サイエンス

カーボンナノチューブ入りの水を吹きかけられたクモが地球上最高強度のクモの糸を生成

By Beverly Slone

「クモの糸」は鋼鉄より高い引っ張り強度・靱性(じんせい)ヤング率をもち、天然物質で最高の強度を持つと言われています。一方で、人工物質で最高レベルの強度を誇るのが高機能材料として近年、注目を集めるカーボンナノチューブグラフェンです。これらの天然最強物質と人工最強物質を混ぜ合わせたら一体どうなるのかという素朴な疑問を試すべく、イタリアの科学者がグラフェンやカーボンナノチューブを混ぜた水をクモに拭きかけたところ、史上最高強度のクモの糸が誕生しました。

[1504.06751] Silk reinforced with graphene or carbon nanotubes spun by spiders
http://arxiv.org/abs/1504.06751

Spiders Ingest Nanotubes, Then Weave Silk Reinforced with Carbon | MIT Technology Review
http://www.technologyreview.com/view/537301/spiders-ingest-nanotubes-then-weave-silk-reinforced-with-carbon/

Spiders sprayed with graphene or carbon nanotubes spin super silk - life - 05 May 2015 - New Scientist
http://www.newscientist.com/article/dn27468-spiders-sprayed-with-graphene-or-carbon-nanotubes-spin-super-silk.html

イタリアのトレント大学のニコラ・マリア・プーニョ教授らの研究チームは、天然物質では最高レベルの強度を誇るクモの糸の強度をさらに向上させるために、グラフェンやカーボンナノチューブを混ぜ合わせればよいのではないかと考えました。そこで、プーニョ博士らはイタリアに生息するユウレイグモに、グラフェンやカーボンナノチューブを混ぜた水を吹き付けてみるというストレートな手法を採りました。


グラフェンとカーボンナノチューブのいずれが強度アップに有効なのかを調べるために、ユウレイグモを5匹ずつ採取して実験したところ、いずれの物質を混ぜた場合でも強度が大幅に向上しました。より強度が増したのはカーボンナノチューブ添加水吹きつけ時で、その強度は天然物質最強のオーブスパイダーのクモの糸の約3.5倍、ヤング率は47.8GPに到達したとのこと。この数値はこれまで生まれたあらゆる天然物質の中で最高の強さであり、現在、最強の合成繊維の一つである「ケブラー49」を上回る靱性を持つことから、地球上最強の繊維が誕生したということになります。


驚くべき結果を得た研究チームのエミリアノ・レポール博士は、「驚異的な強度から考えると、単にクモの巣の表面にカーボンナノチューブやグラフェンがコーティングされたとは考えにくいと言えます。仮説としては、クモが炭素材料を取り込んでクモの糸の中にらせん状に練り込んだ可能性がありますが、詳しいメカニズムはまだよく分かっていません」と述べています。

クモの糸が優れているところは、天然素材では最高レベルの強度を持ちながら、同時に伸縮性を持ち合わせているところ。今回のグラフェン・カーボンナノチューブ入りクモの糸を応用すれば、例えば墜落した飛行機を地上で受け止められる巨大なネットを作ることができるかもしれない、と壮大な夢の装置が考案されています。

ただし、今回の実験ではグラフェン/カーボンナノチューブ入りの水を吹きかけられた4匹のユウレイグモが、吹きかけ直後に死んだとのことで、カーボン入りの高強度クモの巣を効果的に収集・生成する方法は見つかっていません。しかし、より強い合成繊維を作り出す手法を得るヒントとして、今回の研究成果は大いに活用される可能性がありそうです。

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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