取材

屍者蘇生術が普及した世界を描く劇場アニメ「屍者の帝国」上映&トークイベント


SF作家、伊藤計劃はオリジナルの長編小説として「虐殺器官」と「ハーモニー」の2つと、「屍者の帝国」の冒頭30枚だけをのこして34歳の若さで病没しました。そんな伊藤計劃の関わった3作品を劇場アニメ化するプロジェクトが「Project Itoh」で、その第1弾として劇場アニメ「屍者の帝国」が2015年10月2日(金)から全国で公開されています。その「屍者の帝国」の上映&トークイベントがマチ★アソビ vol.15で行われました。

屍者の帝国
http://project-itoh.com/#/empire/top/

イベントはユーフォーテーブルシネマのシアター1で行われました。


トークショーに登場したのは、WIT STUDIOの岡田プロデューサー(左)と牧原亮太郎監督(右)の2人。牧原監督は公開がスタートしてとにかく「ホッとしている」とのことで、映画の話をもらってから2年間ずっと「屍者の帝国」にかかりっきりだったことを明かしています。

岡田プロデューサーは、マチ★アソビ初参戦とのことですが、その独特の空気感に驚いたようです。そして、街中でWIT STUDIOがアニメの制作に携わっている「終わりのセラフ」のコスプレを発見したようで、一緒に記念撮影してもらったそうです。


ここからは「屍者の帝国」の苦労話。岡田プロデューサーは今回の「屍者の帝国」が初めての2時間劇場アニメ制作だったそうで、通常のTVアニメよりもカット数も非常に多く、全てを各アニメーターにさば切るのも大変でだった模様。また、「屍者の帝国」の制作スタッフには作品を良いものにしようと粘るスタッフが多かったそうで、コントロールが大変でとにかく最後が大変だったと、とにかく調整に大忙しだったことを暴露。

牧原監督は、アニメ制作に必要な3つの要素「予算」「制作期間」「人的資源」がどれも足りないというか、むしろどれだけあっても足りなかった、とコメント。具体的にどういうことかというと、絵コンテを描いてもそこに割く人員がいない、という状況だったそうです。ラストのシーンは初めから大変になることが分かりきっていたそうですが、そのシーンに向けて確保しておくべきアニメーターがいない、と。牧原監督は、できることならもっと屍者を出したかった、と語っていました。


元の原作は厚めの小説で、どう考えても2時間の枠には収まらないような内容なのですが、牧原監督は最初は原作そのままに脚本を起こしてみたそうです。結果、3、4時間の作品になってしまうことが分かった模様。そこで、原作の中でも物語の核にできそうな2つのポイント「ワトソンとフライデーの関係性」と「世界を回るというコンセプト」をピックアップ。そして、この2つの柱を基に脚本を整えていったとのこと。

初め、脚本の制作には3、4か月のリミットが設けられていたそうですが、結局1年以上費やし、最終的に3人の脚本を呼んでだんだんに内容を詰めていくことでようやく完成したそうです。ちなみに、原作を読んでない人もいるようなので説明すると、映画と原作ではワトソンとフライデーの関わり方が大きく異なっているとのこと。


「岡田プロデューサー的に、監督はどういう方?」という質問には、「ねばる人」と岡田プロデューサーが回答。絵コンテを描く際などもよく粘る人で、とにかく作品にストイックな人、と牧原監督を称しています。

牧原監督は本当に2年間「屍者の帝国」だけやってきたそうで、9月に初号上映があって制作としての仕事は終了したのに、まだ制作中の夢を見続け、「作らないと!」とうなされて起きることもあったそうです。

牧原監督は2年前にWIT STUDIO初の劇場作品である「ハル」の監督を務めています。「ハル」で主人公のハルを演じたのは細谷佳正さんで、「屍者の帝国」の主人公であるワトソンの声も担当しています。そんな細谷さんについて牧原監督は、元々演技も上手いのだけど、「迷い」のような揺れる感情を表現するのがとても上手いと評していました。


ここからは観客からの質問コーナー。最初の質問は美術とレイアウトについてで、「全体的には優しいタッチだけど、時々ハっとするカットが混じっていて違和感というか『おっ!』となる瞬間がありました。これは何を表現したかったのでしょうか?」という質問。

この意図は「演出的なメリハリ」であったり、ただ単に「見せたい場所」であったり、悲しい話のあとに一度ここで気分をリセット、のような切り替えの瞬間になっていたりとさまざまだそうです。


「作中で日本だけ屍者が少なく感じた」という質問には、原作的にも日本は明治になったばかりで、屍者が少ない設定だそうです。ただし、それに関する説明は特に何もなく、視聴者側で感じてもらえれば、と牧原監督。そもそも、「屍者の帝国」という作品は引用が多い作品だそうで、本編以外から得られる情報も多いので、いろいろ調べてみたりするのも面白いそうです。

なお、公式ページ上には原作の円城塔さんからのコメントや、牧原監督が描いた作品の世界観が分かる漫画などが掲載されているので、これよ読んでみると、まだ観ていない人はどんな作品なのかイメージが沸き、既に観た人はより作品への理解度が深まるかも。

「Project Itoh」


脚本制作が大変だったという話がありましが、牧原監督は原作を預かった際に「伊藤計劃さんの言葉」と「円城さんが伊藤計劃さんから何を受け継いだか」という2点に着目して脚本制作に取り組んだそうです。原作の円城さんは、過去のさまざまなテキストを引用しながら「屍者の帝国」を作り上げたわけですが、その引用したテキストたちの中に「伊藤計劃さんの言葉」を焼き付けた、という印象を受けたそうです。円城さんの原作をそのまま映像にしても「伊藤計劃さんの言葉」を表現することでできないので、どうすれば良いのか考えた末にたどり着いたのが「映画でのフライデーとワトソンの関係」だったわけ。そういった表現で劇場版の制作陣が目指したのが、「伊藤計劃さんが存在した、存在している」ということや「伊藤計劃さんの言葉」というものを残すこと。そして、実際に映画を見た人たちが、原作のように心の中に伊藤計劃さんという存在を留めてくれればとてもうれしい、とのことです。

「屍者の帝国」の最新版PVは以下から見られます。

「屍者の帝国」 WEB限定ファイナルPV - YouTube


なお、WIT STUDIOは「屍者の帝国」「終わりのセラフ」の原画展も開催していました。

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in 取材,   映画,   アニメ, Posted by logu_ii

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