職場よりも自宅の方が仕事の生産性と満足度が向上することが判明

By Aitor Aranda

オンライン旅行サイト「Ctrip(シートリップ)」の共同設立者であるニコラス・ブルーム氏と大学院生のジェームズ・リアン氏らが、シートリップのコールセンターの一部スタッフに「9カ月間だけ在宅勤務できる機会を与える」という試みを行ったところ、在宅勤務を行ったグループの生産性が向上したことが分かりました。

To Raise Productivity, Let More Employees Work from Home - HBR
https://hbr.org/2014/01/to-raise-productivity-let-more-employees-work-from-home


ニコラス・ブルーム氏はシートリップを起業した人物であり、スタンフォード大学で経済学の教授を務める人物でもあり、さらには全米経済研究所にて「生産性・イノベーション・起業家精神」などに関するプログラムの責任者を務める人物でもあります。

そんなブルーム氏は「もしもパジャマを着たまま仕事をしたなら、従業員の業績は向上するのか?」という突拍子もない疑問の解答を得るため、自身の設立したシートリップの従業員の半分を在宅勤務させ、もう半分を職場で働かせるという実験をなんと9カ月間行いました。ブルーム氏はシートリップが実験を行ったもうひとつの理由として、「在宅勤務ならば職場の家賃や家具などの設備代を節約可能となるので、生産性の低下よりも節約できる資金の方が大きいのではないかと考えたから」とも述べています。

実験を主導したのはスタンフォード大学のブルーム教授。


実験結果から言うと、在宅勤務のスタッフは職場で仕事をするスタッフよりも13.5%も多くの電話に対応しました。なお、13.5%分の電話応対というのは、シートリップのコールセンターでいうところの1週間分の仕事に相当するそうです。また、生産性の向上だけでなく、在宅勤務のスタッフは職場で働いたスタッフよりも高い満足度を仕事に対して示すことも判明しており、おまけに9カ月の実験期間で在宅勤務するスタッフひとりにつき1900ドル(約22万6000円)の節約まで行えた、とのこと。

以下のグラフはシートリップのコールセンターとしての業務を自宅で行ったグループ(緑)と職場のコールセンターで業務を行ったグループ(黄緑)の電話応対の平均数を示したグラフ。実際に実験がスタートしたのはグラフの真ん中にある「EXPERIMENT STARTS」からで、実験開始前のコールセンターで通常通り仕事をこなしていた際の電話応対数もグラフに載っているわけです。グラフを見ると、実験開始後から1度も在宅勤務スタッフの電話応対数が、職場のスタッフの平均値よりも少なくなっていないことが分かります。


シートリップは、実験時に被験者に対して実験内容の説明を行い、在宅勤務を希望するスタッフに在宅勤務させています。実験期間中には、在宅勤務を辞めて職場に戻ってくるスタッフもいたそうで、これについてブルーム氏は「自分には在宅勤務が向いていないと気づいたのでしょう」とコメント。実際に在宅勤務を辞めたスタッフの電話応対数はあまり良い成績ではなかったそうです。また、実験では9カ月に渡って一定以上の生産性向上が見られており、「これは初期バーストとしては長すぎるものであり、在宅勤務が一定以上の効果を持っていることをよく示すものだ」ともコメントしています。

ヤフーのマリッサ・メイヤーCEOが同社の従業員が在宅勤務を行うことを全面的に禁止にして大きな話題を呼んだことがありますが、ブルーム氏はこのことについて「在宅勤務に関する問題は、それほど単純なものではありません。メイヤーCEOが在宅勤務を禁止にしたのにはさまざまな要因が絡んでいるはずで、ヤフーでは在宅ワーカーのモラルが低下していたのでしょう」とコメント。また、ブルーム氏は実験対象となった「コールセンター」という職種が、他の仕事よりも業務内容を測定しやすく、自宅からでも仕事がしやすい職種であった、としています。

By Daniel Rashid

自宅と職場での生産性に関する大きな疑問としては、コールセンターの業務以外の「頭脳職やクリエイティブな職業においても自宅の方が生産性が向上するのか?」という点が挙げられます。この疑問に対してブルーム氏は、より多くの実験や研究を行う必要があるとしながらも「機械的な業務ほど在宅勤務による恩恵を受けられる」と推察。また、過去の経験則から「週に1、2回程度在宅勤務を行わせること」が、従業員の心の消耗を防ぎ、満足度を高めるために良い結果となる、とコメントしています。

さらに、ブルーム氏はシートリップで在宅勤務に関する実験を行ったもうひとつの理由として、マネジメント職のスタッフに在宅勤務の有効性を示すことを挙げています。ブルーム氏は常々柔軟な仕事の体系を設けるために、在宅勤務の機会を従業員に示してきたそうで、例えば職場に向かうのが困難な天気の日には、在宅勤務を許可してきました。そういった取り組みに対して反対的な意見を持つ幹部に対し、在宅勤務の有効性を示すため実験を行ったというわけです。

By Oscar Shen

在宅勤務はブルーム氏が想定していた以上の効果を発揮したわけですが、これによりシートリップのコールセンターにて在宅ワーカーが激増したかどうかは不明です。

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in サイエンス, Posted by logu_ii