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「世界初のハッキングは100年以上前に行われた」などハッキングの歴史が分かる「A History of Hacking」

by Brian Klug

PCやインターネットの普及に伴って、近年「ハッカー」や「ハッキング」という言葉が世間に浸透しつつありますが、世界初のハッキングが行われたのは1世紀以上も前のことだという事実はあまり知られていません。また「ハッカー」という言葉はコンピューターやネットワークに不正侵入して甚大な被害を与える悪者だという印象がありますが、中にはシステムセキュリティの脆弱性を見つけて被害を防ぐことを目的としているハッカーも存在します。そんなハッカーたちは、インターネットの誕生以前から通信機器や電気集計マシンを傍受してさまざまな情報をハッキングしていました。

A History of Hacking - IEEE - The Institute
http://theinstitute.ieee.org/technology-focus/technology-history/a-history-of-hacking


◆世界初のハッキング
1900年代初頭にイタリア生まれの物理学者グリエルモ・マルコーニが無線機を開発しました。この発明は従来の通信機械のようなケーブルを使わずに、無線電信で特定の周波数にメッセージをのせることでプライベートな通信ができるというものでした。

マルコーニの発明に恐れを抱いた通信業界は無線電信に対抗する策を練り始めます。イギリスの通信会社Eastern Telegraph(現・Cable & Wireless Communications)は、イギリス人奇術師で発明家のジョン・ネビル・マスケリンを雇い、マルコーニの発明に対抗することにしました。マスケリンは無線技術に関する実験を行い、マルコーニの無線機が通信を行っている際に周波数を知らない状態でも通信内容を傍受することに成功しました。


1903年にマルコーニは初の無線機の公開実験をロンドンで行いました。実験の内容は500kmほど離れた場所から送られてくる無線通信を、マルコーニの無線機を使って受信できるかどうかというものでした。しかしマルコーニが用意したメッセージを受信する前に、無線機からはマルコーニを笑いものにしたメッセージが流れるという事態が起こってしまい、この事件が世界初のハッキングだと言われています。

マルコーニはハッキングを受けた後、「ハッキングは科学技術を用いた乱暴行為だ」と抗議する手紙をタイムズ紙に送り、犯人探しの手伝いを読者に求めました。それから4日後にタイムズ紙はマスケリンの声明を掲載。「マルコーニの無線機にメッセージを割り込ませたのはマスケリン本人である」という告白と、「公開実験の場でハッキングを行うことでセキュリティ面の欠陥を暴くことができた」というマスケリンの主張が載っており、このハッキングは悪意のもとに行われたのではなく、無線電信のセキュリティ面は不安定で、誰でも簡単に無線通信を傍受できるという事実を明らかにした価値のあるものだったのです。

by RHODI Project

◆命を救ったハッキング
ナチスがフランスを占領した1940年、パンチカードを扱う専門家でフランス軍に従事していたルネ・カミーユは、フランス国内のユダヤ教徒を救うチャンスに巡り会います。彼はフランスの人口統計を算出する部門を管轄していて、統計資料を作るためのパンチングマシンを管理していました。ナチスの侵攻後、占領軍がフランス全土の人口統計資料を要求した際に、カミーユは統計データをパンチングマシンで出力する役目を申し出ました。統計資料内にはフランス国民ひとりひとりの信仰している宗教が明記してあったため、占領軍は資料をもとにしてユダヤ教徒の多く住む地域を割り出してユダヤ教徒を強制収容所に送り込もうとしていたのです。

カミーユはフランス・レジスタンス集団のスパイでもあったため、占領軍に統計資料を渡す日にちをわざと遅らせたり、パンチングマシンをハックして統計資料に宗教を載せないように機械のプログラムを書き換えたりしました。また、カミーユは仲間たちと共に統計資料から退役軍人を見つけ出し、レジスタンス集団への勧誘も行っていました。占領軍がカミーユの工作に気づいたのは1944年のことで、カミーユは拘束されてドイツの強制収容所に幽閉されてしまい、収容所の中で翌年に死去しましたが、5年の間にカミーユは数多くのユダヤ人の命を救いました。

by Marcin Wichary

◆世界初のマルウェア
1988年に世界初のコンピューターワームのコードを書いたのはアメリカ人計算機科学者のロバート・T・モリスで、彼は当時コーネル大学に通う23歳の学生でした。モリスの作ったワームはMITのコンピューターから1988年11月2日に公開されてインターネットを介して世界中に広まりましたが、一度ワームがPCに侵入すると何度も上書きを繰り返してマシンの動きを妨害してしまうため、インターネットに接続しているPCのうち10%、約6000台ものマシンが利用不可能な状態に陥りました。ワームによってアメリカ国内の大学や研究施設、軍事基地などが被害を受け、被害総額は1000万ドル(当時の価値で約25億円)相当にも上ると推算されています。

モリス・ワームによる攻撃を受けて、アメリカでは国防高等研究計画局がインターネットセキュリティ対策チームとしてCERTを設立するなど、モリス・ワームはインターネットセキュリティに関する世間の意識を高めたと言えます。また、モリスは1986年に成立したばかりだった「コンピューター詐欺および不正使用取締法」で裁かれた初めての人物となり、1989年6月26日に3年間の執行猶予と1万50ドル(当時の価値で約140万円)の罰金を求刑されました。モリスはその後、史上初のアプリケーションサービスプロバイダのひとつである「Viaweb」の共同設立者を務め、Viawebが2005年に4900万ドル(当時の価値で約54億円)でYahoo!に買収されてからは、かつてワームの発信元として利用したMITで電子エンジニアリング・コンピューターサイエンスの教授として働いています。

モリスの作ったワーム、通称「モリス・ワーム」のコードが入ったフロッピーディスクは現在カリフォルニアのコンピュータ歴史博物館に展示されています。

by Intel Free Press

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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