サイエンス

脳はどうやって新しい思考を構築しているのか?

By Vanity Mirror

ジョー・バイデン(アメリカ副大統領)がウラジミール・プーチンにボードゲームで勝利を収めた」という突拍子もない文章を読んだとしても、人間はそんな状況を思い浮かべることができます。これは、「ジョー・バイデン」「ウラジミール・プーチン」「ボードゲーム」のそれぞれの意味さえわかっていれば、脳が文章の意味を理解するべく単語を組み合わせるためなのですが、このようにこれまでにない思考を脳が構築する仕組みについて、ハーバード大学の心理学者が研究した論文が発表されています。

How the brain builds new thoughts | Harvard Gazette
http://news.harvard.edu/gazette/story/2015/10/how-the-brain-builds-new-thoughts/


ハーバード大学で実験心理学・神経科学・哲学の研究に携わっているジョシュア・グリーン氏は、人間の脳が変数と変化値を使ったシリコンコンピュータの仕組みに似た働きにより、新しい思考を構築していることを示しました。

グリーン氏らが米国科学アカデミー紀要(PNAS)に発表した論文によると、脳は「何が行われた?(What)」「誰が行った?(Who)」「誰に行われた?(To Whom)」という複数の概念を変数化することで、求められた思考を構築しているとのこと。例として「バイデンがプーチンにゲームで勝利した」という考え方を求められた時、脳は「勝利(What)」から"行動(Action)"の変数、「バイデン(Who)」から"動作主(Agent)"の変数、「プーチン(To Whom)」から"被動主(Patient)"の変数の値をそれぞれ算出し、突拍子のない状況であっても、それぞれの単語をつなげて脳内で構築しているとのこと。

グリーン氏の研究チームは、このような精神的文法をエンコードしている脳の領域を特定することに成功。研究チームは「犬が男を追いかけた」「男が犬を追いかけた」のような、新しい思考を構築させるいくつかの一連の単文を学生に読んでもらい、単文を読む間の脳の反応をMRIでスキャンしました。その結果、側頭葉の中にある2つの領域が単文中の「動作主」「被動主」を表わす単語に反応していることが判明。頭の中心に位置する領域が動作主、耳に近い方に位置する領域が「被動主」に関する情報を処理していることがわかったとのこと。

By Amber Case

共同研究著者のスティーブン・フランク氏によると、「重要な発見は、脳は一度構築した思考のパターンを再使用しており、『犬が男を追いかけた』『犬が男を引っかいた』という2つの動詞が異なる単文を聞かせても、『犬』が動作主であるパターンを記憶していることです」と話しています。

つまり、人間は新しい思考を構築するたびに再使用可能な公式を創り出すことになり、人間の思考能力が独特かつ強力であることを意味していることになります。普段何気なく行っている「想像」は、考えられていた以上に複雑なプロセスを踏んで行われていた、というわけです。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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