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Windowsのスタートメニューはどうやって誕生したのか?


Microsoftが「Windows 95」をリリースしてから20年が経過しましたが、最新版のOSである「Windows 10」でも相変わらず画面左下に居座り続けているのがスタートメニューです。PC内のあらゆるデータに即座にアクセスできるスタートメニューを最初にデザインしたMicrosoftの元インターフェースデザイナーであるダニー・オラン氏が、その開発秘話を明かしています。

How chimpanzees helped inspire the Windows start menu | Business Insider India
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Microsoftの元インターフェースデザイナーで、Windows 95のスタートメニューとタスクバーをデザインし、2つの特許も持っている、というまさしくスタートメニューの生みの親がダニー・オラン氏。彼がMicrosoftに入社したのは1992年のことで、「行動分析学者のオラン氏なら、技術屋以外の目線から、Windowsのより簡単な操作方法を編み出してくれるかもしれない」と期待されての入社でした。

オラン氏はハーバード大学で新しいユーザーインターフェースのデザインプロジェクトを立ち上げ、行動分析学の創始者であるバラス・スキナー氏と共にデザインをスタートします。この時、スキナー氏はオラン氏に「君ならチンパンジーにどうやって話すことを教える?」と質問したそうで、オラン氏はこの質問に答えるために、わざわざ「オースティン」と「シャーマン」という2匹の若いチンパンジーと共に過ごし、2匹に自作の木製キーボードで英語を教えながら答えを探しました。

もちろんチンパンジーは英語を話せるようにはならず、それどころか近寄ってくることすらなかったそうですが、「チンパンジーでも木製キーボードを使えるように」と工夫を凝らしたことが「どうやってコンピュータープログラムをデザインすれば良いのか?」というプロジェクト本来の目的に対する多くの洞察をもたらしてくれた、とのこと。


また、1992年頃使われていた「Windows 3.1」は使いづらいと評判で改良の必要性に迫られていたのですが、Apple製OSの大ファンであったオラン氏がインターフェースデザインに参加することで、MicrosoftのWindowsを完全に第三者目線で見ることができたそうです。

開発の第一歩として行われたのは、顧客が実際にどうやってWindowsを使用しているのかを調査することでした。そこで、オラン氏とプログラマーたちのチームは被験者にコンピューター上で簡単なタスクを行ってもらい、その過程を観察することにします。観察した被験者の中には、Windows 3.1でテキスト入力を行おうとして約20分もかかった人もいたのですが、それでも初めはプログラマがOSに問題があることを認めようとはせず、非常に歯がゆい思いをしたそうです。なお、観察後に被験者の職業を調べてみると彼はボーイングの推進エンジニアであったそうで、ハイテク機器を開発するエンジニアですらWindows 3.1を使用するのは非常に難しかった、とのこと。


そうこうしてできあがったのが、ひとつのボタンに全てを詰め込んだ現在のスタートメニュー。開発の初期段階ではオラン氏はスタートメニューを「システムボタン」と呼んでおり、これは画面の上部に配置されていました。しかし、おそらくは技術的な理由から配置は変更され、ボタンの名前も「スタート」ボタンに変更されます。しかし、名称の変更でユーザーはこれがどういったものなのかを直感的に理解することができるようになったそうです。

以下の画像はオラン氏が書いたスタートメニューのコンセプトスケッチ。


スタートメニューと一緒に新しく作成されたのが、タスクバーです。Windows 3.1の抱えていた大きな問題のひとつが、ユーザーがいくつのプログラムを起動しているのか分からない、という点でした。Windows 3.1には何のプログラムが動作しているのか示すためのタスクマネージャーがありましたが、ほとんどのユーザーはこれを起動する方法を理解していませんでした。なので、起動プログラムが徐々に増えていき、PC自体を再起動するまで動作は徐々に重くなっていったそうです。

そこで、この問題を解決すべくオラン氏が起動中のプログラムを棒で示す、というアイデアを出します。このアイデアがタスクバーになるわけですが、当初は画面上部に配置されており、ChromeやSafariのタブのような見た目になっていたそうです。しかし、当時のPCはモニターが小さく、解像度は640×480程度だったので、このタスクバーが画面上部に表示されるとあまりにも大きいスペースを占めてしまうことになったそうで、結局はバーのサイズをよりコンパクトにし、画面下部に移動させることになったわけです。


こうしてWindowsのスタートメニューおよびタスクバーのデザインに大きく貢献したオラン氏ですが、Windows 95がリリースされる前の1994年にMicrosoftを退社しています。

なお、オラン氏がデザインしたWindowsのスタートメニューがどのように変化してきたのかは、以下の記事を見れば一発で分かります。

Windows 10に至るまで「スタートメニュー」はどのように進化してきたのか? - GIGAZINE

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in ソフトウェア, Posted by logu_ii

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