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「PowerPointを禁止するべき理由」をPowerPointで解説

By U.S. Army Corps of Engineers Europe District

1987年に開発されたPowerPointは2015年現在で推定10億台以上の端末にインストールされており、プレゼンテーションで使われるスライドの代名詞となっています。一方でフェルミ国立加速器研究所がプレゼンテーションでPowerPointの使用を禁止したり、スイスには「アンチパワポ政党」があるなど、PowerPoint一辺倒の状況に反対する声が挙がっているのも事実です。そこでワシントン・ポストは「なぜPowerPointを禁止するべきなのか?」を説明したPowerPointのスライドを公開しています。

PowerPoint should be banned. This PowerPoint presentation explains why. - The Washington Post
http://www.washingtonpost.com/posteverything/wp/2015/05/26/powerpoint-should-be-banned-this-powerpoint-presentation-explains-why/

毎日世界中で3000以上のプレゼンテーションでPowerPointのスライドが使われていると試算されていますが、ワシントン・ポストの記者はPowerPointの問題点として、「スライドが簡素化され過ぎていること」、対話や討論が行いづらいことによる「学習機会の損失」などを挙げています。ササッとプレゼンテーションの資料が作れるためメリットもありますが、手抜きの報告書が作成される一因にもなっていると、ワシントン・ポストの記者は指摘しています。

そんな問題点を解決するべく作成されたスライドのタイトルは「PowerPointの禁止」。なぜPowerPointを禁止する必要があるのかをPowerPointを使って説明しています。


PowerPointは「最悪の罪人」であるとして、実際に使われたPowerPointによるスライドの悪例を集めました。


以下はNSAの盗聴システム「PRISM」を説明したスライド。「ややこしくて気が散りやすく、読みづらく無益」と説明されています。


ニューヨークタイムズが公開したアフガニスタン戦略のスライドには、「このスライドの内容を理解する頃には、我々は既に勝利を手中に収めているだろう」というアフガン駐留軍司令官を務めたアメリカ軍司令官スタンリー・マクリスタル氏のコメントが付け加えられており、非常にゴチャゴチャしたスライドで、線をたどるのも難しい状態が見て取れます。


続いて世界銀行と国際連合貿易開発会議(UNCTAD)のスライドには、「PowerPointのスライドは報告書ではない」と書かれています。記載されている文章や図表全てに目を通す必要のあるため、使用する目的がズレていることを指摘しています。


最後の悪例はアメリカ南東部を襲った大型ハリケーンの「ハリケーン・カトリーナ」の救援活動を表すスライドですが、よく見ても左下注釈の色分けはマップ上に見当たらず、挿入されている円も何を表すのか不明。記者は「完全に理解不能」とコメントしています。


なお、軍事組織などでは状況報告のフォーマットとしてPowerPointを採用していることが多いのですが、CIAが報告書の提出にPowerPointを禁止したほか、アメリカ国防長官のアシュトン・カーター氏は、クウェート首脳会談で対談を促進するためにPowerPointの使用を禁止したとのこと。


他にも、アメリカ軍やアメリカの政治家からもPowerPointの使用禁止を推奨する人物が増加しており、反対派からは「PowerPointは危険である。なぜなら『幻の理解』と『幻のコントロール』を生み出すからだ」という声が挙がっています。


PowerPointが危険な理由については、以下のようなPowerPointでよく見られる「箇条書き」が原因にあります。箇条書きで複雑な情報を書き連ねると、一見するときれいにまとまっているように見えますが、正確な結論を導き出すには向いていないとのこと。


例として使われているのは、2003年のコロンビア号空中分解事故発生当時にNASAで実際に使用されたスライド。

左主翼前縁を損傷したコロンビア号は、2週間にわたって地球の軌道上で指示を待っており、その際にコロンビア号が大気圏突入に耐えうるかどうかを検討するため、以下の機体速度などを計算した箇条書きのスライドが使われました。スライドの上側は「突入には問題ない」という楽観的な見通しでまとめられており、下側に安全性への言及が記載されています。NASAは「コロンビア号の大気圏突入は安全である」という判断を下しましたが、指示を受けたコロンビア号は再突入で空中分解してしまい、7人の乗組員の命が失われるという悲劇を招きました。


また、「もし国防省からPowerPointが消滅したら?」というスライドでは、「報告書の品質が向上する」「やる気が向上する」という利点が挙げられており、PowerPointの作成に必要な時間が節約でき、別の作業に時間をあてられるようになるとのこと。


大企業はPowerPointをどう捉えているのかというと、AmazonとLinkedInは会議で行うプレゼンテーションでPowerPointの使用を禁止しています。TEDのようなプレゼンターが集まる場でも、スライドを流すよりもスピーチに時間を割く傾向にあります。


このようにPowerPointは便利である反面、プレゼンテーションで使用してしまうと、内容を理解しているのは自分だけで、聴衆には伝わりづらいという欠点を持っています。最後に、PowerPointを使ったプレゼンテーションの実例から学ぶことができた事実として、「プレゼンテーションは自分のためではなく、聴衆のために行う」「PowerPointはプレゼンテーションで使わない」「聴衆の目を見る」「時間は貴重」「もし言いたいことが見つからない時は、どんなツールも手助けにはならない」ということが挙げられています。

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in ソフトウェア, Posted by darkhorse_log

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