スマホでアニメの原画を自在に動かしていつでもどこでも作画勉強ができるアプリ「アニメミライ プラス」を使って作画解説イベントレポ


若手アニメーター育成プロジェクトの「アニメミライ」が、アニメミライ2012の作品のひとつである「わすれなぐも」の原画をスマートフォンやタブレットの画面で見られるアプリ「アニメミライ プラス」をリリースしました。同アプリはいつでもどこでも手軽にアニメの基本的な「動き」数種類を確認可能で、見たい場面を何度でも見られることから「作画の勉強」や「どうやってアニメが作られているのか」を垣間見るのにぴったりなアプリになっています。

アニメミライ『わすれなぐも』を使ってiPadアプリをつくってみた - マチ★アソビ
http://www.machiasobi.com/events/animemirai.html

毎年5月と10月の年2回開催されるマチ★アソビも2015年10月の開催で15回目を迎えました。そんなマチ★アソビの中で、これまで報告会やトークイベントなどを行ってきたアニメミライが、今回は一風変わった「文化庁委託事業「平成27年度 メディア芸術連携促進事業」アニメミライ『わすれなぐも』を使ってiPadアプリをつくってみた」というイベントをユーフォーテーブルシネマで開催しました。


イベント会場はこんな感じで、スライドの他に、各席に何やらアンケート用紙とふせんのようなものが配られています。


そのふせんのようなものの正体がコレ。「アニメーション作画資料」と書かれているわけですが、中をめくってみるとこれが何なのか一発で分かります。


実際に謎のふせんのようなものをパラパラしてみたムービーが以下から見られます。

「アニメミライ プラス」のイベントで配られたふせんのようなものをパラパラ - YouTube


これの正体は、「わすれなぐも」の原画をパラパラ漫画にしたものでした。ただのパラパラ漫画とあなどることなかれ、ぺらぺらめくるだけでキャラクターの動きがじっくり観察できるので、アニメの動きをよく見ている人やアニメーター志望で作画の勉強中という人にとってはかなり面白いプレゼントになりそう。実はこのふせんはアプリ「アニメミライ プラス」に収録されている「アクション」と「走り」というカットをパラパラ漫画にしたもの。会場でアプリをインストールしていなくても参加者が原画の動きを見られるように、と用意されたものだったのでした。


このふせんで見られるのは、「わすれなぐも」の作画の中の「走り」と「アクション」のカットのみ。なぜ「走り」と「アクション」なのかというと、これらがアニメ作画の基本的な動きだからです。しかし、アニメの作画には他にも基本的な動きがたくさん存在するので、それらをひとつのアプリにまとめてしまい、いつでもどこでも手軽に作画の勉強ができるようにしたのがアプリ「アニメミライ プラス」です。

アプリは既にApp Storeで公開されており、iOS 7.1以降を搭載したiPhone、iPad、iPod touchに対応しています。

アニメミライ プラスを App Store で
https://itunes.apple.com/jp/app/id966782731


アプリではふせんにのっていた「走り」と「アクション」の他、「歩き」「エフェクト」「日常芝居」「ふりむき/感情芝居」「動物/メカ・プロップ」という全部で7つの動き(7つのカット)を自由自在に見まくることができます。


アプリの画面はこんな感じで、レイアウトに作画を重ねた状態になっています。


画面上を指で右方向にスワイプすると……


作画をパラパラ漫画をめくるかのように進めることが可能。左右にスワイプすることで時間を進めたり戻したりが可能なので、自分が気になる部分がどんな風に動いているのかをじっくり確認できるというわけ。


さらには、「タイムシートがどうなっているのか?」を確認したり、レイアウトを消したり、線撮を見たりもでき、まさにアニメの基本的な動きを学ぶのにぴったりなアプリになっています。


というわけで、会場に用意されたiPadや参加者のiOS端末を使ってさっそくアプリを体験中。


続いて、アプリ上で表示されているレイアウトや原画、動画、タイムシートなどの実物を来場者に回覧し、アプリの中の作画を実際に手にとって見てみる、という他ではなかなか体験できない時間がスタート。


来場者が実際に手にとって生で見ることができたのは、この4つ。


タイムシート


レイアウト


原画


動画


原画やレイアウトは見ただけでそのすごさが分かるのですが、タイムシートは読み方が分からずチンプンカンプンでした。


その後、カットの動きをアニメーター・演出家の数井浩子さんが解説してくれました。数井さんはアプリ「アニメミライ プラス」の企画・開発を行った人物で、過去に200作品以上のアニメの作画・演出・脚本に携わってきたという人物。「エウレカセブンAO ―ユングフラウの花々たち―」では監督も務めています。


