッコを責めるシーンがいい」とのこと。クリエイターのワガママに周りが振り回されるという妄想が反映されているため、あまりアッコをいいものにすることはできないのだそうです。その一方で、吉成監督が「魔法仕掛けのパレード」好き嫌いとは別に押したのがロッテ。そのせいで、アッコがよりダメなヤツになったかもしれないと語りました。

大塚さんもアッコが1位だとは思わなかったそうです。一方で、アニメーターを見守る立場であることから、アーシュラ先生のような立場なのかもしれないと共感したとのこと。しかし、作ってみて感じたのは「アッコいてこそのリトルウィッチアカデミアかもしれない」ということ。リトルウィッチアカデミアをこれで終わりにしたくはないという思いがあるので、ここからアッコがどう伸びていくのか、長い話にも耐えられる主人公だと評価していました。


音楽面では、劇伴を大島ミチルさんが担当。演奏はロシア国立交響楽団で、80人編成のフルオーケストラによるもの。これはダメ元でお願いしたらやってもらえたというもので、吉成監督は「完全に映像が負けています、ずいぶんと音楽に助けられている感じです」と絶賛。アメリカ上映時には、ギリギリまで制作を行っていたため大塚さんは映像を冷静に見られなかったとのことで、ひたすら音楽を押していたそうですが、4000人の前で上映されてスタンディングオベーションを受けることができました。

今回は舞台で主題歌・「Magic Parade」を大原ゆい子さんが生披露してくれました。


そのジャケットは吉成監督の手によるもの。「魔法仕掛けのパレード」の後に休んでいるかのような3人のイラストは、監督の「休みたい」という気持ちの発露だとか……。


このあと、映画館では本編上映後にトークショーを実施しました。

ちょうど山頂で話題に出ていた新キャラクターについて、吉成監督はヤスミンカ、大塚さんはアマンダがお気に入りだとのこと。この3人には初期シナリオではそれぞれに別の役割があり、例えばヤスミンカはロッテが立ち直るキーになったり、アマンダはアッコをけしかけて3人が仲間割れするきっかけを作ったりする予定が合ったそうですが、尺の都合で現在の形になったとのこと。

前述のように、魔女たちとアニメーターには重なる部分があるため、作中にはものづくりの暗黒面のようなところ、「いいものができればそれでいいのか」が出てきます。そこで、監督には「アッコを挫折させて、何かを学ばせなければ」という考えがあったとのこと。大塚さんも「ワガママがあってこそ達成できるものがあるのは事実ですが、しかし、毎回それはしんどい」と語りました。


せっかく映画を見た後のお客さんがいる場だということで、実は恋愛要素を入れてみたかったけれどどうなんだろう?と吉成監督がみんなの意見を集ったところ、恋愛を見たいと答えた人は皆無。この結果について監督は「あまり可能性を狭めたくないので、そういうコンシューマーの声もあるという意見として受け止めておきます」と語りました。ちなみに、監督が入れるならアッコは最後にはフラれて恋愛は成就しないとのこと。現在りぼんで連載中の「リトルウィッチアカデミア 月夜の王冠」には第1話から男の子が登場して恋愛っぽい展開が進行中ですが、どうなるのでしょうか……。

最後に繰り広げられたお客さんとの質疑応答は以下のような感じでした。

Q:
Kickstarterで出資を募っていましたが、それ以前の時点ではどこまで進んでいたんですか?

大塚:
作ろうとはしていましたが、長さはもっと短くなる予定でした。追加予算が得られたら尺を延ばそう、ということでKickstarterで出資を募りました。

Q:
プロットはできていたのでしょうか。

大塚:
尺が未定なので、どういう尺になるかが決まってからシナリオをしようということになっていました。ちょうど1作目を作ったのはキルラキルの実制作に取りかかる前でしたが、「魔法仕掛けのパレード」はキルラキルの実制作の裏でシナリオを作る形でした。

Q:
Kickstarterの出資者がエンドロールに表示されていました。アルファベット表記が多く読み取りきれなかったものの、海外からの出資者も多かったと思います。何か、海外向けにと考えて試行錯誤した部分はありますか?

吉成:
全く考えなかったですね。1作目を見て全世界で喜んでもらったので、変えることはないだろうと。むしろ日本風にというか、詰め込みまくっていたので、ちょっと間を取るようにテンポを変えました。

大塚:
我々はそれほど器用なわけではないので、見る人に合わせて作ると言うことはできません。

弭間:
出資してくれた方向けの配信では7カ国語の字幕が用意されました。

大塚:
できるだけ多くの人に見て欲しいので、字幕の制限で見る人が減るのは困るなと考えました。

Q:
キャラクターについて。よく喋るキャラクターは表情がころころ変わる一方で、しゃべらないキャラクターはよく動いていたと思います。これは意識したものですか?

吉成:
あまり意識はしていないですね。

大塚:
意識していなくても、コンテを描いたときにこのキャラクターはどうするかというのは考えているのでは?

吉成:
コンスタンツェは黙っていてもカワイイので、他のキャラと比べて動いているということとかはないです。本当はアマンダともっとケンカするようなことも考えていました。これはアッコたち3人組との対比で、ケンカするけれどすぐわかりあう、みたいな感じです。

Q:1作目は若手アニメーター育成事業として行われていましたが、2作目でも若手の方が関わって活躍した部分があると思います。そのオススメのカットなどあれば教えて下さい。

吉成:
今回はあまり指導はしていないんですよ。

大塚:
アニメミライ以降に入ってきた新人も作業をしてくれていて、最初に悪ガキたちとケンカするシーンを担当していたりします。時間としては、1作目の方が使えましたかね。

吉成:
そうですね、期間はこちらの方が長いですが尺があるので。監督をやりながらの作画監督作業はさすがに無理だなと思いました。

Q:
古いアニメのオマージュなども見られてとても良かったです。

吉成:
市長さんとか、相当古いノリですね。声を担当してくださった大竹宏さんはニャロメとかやられている方です。

大塚:
あれは音響の方によるキャスティングで、我々も声を聞いてびっくりしました。

Q:本作はKickstarterで募集をかけていました。私は他にもいろいろ出資をするのですが、遅れまくるものもあります。こういった作品の制作はリトルウィッチアカデミアでいう劇場公開のように、お尻が決まっていないと完成させるのは難しいものでしょうか。

大塚:
生々しい話になりますが、アニメを作ると人件費がかかるので、制作期間が長くなるとそれだけお金がかかります。なので、この作品は実は公開よりかなり前に完成しています。やっぱり、スタッフはオンエアなどの〆切がないとどうしても手を入れ続けてしまうので。今回はだいぶ前に上げてもらって、協力してもらいました。

吉成:
そうですね、時間はいくらでも欲しいです。たぶん、一生やり続けると思います。それも地獄ですが……。


映像も音響もこだわられた作品で、短期間の上映ではあるものの、ぜひ映画館で見て欲しいとのことでした。上映は10月9日(金)から2週間の予定なので、気になる人はぜひ早めに劇場に足を運んで下さい。

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in 取材,   映画,   アニメ, Posted by logc_nt

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