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世界初・宇宙ステーション「ISS」のカメラ映像を定点加工したフルカラーHDムービーがネットで公開へ


地球の高度400km(40万メートル)の高さを飛び、90分で地球を一周する国際宇宙ステーション(ISS)に搭載された高精細カメラの映像をもとに処理を行い、まるで都市の真上からその風景を撮影したようなフルカラーHDムービーが公開されることになりました。その解像度は地上レベルでおよそ1メートルという非常に細かいもので、建物の様子や自動車の走る姿が克明に捉えられています。

UrtheCast Releases The World’s First Full-Color HD Videos Of Earth
http://blog.urthecast.com/updates/london-boston-barcelona-worlds-first-full-color-hd-videos-earth-space/

These are the first full-color HD videos of earth from the International Space Station - Quartz
http://qz.com/429946/these-are-the-first-full-color-hd-videos-of-earth-from-the-international-space-station/

この映像を公開したのは、ISSからの映像をリアルタイム配信しているカナダの企業「Urthecast」(アースキャスト)です。同社はISSに連結されているロシアのサービスモジュール「ズヴェズダ」に搭載したカメラからの映像を配信しています。


そんなUrthecastのカメラでイギリス・ロンドンの様子を収めたムービーがこちら。道路を走る自動車や、テムズ川を行き交う船の様子が捉えられています。

London, UK on Vimeo


場所はイングランドの中心地、ロンドン。なお、北を指す「N」の矢印は演出上のためか緩やかに回転しており、正確な方角を指しているわけではなさそう。画面左の方向がおよそ北の方角です。


道路を走る自動車の平均速度は時速33km。ムービーに乗せられている文字や図形は実際に動く画面のオブジェクトに合わせて動くように処理されています。


画面左にはトラファルガー広場が写っています。映像が撮影された2015年5月27日には、エリザベス女王の保守政策承認に帯する抗議デモが行われていました。


そして画面左には、ロンドンを象徴する建物の1つである時計台「ビッグ・ベン」の姿。


ビッグ・ベンの西側には、歴代イギリス首相やガンジーの銅像が建つパーラメント・スクエア


テムズ川沿いには、クルーズ船の乗り降り場である「ウェストミンスター・ピア」。行き交う船は9~10ノットで進んでいるようです。


そして、テムズ川の対岸には1999年に建設されたロンドン新名所の観覧車「ロンドン・アイ」も見えています。


こんな風に、ロンドンの名所を見ることができたUrtheCastによるムービーですが、そのすごさは驚異的な解像度にあるといえます。ISSに取り付けられたカメラが捉える地表の様子は解像度1メートル程度という精細さで、建物の形状や地上を走る自動車の様子を見ているとそのすごさが伝わってきます。

さらにUrtheCastによる処理のすごさを感じさせてくれるのが、アメリカの都市ボストンの様子を収めた以下のムービー。

Boston, U.S.A. on Vimeo


地上をうごめく自動車の様子はもちろんのこと、このムービーでは何といっても画面右に映っている高層ビルの様子に要注目。ムービーの冒頭ではこんな風に映っていたビル群が、後半になると……


こんな風に斜めからの角度に変化しました。これはつまり、ISSが秒速約7.7kmという超高速で移動することによって、視点が移動してビルを見る角度が大きく変化したことを意味しています。


静止画ではわかりにくいので、GIFアニメにしてみました。ビル群はもちろん静止しているので、カメラが高速で移動することで視点が変化していると考えると、そのスピード感が何となくわかるはず。(クリックすると再生:370kb)


ムービーの長さである47秒間でISSが移動する距離は約362km。これを日本の国土で例えると、千葉県の犬吠崎から名古屋市までの間を47秒で移動しつつ、富士山の姿を常に画面の中心に捉え続けるようなもの。カメラは2軸制御されたプラットフォーム(台)の上に搭載されており、高速で飛行しながら向きを調節して常に一点を凝視する「ポインティング機能」を使って撮影を行っているようです。


そして3本目のムービーはスペイン・バルセロナを上空から捉えた映像。よく見れば、画面右にある石油タンクとおぼしき建物の見た目が緩やかに変化しているのがわかります。

Barcelona, Spain on Vimeo


Urthecastではこの映像ベースに複数のサービスを展開する予定で、無料でAPIを提供して誰でも自由にサービスや、同社のデータベースから過去の映像を購入したり希望の場所の映像を有償で入手できるようになる予定とのこと。Urthecastのスコット・ラーセンCEOは7月末までにはこの新サービスからの売上を見込んでいると語っています。


このサービスを使うことで、例えば広大な農地を管理する大規模農業や資源産業などの分野では有益な情報をこれまでになく容易に入手できるなど多くのメリットが期待できるとのこと。また、同社は国連とのパートナーシップを結んでおり、シリアの食糧問題など人道上の問題解決のためにデータを提供することになっているそうです。

その一方で、はるか上空から高性能カメラで撮影されることによるプライバシー問題を危惧する声が挙がることも容易に想像できるわけですが、同社では「解像度1メートルという性能では、個人の顔を認識したり、自動車のナンバープレートを識別することはできません」としています。

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in ネットサービス,   動画, Posted by darkhorse_log

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