IKEAが世界で成功するために行ってきた戦略とは？

1943年にスウェーデンで創業したIKEAは、2014年までの71年間で世界中に336店舗を構える巨大家具販売企業に成長しています。世界で成功を収めるには「異国の文化」という壁をクリアする必要があったわけで、IKEAはどのようにして国外の市場で成功をつかみ取ったのか、その詳細をFortuneが公開しています。

Ikea - Fortune
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中国にはIKEAが持つ最大級の10店舗のうち8店舗があり、IKEAにとって世界で最も急成長している市場です。IKEAは中国のような新興市場への進出に力を入れており、モロッコやブラジルへの出店が近づいているほか、総額約20億ドル(約2430億円)の投資を行いインドに10年間で10店舗ものショップをオープンさせる計画中。2020年までにはインド・中国市場だけで50億ユーロ(約6480億円)の売上が予想されるとのこと。

2015年時点のIKEAの業績は純益が33億ドル(約4000億円)。過去5年で31％の上昇を見せており、巨大チェーンストアのTargetをしのぐ収益率をたたきだしています。IKEAが小売業界でここまで巨大な企業に成長できたのは、「異なる市場・言語・文化」という高い壁に挑戦し、大量の商品を一貫して安価で販売してきたことが要因の1つであるとのこと。もともとスウェーデン発祥のIEKAは全てにおいて成功しているわけではなく、1985年にアメリカ市場に進出した時は、文化の違いによる失敗を経験しています。

アメリカ初のIKEA店舗はフィラデルフィア店ですが、そこで販売されていた家具製品は、ヤード・ポンド法が使われているアメリカ市場にもかかわらず、メートル法で測定されており、小売業者としては大きな痛手でした。また、ヨーロッパサイズの水飲みグラスが小さすぎたことから花瓶が水飲みグラスとして使われるなど、市場調査が足りていなかったことは明白。一時は撤退も検討していたとのことですが、IKEAは生き残りを賭けて徹底的な市場調査を行うようになりました。

現在では諸外国に進出する際の市場調査がIKEAの進出計画の中心となっています。ポイントは文化の違いに注目することではなく、文化が交わる部分を探し出すのが調査チームの命題とのこと。例えば過去のある調査では、8都市の8292人を対象に「朝の習慣を調査する」というものがありました。調査の結果、起床から家を出るまでの時間が最も短かったのは上海の56分で、最も長かったのはインドにあるムンバイの2時間24分であることがわかったり、ニューヨークとストックホルムの人は1日の16％をトイレで過ごすことなどが判明。都市にかかわらず、日用品を選ぶ時間は女性が圧倒的に長い、というような地域の生活に基づくデータを収集しています。

裏側にアクセサリーやバッグをかけるフックとハンガーレールがついたスタンドミラー「KNAPPER」が生まれたように、これらの調査データは製品開発に役立っているとのこと。最近ではモバイルデバイスを充電できる家具シリーズを発表するなど、需要に応じた製品作りを心掛けています。

また、こうやって獲得した地域ごとの文化的特性のデータは製品に限らず、IKEAのカタログや、店舗のショールームの配置にも応用されています。例えば日本の仙台店とオランダのアムステルダム店のショールームでは同じベッドとキャビネットが使われていますが、日本のショールームでは床に畳を使うことや、アメリカのショールームではベッドを枕で覆うなど、地域ごとの特色を反映しています。

IKEAは海外市場で成功するために市場調査を徹底して行い、そのデータを製品開発に生かしています。海外市場調査の他にも、徹底的なコスト削減による低価格を維持していることで、家具小売り業界は20年間にわたって痛手を負っていると言われるほど。フラットパックを顧客が持ち帰ることや、店舗でのカスタマーサービスを極力行わないことの他にも、人が見ないようなテーブルの裏側のラッカーを省くといったコスト削減方法が採用されています。IKEAは2020年までに全世界で500店舗の開店を計画しており、こういった戦略が目標達成のカギを握っているというわけです。