例えば、カットを再生しながら作画監督や演出からどのような修正指示が出て、修正後に動きがどのように変化したのかを実際にムービーで再生しながらみんなで確認したりしました。


動きの指示は絵コンテやレイアウトに書き込まれているのですが、たった2言、3言から動きの意図をくみ取って実際の絵に反映させるというのは非常に大変な作業と感じました。なお、アプリ内のカットでもレイアウトに原画マンからのコメントが書かれていたりするので、そういった部分に注目してみると、それまでとは異なる視点で作画が見られて面白いです。


なお、アプリ「アニメミライ プラス」は今後iPad Proのペン入力に対応することを検討中とのこと。Android版アプリについては、Android端末の画面比がバラバラであることからリリースは現在のところ「難しい」そうです。

アプリの開発理由は、アニメ現場で起きている「スタッフはスケジュールに忙殺されているので、いちいち教えてもらうのは躊躇してしまう」だとか「制作期間が短く、スタッフも流動的なので、継続的に教えられない」などのミスマッチ問題を解消し、最新の学びのスタイルに合わせられるようにいつでもどこでも手軽に学習できるライブラリを作りたかった、ということのようです。


その他、動きに意味を持たせる手法やスピード感を出す方法など、第一線で活躍するアニメーターである数井さんのノウハウが次々と披露され、ただ言葉で説明されるだけでなくムービーを使って修正前後の比較も行ってくれたので、ちょっとした修正で全体の印象がガラリと変わることを肌で感じられる内容になっていました。


そしてここから質問コーナーがスタート。最初の質問は「参照できる原画の種類は今後増えるのか?」というもの。現在は「わすれなぐも」の7カットのみですが、GWまでには72カットにまで増やす予定で、さらに今後は「リトル ウィッチ アカデミア」などのフルバージョン(72カット収録)を有料版として3000円(予定価格)でリリースする模様。

続いて手元に回ってきた原画や動画の「用紙の色の違いにはどのような意味があるのか?」という質問。確かに用紙を見てみると、白や黄色、青や赤などいろんな色の用紙が混ざっています。


原画が描いたものが白色で、作画監督や演出、監督など各役職ごとに用紙の色が決められているそうです。この色つきの用紙には、例えば作画監督からのポージングに関する修正指示などが書かれている模様。


さらに、「修正前と後の動きを比べると明らかに動きが良くなっているのが素人目にも分かるのですが、どうやって動きを良くするための判断を下すのですか?コンピューターを使ったアプローチなどあるのですか?」という質問。映像の場合はビッグデータを使ったアプローチなどもあるそうですが、そういった手法をとると逆にウソっぽい動きになるそうで、結局修正判断はアニメーターの勘と経験によるところが大きいそうです。どうしてもトライ&エラーの繰り返しになってしまう修正作業は、その場で良く見えても実際に後で見てみると……ということもあるそう。なので、アニメーターは世間一般の「良い」と思われるものと自分の感覚をすりあわせるような作業をみんなが何かしらの方法で行っていると思う、と数井さん。

次の質問は「全原画と動画が入るのはどちらが良いの?」というもの。質問した人は全原画のものを見てみたいとのことですが、例えば「走り」という動きの場合は中割りが大体決まっている模様。もちろん人によって個人差もあり、場合によってはあえて全原画のカットもあるそうです。また、アクションシーンなどでも中の絵のイメージは原画の人しか持っていなかったりするので、全原画になることがあるそうです。他にも、アタリを入れて「ここに描いて!」といった指示(c271の「42」)を出す人もいるそう。


次は「中割りの『走り』の動きが共通という話ですが、いろいろな性格のキャラクターがいると思いますが、それでも共通なのですか?」という質問。これに対しては、人間の骨の数や人体の構造を考えると、動きには共通点があり、個体差の方が誤差の範囲になってくる、との回答。しかし、それではつまらないので、作品ごとにキャラクターの動きを制作側なりに特徴付けることもある模様。ただし、それらの工夫が全てしっかりと視聴者側に伝わるかどうかは不明だそうです。

さらに、「わすれなぐもの瑞紀が好きなのですが、キャラクターの生き生きとした表現はどういったところを工夫しているのですか?」という質問。例えば、アプリでも見られる「走り」のカットではあえて動きを止めないことで、キャラクターの「どうなんだろうどうなんだろう」という心境や性格がよく分かるようになっている、とのこと。レイアウトなどに書き込まれているコメントにもそういったニュアンスのものが残ってるかもしれないので、アプリをインストールしてチェックしてみると面白いかもしれません。

今後、全国の一部地域でも同様のワークショップを開催予定となっているので、作画に興味がある人は要チェックです。

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in 取材,   ソフトウェア,   アニメ, Posted by logu_ii