サイエンス

妖精をレーザーによる空気のプラズマ化で空中に映してツンツン触れるようにした「Fairy Lights in Femtoseconds」


筑波大学図書館情報メディア研究科の落合陽一助教が率いる研究チームが、空中に3D映像を描画する研究「Fairy Lights in Femtoseconds」を発表しました。フェムト秒レーザーという、科学をかじったことのない人にとっては馴染みのない名の技術を使って、触れることができる小さな3D映像を空中に映し出せます。

Fairy Lights in Femtoseconds: Aerial and Volumetric Graphics Rendered by Focused Femtosecond Laser Combined with Computational Holographic Fields
http://arxiv.org/ftp/arxiv/papers/1506/1506.06668.pdf

Fairy Lights in Femtoseconds - Digital Nature Group
http://digitalnature.slis.tsukuba.ac.jp/2015/06/fairy-lights-in-femtoseconds/

フェムト秒レーザーを使って3D映像を表示する技術がどのようなものかは、以下のムービーを見るとわかりやすいです。

Fairy Lights in Femtoseconds: Tangible Holographic Plasma (SIGGRAPH) - YouTube


円を描く様に空中を浮遊する小さな光。


光に指が触れると……


一瞬ではありますが、光の形が変化しました。


光から手を放すと元通り。


今度はハート型の光が空中に映しだされています。


指で触ると……


ハートが二つに分かれてブロークンハート。


今度は空中に映し出された星にタッチ。


タッチされた星が「LV(LOVE)」に変りました。


空中に浮かんだ青い点。


指でタッチすると形が変りましたが、小さすぎてよくわかりません。


拡大すると青い光は妖精の形をしていたことが分かります。


この触れると形が変化する小さな光こそが、フェムト秒レーザーにより映し出された3Dの映像です。1000兆分の1秒という時間幅の短いパルスレーザーを空気の一点に照射し、空気分子をプラズマ化して3Dの映像を映し出しているとのこと。


従来の2D映像が照射される仕組みは、光源から発せられた光が液晶ディスプレイ、レンズを通ってスクリーンに照射され、その反射光を画像として目で捉えるイメージ。


以前には慶應義塾大学と産業技術総合研究所、株式会社バートンが共同で、何もない空間に3D映像を映し出す装置を開発しましたが、使用されたのはフェムト秒レーザーよりも時間幅の長いパルス光を発するナノ秒レーザー。ナノ秒レーザーには、時間幅が長いためレーザーに触れると肌が傷ついてしまう危険性があります。


出力されたフェムト秒レーザーを空間光変調器を通してホログラムを生成し、それをさらにガルバノミラーで走査して3D映像を映し出すのが落合助教らが発表した技術になります。フェムト秒レーザーを使った同技術の利点は、安全性と映像の解像度が高くなり、指で触れることで映像に変化を付随させられる点です。また、指がレーザーに触れても傷つかないことも、従来のレーザーを空中に映し出す技術とは違う点になります。


空中に浮かんだチェックボックスを指で触れると……


チェックをいれることができました。短時間なら触れてもやけどなどをしないため、3D映像に触れることが可能というわけ。また、3D映像を触れた感覚も得られるとのこと。


フェムト秒レーザーで3D映像を空中に映し出す実験では、レンズを含めて9台もの光学機器を使用。これだけの装置を使って映し出せる映像の大きさは約1cm四方しかありませんが、実用化に向けてより大きな映像を映し出す方法を研究中とのことです。


実用化に向けて提案されているのは、腕に腕時計を映したり、何もない箱の上に花を表示したりするARや、映し出されたチェックボックスに触ってチェックを入れるような触れることで変化をもたらすインターフェイスなど。


また、触れる大きなアート作品のようなものも可能になります。


空中以外にも3D映像を映し出すディスプレイとなる媒体を調査しているそうで、現時点までに蛍光性溶液や……


蛍光板……


水などで3D映像を映し出すことに成功しているそうです。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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